低炭素社会の実現に向け、環境負荷の少ない理想的な建築材料として期待が集まる
カナダ木材の普及活動を行う非営利業界団体カナダウッドの日本事務所、カナダウッドジャパン(所在地:東京都港区、代表:ショーン・ローラー)から、マスティンバー建築の環境評価に関する情報をご紹介します。
北米において、比較的質量の大きいエンジニアードウッドを指すマスティンバーは、RCや鉄骨と比べて工期の短縮や建物の軽量化が可能であることから、理想的な建築材料として位置付けられています。それらを用いたマスティンバー建築は、環境評価の高さにおいても注目されています。木材が循環資源というだけでなく、大量の木材利用で質量が大きいが故に得られる二酸化炭素貯留効率は高く、鉄やコンクリートが二酸化炭素を排出するのに対し、マスティンバーは1立方メートルあたりおよそ1トンもの二酸化炭素を貯留できるとされています。気候変動の影響で自然災害が多発している近年、マスティンバーは喫緊の課題とされている温暖化ガス抑止にも貢献します。
2017年、カナダのバンクーバー市内にあるブリティッシュコロンビア大学の構内に木造18階建ての学生寮「Brock Commons」が竣工しました。この建物はマスティンバーの一種であるCLT(Cross Laminated Timber)と構造用集成材が多用されており、マスティンバー建築の高層化・環境評価のきっかけとなりました。「Brock Commons」では環境指標の検証結果として、マスティンバー建築を採用することで2432トンもの二酸化炭素排出量を削減したとしており、これは1年間に511台の自動車から排出される量に匹敵します。
また、マスティンバーを多用した建築物はLEED認証のプラチナやゴールドを取得しやすいと言われており、「Brock Commons」はゴールドを取得しています。マスティンバーは環境意識が高まる建築業界において、支持されやすい建築材料であると言えます。
(写真左)カナダでアウトドア関連商品を扱うMountain Equipment Co-op社の本社ビル(プラチナ認証)
(写真右)多層階住宅「King Edward Villa」(プラチナ認証)
環境資源である木材の利用においては、徹底した森林の管理が不可欠となります。世界の森林面積の約1割を占め、国土のおよそ半分が森林であるカナダでは、「保続生産体制」という基本理念に沿って、20~25年先を見越した森林管理計画を策定し運用しています。法律で定められている年間伐採面積は、伐採可能な森林 1億4400万haのうち年間90万haと、カナダの森林全体の1%未満に留まります。また、カナダの森林は日本でも広く普及しているPEFC森林認証制度(Program for the Endorsement of Forest Certification)の傘下にあるCSA(カナダ規格協会)、SFI(持続可能な森林イニシアティブ)やFSC(森林管理協議会)といった第三者機関による森林認証を受けているため、環境・社会・経済の3つの観点からその持続可能性が認められています。カナダの認証済みの森林面積は2010年時点で1億500万haと世界的に見てもトップレベルを誇ります。さらに、カナダでは全ての伐採地に森林再生が義務付けられており、法的義務により毎年約6億本の苗木が植林されています。これらの取り組みによってカナダ原生林の残存率は世界最高の91%を示しており、伐採による森林減少率は過去20年以上にわたってゼロに近いと言えます
※。
カナダウッドジャパンでは、木造化の採用による二酸化炭素排出量の削減といった、持続可能な社会につながる側面にも着目しながら、日本におけるカナダ材の普及に引き続き取り組んでいきます。
※ 出典:FPAC 2010
本件に関するお問合せ先: カナダウッドジャパン TEL 03-5401-0531