日本工業大学(埼玉県宮代町)では2018年度の改組に伴い、工学基礎教育でクォーター制を導入した。クォーター制とは、1年を4学期に分けるもので、近年のグローバル化に伴い、日本の大学でも導入が進んでいる。同大では、工学を学ぶための基礎となる科目について、進級時までに学生に確実な力をつけてもらう狙いで導入した。短期間で集中した教育を行うことで、学生それぞれが工学で必要な基礎力を習得することが可能となっている。
日本工業大学では初年度教育に力を入れており、学生個々の力に合わせたカリキュラムを設置してきた。しかし、近年は入試の多様化に伴って学生間の習熟度の差が拡大しており、従来の方法では学生ひとり一人に合ったカリキュラムを続けることが難しくなっていた。
そこで、習熟度を測定し適切なクラス分けを行うためのプレースメントテストを導入。工学を学ぶにあたっての基礎となる数学、英語、物理の基礎科目について、入学後すぐに実施するテストで学力を把握し、各自に合った科目から学習をスタートする制度を開始した。それぞれの科目は習熟度別に分けられ、下位をクリアしないと上位に進めないシステムとなっている。
工学基礎教育は原則として1年次のプログラムであり、同単位の取得が2年次進級への条件となっている。多くの学生に確実に進級してもらうためには、1科目につき週2コマ7週間の授業で、1年間で修了を目指すクォーター制が最適であり、2018年度から同制度を導入することとなった。
こうして学生に明確な目標を与える一方で、手厚いサポート体制も用意。専任教員として、数学7名、英語11名、物理6名を設置しているほか、学修支援センターではそれ以外に8名のチューターが授業以外でも質問を受け付け、学生が理解するまで丁寧に対応している。
また、すべての授業を座席指定のある少人数制で行うことで、きめ細かい指導を可能にするとともに、出欠状況の把握も容易となった。ドロップアウトを防ぐために、学生相談室やカウンセラーとも連携し、学生の精神面を支えている。
こうした取り組みにより、例えば数学では、最も基礎のレベルからスタートした学生を含め96%の学生が進級条件をクリアする結果となった。また、この制度に対する学生からの評価も高い。
これらのシステムを実施していく負担は、学生はもちろん教職員にとっても大きなものだが、近道を選ぶのでなく、コツコツと積み上げていくことの重要性を理解することが大切だと同大では考えている。
基礎から段階的に積み上げていく学習が工学の基本であるとされるが、1年次でしっかり基本を身につけることで、より幅広い専門を学ぶチャンスが広がる。また、学習する習慣を身につけ、段階的にクリアしていくという方法が、社会に出てからの成功体験に繋がることにもなる。
日本工業大学では、常に変化が要求されるこれからの時代に、基礎力を鍛えることで得られる応用力に加え、人間的な幅を持たせる教育を行うことを目指している。
(参考)
・基礎力をつけて変化に対応し確かな専門性と人間力を磨く教育―日本工業大学(同大の成田健一学長に大学通信常務取締役・安田賢治が取材/ユニヴプレス)
https://univpressnews.com/2020/12/16/post-7061/
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