働き方改革の先進企業が、コロナ時代の働き方を展望! サイボウズ社が、実践女子大の学生向けに特別授業



新型コロナウイルスの感染拡大(コロナ禍)を受け、テレワークが2020年4月の緊急事態宣言以降、半ば緊急避難的に拡大しました。さらに企業の中には、5月下旬の宣言解除後も、元の出社スタイルに戻さずに定着を目指そうとする動きが広がっています。Withコロナ時代、Afterコロナ時代の働き方改革はいかにあるべきか。働き方改革の先進企業として知られるサイボウズ株式会社(東京都中央区、青野慶久代表取締役社長)が、実践女子大学(東京都日野市、城島栄一郎学長)の学生向けに行った特別授業を紹介します。コロナ禍における働き方改革に関して非常に示唆に富んだ内容であり、皆さまの取材の端緒になれば幸いです。




 特別授業は、本学3~4年生が対象の「キャリアデザイン」授業の一環として6月9日(火)と同23日(火)の2回に分けて行われました。文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育担当)が指導教授で、講師はサイボウズ社執行役員・経営支援本部長の林忠正氏が務めました。それぞれ「考えようこれからのワークスタイル」と「それぞれの価値観と企業分析の軸」が授業のテーマで、学生たちは自宅からテレビ会議「ZOOM」を通してオンラインで授業に参加しました。

 サイボウズ社は、チームの情報共有サービス「グループウエア」の開発や販売、運用支援をメインに展開するIT企業です。1997年8月に松山市で社員3人で創業し、創業約23年を経て従業員数は派遣社員を含めて900人超に達しました。2000年8月に東証マザーズに上場、2006年7月には東証一部に上場変更しています。2019年12月期の連結売上高は134億円で、4期連続で増収増益を達成しています。

■ 社員それぞれ「自由すぎる働き方」を実現
 同社はまた、「働き方の先進企業」としても有名です。「100人いれば100通りの働き方があってよい」を人事制度のモットーに、そのユニークな取り組みがテレビや新聞、雑誌などのメディアで取り上げられることも、しばしばです(※1)。最近では緊急事態宣言発令中の2020年05月18日、東京都がライブ配信する公式YouTubeチャンネルで、青野慶久サイボウズ社長と小池百合子都知事の「コロナ時代の働き方」についてのゲスト対談が実現しました(※2)。

 では、「100人100通りの働き方」とは、どのようなものなのでしょうか。経営支援本部長の林氏は、社員それぞれのある日のワークスタイルをZOOM画面上で紹介しながら、学生たちにこう語り掛けました。
 「皆本当にバラバラです。仕事後にサウナに行くのが好きだという社員は、朝7時から在宅勤務を始めて夕方早めに上がっていました。また、ほとんど新潟での在宅勤務で本社に来るのは月1回程度という人もいます。午前中は在宅勤務で午後出社するが途中、副業で抜けますみたいな...。もう(ここまでくると)よく分からない」
 各人の自由すぎる働き方には驚くばかりです。加えて、コロナ禍もあり今は従業員900人のほぼ100%が在宅勤務とか。会社が基本、在宅勤務の就業時間を決め、2019年4月施行の働き方改革関連法ですら「裁量労働制」を一部の専門職しか認めない現行制度にあって、同社は2010年に在宅勤務を制度化。さらに社員が勤務時間や場所を決めることができる「働き方宣言制度」を2018年4月から実施していたことが、今日のコロナ禍でも揺るがない同社の働き方改革を支えています。
 ほかにも、育児休暇は最長6年間(法定は最長2年)取得可能で、副業も誰でも会社に断りなく基本自由。定年もなしにしました。退社しても辞めてから6年以内なら再入社できる「育自分休暇」という制度までつくりました。
 林氏は「人事制度を社員一律に適用するというのではなくて、社員一人ひとりが個性も違うから、社員のやって欲しい、変えて欲しいという希望やわがままをどんどん聞いて、可能な限り実現を目指すという制度にしています」と話しています(※3)。

■ コロナ禍でテレワークは「やらざるを得ない事態」に
 今でこそ働き方改革の先駆者と注目されるサイボウズ社ですが、15年前は離職率28%、4人に1人は辞めるというITベンチャーにありがちなブラック企業だったとか。しかし、青野社長の育児休暇取得などのきっかけもあり、社員の希望やわがままをどんどん取り入れて、「働きやすい制度」を次々と実現。その甲斐もあり、GPTWジャパンの2020年版日本における「働きがいのある会社」ランキングで、中規模部門(100~999人)で2位(6年連続ベスト5)、同女性版では1位に選ばれています。

 翻って、コロナ禍以前も、働き方改革の推進がこの2~3年、安倍晋三内閣の重要政策の一つとして強調されてきました。日本の人口減少と高齢化、先進国の中でも、とりわけ低い労働生産性の改善が狙いでしたが、残念ながら、この流れが大きく進展することはありませんでした。何が働き方改革の推進を阻んでいたかというと、林氏は働き方改革には以下のような条件が必要と振り返ります。「働き方改革には、制度とツール、企業にそれらを受け入れて活用する風土の3つの要素が重要で、3つ揃うのは難しい。マネージャーとか経営者とかが覚悟を込めて行動までしないと実現しない」。コロナ禍以前は普通の企業にそこまでの覚悟がなかったといえます。

 ところが、2020年世界を瞬く間に席巻したコロナ禍で様相は一変、働き方改革が一気に広がりました。政府がパンデミック対策として「3密(密接、密集、密閉)の回避」を打ち出したことを受け、テレワークや在宅勤務が「重要とかでなく、やらざるを得ない事態」が生み出されました(※4)。

