武庫川女子大学食物栄養科学部食創造科学科の食品科学研究室(有井康博教授)が、3Dフードプリントに使える豆腐由来の”食べられるインク”を開発しました。「畑のお肉」と呼ばれるほど良質のたんぱく質が豊富な豆腐は、食品印刷分野で大きな期待を集めそうです。
イギリスの学術雑誌「Journal of Food Engineering」に掲載されています。
医療や電化製品、教育、建築など様々な分野で期待される3Dプリンター。食用のインクで「食べ物」を形作る''食品の印刷(フードプリント)''も期待される分野の一つですが、口に入れるものだけに安全で成型しやすいインクの開発が欠かせません。これまでチーズやチョコレート、マッシュポテトなど様々な食材で''食べられるインク''の開発が進められてきましたが、食創造科学科の有井研究室は世界でも例のない豆腐由来の3Dフードプリンター用インクの素材開発に成功。実用化に向け、さらに研究を進めています。
食品専用の3Dフードプリンターと食べられるインクを使えば、立体的に食物を印刷することが可能になります。豆腐そのものをインクに使用した場合、粘度や硬度、接着性が不足し、インクの離水を引き起こすため、立体構造を保つことができません。そこで、物性を印字に適切な状態とし、離水を抑える添加物をどの程度加えるかが課題となります。2020年度、2021年度は、添加物としてじゃがいもから調製したデンプンを採用。最適な添加比率を探るため、混合比率を5%ずつ増減させて実験を繰り返しました。
細かな変化を観察するため、プリンターと同じ動作を手作業で行い、直線やL字、1センチ四方など形を変えながらインクを積み上げて、形状が保てる限界を探りました。デンプンが少なすぎると固まらず、多すぎると栄養バランスが偏ります。エネルギー産生栄養素(炭水化物、脂質、たんぱく質)のバランスを最適化するには、デンプンを20%程度に抑える必要がありますが、実際はデンプンが30%以上になると形状が安定し、立体構造に適した素材になることがわかってきました。今後は栄養バランスと立体構築のギャップを埋めていく必要があります。
2022年度はエネルギー産生栄養素バランスと印字性を最適化するために、新しい添加物で実験を進めています。有井教授は「豆腐インクが実用化すれば、素材の足し引きでエネルギーや栄養の調整が可能になり、食が抱える様々な問題を解決できると期待しています。まだまだ乗り越えるべき課題がありますが、一つずつ解決して、完全栄養食インクと、その先のテーラーメイド型インクを実現したいです」と話しています。
なお、研究の一部は文部科学省科学研究費補助金基盤(C)22K02191で実施されました。
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