株式会社熊谷組(代表取締役社長:櫻野泰則 本社:東京都新宿区、 以下熊谷組)と住友林業株式会社(社長:光吉 敏郎 本社:東京都千代田区、以下住友林業)は6月27日、札幌市で地下1階地上10階建ての耐火木質ビル(仮称:KAGAプロジェクト)を着工しました。2023年6月竣工予定です。2021年3月ブランド発足以降の様々な取り組みの中で、両社が共同企業体で施工するのは今回が初めてです。上層階は木質ハイブリッド集成材を使用し木のぬくもりを感じられる空間を提供します。木は光合成で大気中のCO2を吸収し、炭素として留め置き、伐採し木材製品になっても炭素を固定し続けます。中大規模建築の木造化・木質化を通じて脱炭素社会の実現に貢献します。
■「with TREE」について
顧客と共に(with)、コミュニティと共に(with)、木と共に(with)、高い価値と良い効果をもたらす木の建築物を協力して創りあげていくのがブランドの由来。コンセプトは「環境と健康をともにかなえる建築」です。都市の建築に「木」が生む新しい価値を提供し、中大規模建築の木造化・木質化を推進します。
熊谷組と住友林業は2017年の業務・資本提携以来、8つの分野で分科会を立ち上げ協業に取り組んできました。中大規模木造建築分科会は2021年に本ブランドを発足させ資材の調達から建築コンサルティングまで展開しています。鉄骨・RC造の大規模建築に関わる熊谷組の知見と、森林や木材に関わる住友林業の知見を融合し新たな価値を提供していきます。
「with TREE」 WEBサイト URL
https://withtree.jp/
■建築概要
(仮称)KAGAプロジェクトの建築地は観光やビジネス、流行の中心地である札幌市中央区南1条通に面しています。1~2階はカフェ、3~8階は事務所、9~10階は住居になる予定です。木材活用による環境配慮に加え若者へのIT関連の支援等を通じ、街の新たなコミュニティ創出を目指します。
7~10階に木質ハイブリッド集成材を使用します。1時間耐火で大臣認定を取得(日本集成材工業協同組合、以下日集協)している「鉄骨内蔵型」の耐火集成材で、鉄を熱から守る構造です。鉄骨造は中高層建築で構造設計と確認申請が木造より容易で、コスト削減と高い汎用性を実現します。
1時間耐火構造の木質ハイブリッド集成材有孔梁
*1も採用。日集協が大臣認定を取得している木質ハイブリッド集成材の1時間耐火認定梁に、住友林業が開発した梁貫通技術を加えて新規認定を共同取得しました。5月には大臣の認定範囲を拡大
*2しました。梁に直接配管を貫通し、建築費全体の削減と汎用性を拡大します。従来の木質ハイブリッド集成材梁と異なり、デザイン上の制約が少なく意匠性が向上します。
*1住友林業「木質ハイブリッド集成材有孔梁が1時間耐火構造の大臣認定取得」プレスリリース(2021年11月)
https://sfc.jp/information/news/pdf/2021-11-01.pdf
*2 住友林業「木質ハイブリッド集成材有孔梁、1時間耐火構造の大臣認定範囲拡大」プレスリリース(2022年5月)
https://sfc.jp/information/news/pdf/2022-05-31.pdf
柱と梁の被覆木材には北海道産のカラマツを採用し、国内林業の活性化につなげます。
構造躯体に使用する木材は39.9㎥、炭素固定量は31.8t(CO2ベース)です。これは計画地(139.05㎡)の約7.2倍にあたる広さのカラマツの森が吸収するCO2量
*3に相当します。このような施設は街を森にかえ、脱炭素社会を実現します。
*3 出典:林野庁「建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/mokusan/mieruka.html
事業主 株式会社 Beppo Corporation
計画地 北海道札幌市中央区南1条西2丁目1‐2、1‐5
構造 鉄骨造(7~10階に木質ハイブリッド集成材を使用)
階数 地下1階 地上10階
設計 株式会社アトリエオンド一級建築士事務所・株式会社桜設計集団構造設計室
施工 熊谷組・住友林業共同企業体
敷地面積 139.05㎡
延床面積 1,102.42㎡
熊谷組は2010年5月に環境省から「エコ・ファースト企業」に認定されて以来、「脱炭素社会への移行」、「循環型社会の形成」、「生物多様性への配慮」に関する取組みの約束を掲げています。約束達成に向け、事業活動でのCO2の削減、再生可能エネルギーの積極導入、大幅な省エネに貢献する「ZEB」の普及促進に取り組んでいます。また熊谷組は事務所などの「中大規模木造建築」建設の受注施工のために木質部材の開発や技術開発を行っています。今後も都市と森がつながる脱炭素の街づくりに貢献していきます。
住友林業は本年2月にSDGsの目標年である2030年を見据え、脱炭素社会に向けてあるべき姿を事業構想に組み込んだ長期ビジョン「Mission TREEING 2030」を発表しました。木を伐採・加工、利用、再利用、植林という住友林業の「ウッドサイクル」を回すことで森林のCO2吸収量を増やし、木材の活用で炭素を長く固定し続けます。今後も木質部材の調達や製造、設計・施工にいたるまで、「木」を扱うプロフェッショナルとして社会のあらゆるニーズに対応していきます。