持続可能でエシカル(倫理的)なコーヒー豆の購買率99%を、2018年度も達成したことにちなみ、9月9日に開催した“99キャンペーン”の一環
スターバックス コーヒー ジャパンは9月9日、東京・中目黒「スターバックス リザーブ(R) ロースタリー 東京」の「AMU(アム)インスピレーション ラウンジ」で、AMU セッションを開催しました。
スターバックスが取り組んでいる持続可能でエシカル(倫理的)なコーヒー豆の購買率99%を、2018年度も達成したことにちなみ、9月9日に開催したコーヒー生産地とのつながりを感じていただく“99キャンペーン”。その一環としてAMUインスピレーション ラウンジでは、「みんなのエシカル ―今日からできるエシカルなアクションとは?」をテーマに、ファッションや教育など様々な視点から「未来の世代に、持続可能な世界を作りバトンを渡すために、一人ひとりが今からできる行動」について考えました。
■なぜ今「エシカル」?
そもそも「エシカル」とはなんでしょうか?
鹿児島と東京の二拠点で暮らし、音楽家(ミュージシャン)でありながら過疎地域のまちづくりまで幅広く活躍するモデレーターの坂口 修一郎さんは、こう説明します。
「エシカルとは、日本語でいうと倫理的、道徳的という意味。法律などの縛りがなくても、皆が正しい、公平だと思う状態を示す形容詞だと言われています。更にエシカル消費とは、人体・環境への負荷低減や、社会貢献などを重視して生産された商品・サービスを選択的に消費する行動です」
そして、「あえて今エシカルを語る必要があるのは、世の中がエシカルじゃないという前提があるから」と、課題を提起するところからセッションはスタートします。
人と環境に優しい素材と工場を求めて世界を飛び回るファッションデザイナー・石川 俊介さんは、「ファッション産業は食品などと比べ、生産背景が見えてきづらい分野ですが、実は石油産業、エネルギー産業に次いで、環境を破壊するリスクの高い産業だと言われている。児童就労や女性の強制労働なども問題視されています」とファッション業界の厳しい現状を語ります。
またスターバックス コーヒー ジャパンでコーヒースペシャリストとして活躍する田原さんも、「入社間もない17年前、コーヒーのフェアトレードの現場を特集したテレビで、コーヒー産業が抱える様々な課題を目の当たりにし衝撃を受けました」と続け、2つの業界の置かれる環境が語られました。
■エシカルへの感覚を育むには?
現役高校生ながら、責任ある消費に向けて活動する有志団体「Team if.」に所属する品川 陸人さんは、語られた各業界の現状に対し、「生産者が見えず、その商品を買うことでどれだけの人や環境に影響を与えるか知らずに、誰もが商品を手に取っている現状。その消費の一回一回の重みをもっと感じて欲しいんです」と訴えかけます。
若さの中に強い課題意識と、まっすぐな意志を持つ品川さんを、「驚くべき高校生。教育って大事だなと感じますね」と評する坂口さんの言葉から、議論は「エシカルへの感覚を育む教育の重要性」へと展開します。
Spiber株式会社で企業主導型保育園を立ち上げ、園長を務める遠藤 綾さんは、「地球に生きているという感受性」の育成を目指したユニークな活動を紹介。「先日実施したお泊まり保育では、お金を介さず自分たちで調達できるものだけを使って夕ご飯を作る、という試みを行いました。どうやってお肉を調達するかを考えたり、海に貝や魚を採りに行ったり。野菜や果物は、自分たちで描いた絵やネックレスと物々交換したり…。食べるためのプロセス全てが深い学びのきっかけになります」。
坂口さんは、「この保育園の子供達は、エシカルという言葉をごく自然なものとして体現している。こういった教育が浸透すると、将来的にはエシカルという言葉を使わなくてもいい世界になるんじゃないかな」と期待を寄せました。
■論理的にではなく、感覚的に「エシカル」を
次なる議論のきっかけを呼んだのは、高校生・品川さんの日本人の消費傾向に対する気づきでした。「日本では、『エシカルな商品です』と宣伝したところで売り上げへのインパクトがあまりないという話を聞いて、残念だなと思って…」という品川さんの率直な感想を受け、参加者の一人からは、「エシカルのどの部分であれば消費者に響くと思いますか?」という質問が寄せられます。
