失った細胞機能を水圧で再生 ヒト精子の不妊治療など医療技術に応用できる可能性も 県立広島大と近畿大の共同研究が学術誌「Scientific Reports」に掲載



【繊毛・鞭毛運動研究の画期的な発見~Scientific Reportsに掲載】
県立広島大学生命環境学部(広島県庄原市七塚町)の八木 俊樹 教授と、近畿大学理工学部(大阪府東大阪市小若江)の西山 雅祥 准教授は、ヒトをはじめとする動物の細胞に生える繊毛や鞭毛※1 の共同研究に取り組んでいます。今回調べたのは鞭毛で運動する単細胞生物「緑藻クラミドモナス」で、動物とほぼ同じ構造の鞭毛を使って水の中を泳いでいます。鞭毛に欠陥があるため泳げない細胞に、深海6000メートル級の静水圧をかけたところ、泳ぎ出す様子を観察できました。これは鞭毛運動の仕組みの理解を大きく前進させる成果で、医療技術への応用につながる可能性があります。研究内容は国際的に評価の高い、自然科学のオンライン学術誌「Scientific Reports(Nature Research)」(インパクトファクター 4.011,2019)に、日本時間の2月6日(木)19時(英国時間の同日10時)に掲載されました。
※1 繊毛、鞭毛…遊泳のための推進力を生み出す毛状の細胞小器官。短い毛が多数並んでいるものを繊毛、長短に関わらず本数が少ないものを鞭毛という




【ヒトの医療技術への応用に期待】
ヒトの体の中ではたらく繊毛や鞭毛が動かなくなると、「繊毛病」と呼ばれる病気の症状が現れます。例えば、精子の鞭毛が動かないと不妊症に、気管の繊毛の場合は慢性気管支炎、大脳の繊毛では水頭症などが挙げられます。今回、調べた「緑藻クラミドモナス」は、ヒトの繊毛や鞭毛とほぼ同じ仕組みで動いています。したがって、今回明らかにした静水圧による鞭毛運動の活性化法を応用すれば、理論上、なんらかの理由で動かないヒトの鞭毛や繊毛の不調を回復させ、不妊治療などにつなげられる可能性が出てきます。特殊な薬剤や遺伝子操作を使わない新たな医療技術の創成につながるよう、引き続き共同研究に取り組みます。なお共同研究では近畿大の西山准教授が細胞に高圧力をかける顕微鏡を開発、研究全般の監修を県立広島大の八木教授が担当しました。

【発表雑誌】
雑誌名   :Scientific Reports(Nature Research)
掲載日   :2020年2月6日
論文タイトル:High hydrostatic pressure induces vigorous flagellar beating in Chlamydomonas non-motile mutants lacking the central apparatus
       (鞭毛中心構造を欠失して非運動性となったクラミドモナス変異株に高圧を負荷すると、鞭毛打が回復して振動を開始する)
著    者:Toshiki Yagi and Masayoshi Nishiyama(責任著者)

【関連リンク】
理工学部 理学科 准教授 西山 雅祥(ニシヤマ マサヨシ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/2163-nishiyama-masayoshi.html

関連URL: https://www.kindai.ac.jp/engineering/


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