■ 企業・組織と個人の関係性も変わる?
 経営支援本部長の林氏は、情報共有という軸でコロナ禍の影響を深く掘り下げると、「コロナ禍で半ば強制的に経験させられたテレワークや在宅勤務が、情報共有の在り方を大きく変えた」と指摘します。同社はグループウエア製品に象徴される情報共有を生業(なりわい)とする会社ですが、「情報共有の形」を時間と場所を軸に(1)時間と場所、どちらも同じ(2)時間は同じ、場所は別(3)場所は同じ、時間は別(4)時間と場所、どちらも別-の4領域に分けた場合、コロナ禍に伴うテレワークや在宅勤務が普及した結果、情報共有の形は「時間も場所も同じという(1)から大きく変わって、時間は同じだけども場所は別でもいいという(2)へと一気に変わった」といいます。

 即ち、コロナ禍を契機とした今回の働き方改革は「重要とかそうでないかではなく、やらざるを得ない状況」として広まり、いざやってみると「直接会わなくてもいいのでは?むしろその方が効率が良いのでは、ということに皆が気付いた」と同時に、その裏返しとして「((1)の)人に直接会ったりとか、いつも同じ場所で一緒に仕事をするという価値が、格段に高まった」と言えます。

 コロナ禍の影響は単に働き方を変えただけではありません。林氏は「企業・組織と個人の関係性にも影響しそうだ」と分析します。つまり、社員の働き方について「管理・監視する方向から、個人を信頼して場所や時間を自由に任せる企業が増えてくる」と同時に、「そういう『あるべき姿』に進化できた企業・組織というのは、いろんな人から支持されて、事業面に限らず、人材面でも組織面でも、これまで以上に強くなる」と予想します。

 具体的には、コロナ禍終息後の企業・組織の働き方について、想定される(1)従来型に戻る(2)強制&監視型に変化する(3)新しい形に進化する―の3パターンのうち、最も理想的なのが「新しい形への進化」だと強調します。というのも、従来型に戻るというのは「情報共有の形の変化についてい くのを諦めることに外ならず、論外だ」といい、また組織が強制&監視型に変化するのも「デメリットの克服の仕方が怖くて、そこで働く人は幸せか?」と考えられるからです。

 ここでいう「あるべき姿」に進化した企業・組織とは、別言すると、新しい形に進化した企業・組織です。「短い時間でストレスの少ない環境下で成果を出せる企業・組織」であり、そういう社員が多くなればなるほど、働き手の満足度は上がり、自然と業績も上がるというわけです。「時間と場所を同期させなくても仕事が可能というメリットを活かしながら、みんなが無意識に発信している情報の受け取りとか、働き方についての評価とか、こうした面で生じるデメリットを知恵を絞り、覚悟を決めて克服していく」というのが、林氏が考えるコロナ禍との向き合い方です。こうしたコロナ禍終息後の時代の変化に対応できた企業・組織だけが、これまで以上に強くなるというわけです。

 一方、個人も企業・組織の進化に対応することが必要です。企業・組織が社員一人ひとりを信頼して働く場所や時間から解放してくれる以上、個人もそこに甘えず、成果を返すことが重要と訴えています。
 このため、進化した企業・組織ではなおさら、個人は自立して自己の役割・価値を意識した行動が求められます。裏返せば、自己の役割・価値を意識して行動する限り、「役職とか立場で自分の行動を制限する必要はない」ともいえるわけで、林氏はコロナ禍終息後の新たな働き方は、「今まで以上に、個人がやりたいように自由に能力を発揮できる時代がくる」と展望しています。

〔補足説明〕
(※1)以下のような番組で、サイボウズ社の働き方改革の取り組みが紹介されました
▼NHKテレビ「クローズアップ現代」2015年8月3日(月)
 「もう会社には通わない ~在宅勤務''革命''~」
▼NHKテレビ「クローズアップ現代」2020年6月23日(火)
 「ウィズコロナ時代 ''カイシャ革命''であなたの仕事は?」
▼NHK Eテレ「オイコノミア」2015年05月25日(月)
 「子どもは誰が育てるの?~子育て社会の経済学~」
▼NHK Eテレ「オイコノミア」2018年01月24日(水)
 「経済学でハッピー!人生100年時代」
▼テレビ東京系「カンブリア宮殿」2020年07月02日(木)
 「社員の『わがまま』とことん聞いて業績アップ!?ブラック企業から大変身!コロナ禍で在宅100%」

(※2)東京都公式youtubeチャンネル
「令和2年5月18日 東京都新型コロナウイルス感染症最新情報」
 https://www.youtube.com/watch?v=3T1LRerWXXo&feature=youtu.be

(※3)チームワーク総研も設立しました。
 サイボウズ社は、働き方改革を広めるため、「チームワーク総研」を2017年11月に設立しました。同社がこれまで蓄積した人事制度やメソッドについて(1)研修セミナー(2)講演者派遣(3)コンサルティング(4)学校向けプログラム―を通じて提供しています。
 https://teamwork.cybozu.co.jp/

(※4)日立製作所や富士通は、在宅勤務を「働き方の新常態(ニューノーマル)」と位置付け、全社的導入や恒久化を表明しました。

▼本件に関する問い合わせ先
経営企画部広報課
住所:〒191-8510 東京都日野市大坂上4-1-1
TEL:042-585-8804
メール:koho-ml@jissen.ac.jp


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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組織名
実践女子大学
ホームページ
http://www.jissen.ac.jp/
代表者
難波 雅紀
上場
非上場
所在地
〒191-8510 東京都日野市大坂上4-1-1

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