日本の大規模木造建築物でも、木材の質感を活かした「現し(あらわし)」の設計が可能に
カナダ林産品の普及活動を行う非営利業界団体カナダウッドの日本事務所、カナダウッドジャパン(所在地:東京都港区、代表:ショーン・ローラー)は、NLT(Nail-Laminated Timber)床版の1時間準耐火構造、またNLT屋根版の30分準耐火構造の国土交通大臣認定を2020年6月1日に取得しました。
NLTはツーバイフォー工法用製材であるディメンションランバーを小端立て(こばだて)にして積層し、釘や木ねじでランバーどうしを留め付けた構造材で、日本ではCLT(Cross Laminated Timber)が最も馴染み深いとされるマスティンバーの一種です。北米ではカナダ・バンクーバーに現存する築100年を超える木造ビルですでにNLTが床構面として用いられていましたが、ここ数年は大規模木造建築物に採用される事例が増えています。その理由としては、一般に流通している製材品と釘や木ねじだけで製作可能であることや、北米の建築基準ではすでに位置付けられているため新たな認定や評定が不要であること、また接着剤を使用していないのでNLTを構成する製材品が再利用可能であることなどが挙げられます。
また、NLTはツーバイフォー工法の床版や屋根版における設計デザインの幅を広げる点でも注目されています。NLTは構造材を隠さず見せることで木材の質感を活かす「現し(あらわし)」での使用が期待されており、北米ではオフィスビルや商業施設などさまざまな大規模木造建築物における活用がすすんでいます。
さらに、通直な製材で構成されていながら、製材品どうしの留め付けを少しずつずらすことで屋根構面に曲面やねじれを持たせることが可能であるほか、製材のバットジョイント(芋継ぎ)による長尺パネルの製作で床の支持スパンを伸ばすことで、「大空間」の設計における活用も期待されています。
(写真左)カナダでアウトドア関連商品を扱うMountain Equipment Co-op社の本社ビル。NLTと構造用集成材が現しで多用されている
(写真右)カナダ バンクーバーのブリティッシュコロンビア大学構内にある Centre for Interactive Research on Sustainability (CIRS)
建築業界では、木材が循環資源であることや、炭素貯留効果によって温暖化ガス抑止に貢献するといった環境負荷軽減の点からも木造化が注目されており、日本でも木造建築に関連した整備がすすめられています。2004年のツーバイフォー工法による木造初の1時間耐火構造大臣認定取得や、2010年の「公共建築物等における木材利用の促進に関する法律」の施行などによって、ツーバイフォー工法における木造の施設系建築が増えてきています。また、2019年に施行された改正建築基準法では、従来、規制上耐火建築物とされていたものについて一定の準耐火建築物が許容されることになり、現しにすることができる対象建築物の範囲が広がりました。
カナダウッドジャパンでは、日本国内におけるNLTの実用化に向けて、2017年度から一般社団法人日本ツーバイフォー建築協会と共同で研究開発に取り組んできました。今回の国土交通大臣認定取得により、日本の大規模木造建築物においてもNLT床版・屋根版を用いた現しの設計が可能となります。現在、国土交通省の指定性能評価機関に構造認証を申請中です。
カナダウッドジャパンでは、今後もNLTをはじめとした木造建築技術やカナダ林産品の日本国内でのさらなる普及に向けた取り組みをすすめていきます。
本件に関するお問合せ先: カナダウッドジャパン TEL 03-5401-0531