~蓄電池に充放電した再エネの環境価値を担保し、取引できる仕組み構築を目指す~
日本ガイシ株式会社(代表取締役社長:小林茂、以下「日本ガイシ」)と株式会社リコー(社長執行役員:山下良則、以下「リコー」)は、再生可能エネルギー(再エネ)の発電から消費、余剰発電の電力貯蔵用NAS®電池への充放電も含めた全てのプロセスのトラッキング(追跡)を行う実証実験を、2022年度から開始します。環境価値を持つ再エネをより簡易かつ確実に融通、取引できる仕組みの構築を目指し、地域新電力会社の恵那電力株式会社(岐阜県、以下「恵那電力」)を実フィールドとして実証を行います。
恵那電力は現在、来年度の事業開始に向け、恵那市公共施設の屋根や遊休地に太陽光発電設備(PV)やNAS電池の設置準備を進めています。実証実験では、発電した再エネをその環境価値が見える形で最大限活用するために、恵那電力のこれらの設備とリコーが開発するブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用した再エネ流通記録プラットフォームを用いて、再エネの発電、蓄電、消費のトラッキングを検証します。また、日本ガイシとリコーが蓄電池やPVなどの設備を導入する際、恵那電力の設備と遠隔連携し、トラッキングすることも検討していきます。
【背景】
日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラルの実現には、地域の自立分散型エネルギーシステムでの再エネ導入量の拡大と、発電した再エネを最大限地産地消することが重要です。しかし、PVをはじめとする再エネは天候により発電量が変化するため、再エネ導入量が拡大した際に、再エネの供給量が消費量を上回った場合、余剰電力が基幹系統に流れ込み(逆潮流)、電力網そのものの安定性を損ねる恐れがあります。そのため、再エネの安定的な活用には余剰電力を蓄積でき、必要な時に電力を供給することのできる大容量蓄電池が有用ですが、蓄電池に充電、放電した場合の環境価値の取り扱いや、リアルタイムな充放電量の調節など、再エネトラッキングに関する仕組みや制度の整備が課題になっています。
【実証の想定ケース】
日本ガイシとリコーは、NAS電池を活用した再エネトラッキングの制度化や標準化に向け、検討の土台になる実フィールドでの技術検証が必要であると考え、以下の2つのケースを想定した実証実験を行います。
1.配電網内への再エネ導入量拡大と利用最大化
基幹系統への逆潮流を抑制し、配電網内の再エネ利用率を高めるための実証です。
変電所以下の配電網内の再エネの発電と需要家の消費をリアルタイムにトラッキングし、余剰分の再エネは環境価値を付与した形で確実にNAS電池に充電することで、再エネの余剰電力が基幹系統に流れ込む逆潮流を抑制します。環境価値の担保された再エネをNAS電池にためておくことができるため、上位系統の送電容量に制約がある場合でも、基幹系統の安定を乱すことなく配電網内への再エネの追加導入が可能となり、地域の再エネ比率と地産地消率を最大化することができます。
2.異なる配電網間での再エネ融通
変電所以下の配電網で発生した再エネの余剰電力を、再エネであることを証明し、環境価値を担保したまま他の配電網へ融通する実証です。
上位の基幹系統の送電容量に制約があるために、再エネの余剰電力を異なる配電網間でリアルタイムに融通・利用することが困難な場合に、トラッキングにより再エネの環境価値を担保したままNAS電池に充電します。系統制約のない時間帯に異なる配電網のNAS電池間で再エネを融通することで、再エネの環境価値を失わず、地産地消の比率を向上することができます。
本実証では、実証成果を広く活用することで、全国の地域新電力会社や国が推進している脱炭素先行地域において、再エネ比率の向上や出力制限の最小化に貢献したいと考えています。
日本ガイシとリコーは、本実証実験を通して、環境価値を持つ再エネをより簡易に融通、取引できる仕組みを構築し、再エネの導入拡大と利用の最大化に寄与し、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
※恵那電力株式会社について
恵那電力は、日本ガイシ株式会社、恵那市、中部電力ミライズ株式会社により2021年4月に設立された地域新電力会社です(2022年4月事業開始予定)。太陽光発電設備と電力貯蔵用NAS電池を自社保有し、固定価格買取制度(FIT制度)を利用しない自立した再生可能エネルギーの活用と経営安定性、自然災害への対応力強化などを特徴とする「恵那モデル」により、エネルギーの地産地消によるゼロカーボンシティの実現を目指しています。
https://enaden.jp/