青山学院大学 柏原航助教と同大大学院理工学研究科の渡邉翔太さんの論文が、米国化学会の学術雑誌の表紙を飾る



米国化学会の学術雑誌『The Journal of Physical Chemistry』(August 3, 2023 Volume 127, Issue 30)の表紙に、青山学院大学柏原航助教と渡邉翔太さん(同大 大学院理工学研究科)の論文が掲載された。




米国化学会の学術雑誌『The Journal of Physical Chemistry』は、1896年に創刊された物理化学分野の草分けである著名な論文誌である。掲載された論文タイトルは「Effects of Two Electron-Donating and/or -Withdrawing Substituents on Two-Photon Absorption for Diphenylacetylene Derivatives(ジフェニルアセチレン誘導体の2光子吸収に対する2つの電子供与基および電子求引基の効果)」である。

この研究は、有機合成専門の武内亮教授(理工学部 化学・生命科学科)、および桜美林大学の磯崎輔准教授との共同研究の成果であり、また、青山学院大学総研プロジェクト「機能性分子骨格ジアリールポリインの電子励起状態」(2013-2014年度)の支援を得ている。

物質にレーザーなどの強い光を当てると、物質を構成する分子ひとつが一度に二つの光子(光のエネルギーの最小単位)(注1)を吸収することがある。これを同時二光子吸収といい、その物質のことを二光子吸収材料と呼ぶ。二光子吸収材料は記録材料(メモリー)や微細構造形成(マイクロマシン)、ガン治療における光線力学療法の薬剤(増感剤)などへの応用が期待されていて。この二光子吸収が起こるメカニズムや強く起こすためにはどのような分子設計をしたらよいのか、といった研究が盛んに行われている。

論文では、二光子吸収材料としてよく使われる分子骨格、ジフェニルアセチレンに二つの置換基(注2)を導入した分子を合成し、その二光子吸収特性を調べて報告している。二光子吸収を効率よく起こすためには、どのような電子供与基、求引基を骨格分子のどこに入れたらよいのか、様々な要因について議論し、その内容が評価され、学術雑誌の表紙に採択された。柏原航助教は「日本光医学・光生物学会」で「奨励賞」を受賞している。

(注1)光子:フォトン。光はエネルギーの粒(つぶ)として考えられ、そのエネルギーは光の波長とは反比例の関係にある。赤い光よりも青い光、紫外線になるにつれて、1つの光子がもつエネルギーがだんだんと高くなる。

(注2)置換基とは、骨格となる分子に導入した原子または原子団のことを指します。この置換基には、骨格分子の電子を引っ張ったり(電子求引基)、逆に自分がもっている電子を押し込む(電子供与基)性質がある。


・論文タイトル:「Effects of Two Electron-Donating and/or -Withdrawing Substituents on Two-Photon Absorption for Diphenylacetylene Derivatives(ジフェニルアセチレン誘導体の2光子吸収に対する2つの電子供与基および電子求引基の効果)」
・著者:Shota Watanabe, Ayumi Tahara, Tasuku Isozaki, Sho Kinoshita, Ryo Takeuchi, Wataru Kashihara, and Tadashi Suzuki* *Corresponding author
・DOI: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jpca.3c02865






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