一般社団法人コンサベーション・インターナショナル・ジャパン広報として、SDGs達成へ向けた普及啓発に取り組む磯部 麻子さんは、「エシカルは、サステナブルな社会を作るための第一歩。つまり人と地球に配慮したライフスタイルを実践することそのものだと思っています。もし一般の消費者の方に、『地球にいいことをやっています』ということが響かないんだとすると、サステナブルなライフスタイル自体が、すごく『かっこいいこと』、『おしゃれなこと』といった感覚を出していくことも大切では」と、感情に訴えかけるアプローチの重要性を語りました。
石川さんは、「エシカルだから売れる」という構造になりにくいファッションの消費傾向を紹介した上で、「環境保全や地球環境への配慮が、頭で理解するだけではなく、欲求や欲望と呼べるくらいまで高まらないと、購買するためのキーワードにはならないですよね」と分析します。
重ねて遠藤さんは、「散歩中ゴミを拾う子どもに、大人は『偉いね』って言うんですけど、子供達はなぜ大人が褒めるのかがわからない。『ゴミがあると草が苦しそうだね』と草の気持ちになっていたり、土や草と仲間である、というだけなんです。子供達にはごく普通なこととして、身の回りの自然を良い状態にしてあげたいという思いがある。その感覚を大事に、積み重ねられていくといいなと思っています」と語り、論理的にではなく、感覚的に人々がサステナブルなライフスタイルを選び取る未来に期待を寄せました。
●一人ひとりのエシカルなアクションに向けて
セッションも終盤に近付き、議論は「私たちが今できるエシカルなアクション」に展開します。
教育現場に目を向けると、「学校の教科書や塾のテキストも含め、確実に良い方向に変わってきている。」(磯部さん)と言いますが、田原さんは、「情熱が伝染するコミュニケーション」に着目。「スターバックスでも各店に必ず一人か二人、エシカルに興味を持っているパートナー(従業員)がいて、彼ら自身が勉強して伝えていく。そういう情熱が伝染してコミュニケーションが深まっていく例は多くあります」と実体験を語り、一人ひとりができる小さなアクションの重要性を語りました。
坂口さんはこれを受け、「エシカルと一言で言ってしまうと、どこから取り掛かったらいいか難しいけれど、『一人の百歩よりも百人の一歩』という言葉の通り、自分の生活の中でまずは1%何かを変えてみようとする。知ってみようとする。それが一番大事なのでは」と続けます。
「まずは今日、私たちスピーカーに話しかけることから始めていただければ」と、スピーカーと参加者の垣根を超えたトークを呼び掛けて、熱いセッションを締めくくりました。
感覚的に「心地いい」と思える毎日を、誰もが自然な形で選び取る世界。そんな世界に必要なのは、「今日の私が踏み出す小さな一歩」かもしれません。小さな一歩が誰かの一歩を誘い、大きなうねりとなる未来を目指して、スターバックスは私たちに今できることと向き合い、歩みを続けていきます。
<モデレーター>
坂口 修一郎(さかぐち しゅういちろう)
BAGN Inc.代表 / 一般社団法人リバーバンク代表理事 / 音楽家 / プロデューサー。1971年鹿児島生まれ。1993年より無国籍楽団ダブルフェイマスのメンバーとして音楽活動を続ける。2010年から野外イベント“グッドネイバーズ・ジャンボリー”を主宰。企画/ディレクションカンパニーBAGN Inc.(BE A GOOD NEIGHBOR)を設立。東京と鹿児島の2つの拠点を中心に、日本各地でオープンスペースの空間プロデュースやイベント、フェスティバルなど、ジャンルや地域を越境しながら多くのプレイスメイキングを行っている。2018年鹿児島県南九州市川辺の地域プロジェクト「一般社団法人リバーバンク」の代表理事に就任。
<スピーカー>
磯部 麻子 (いそべ あさこ)
一般社団法人コンサベーション・インターナショナル・ジャパン 広報担当 マーケティング&コミュニケーション シニアコーディネーター。東京都出身。学生時代にオーストラリアやアジアを旅した経験をもとに在学中に自然や民族をテーマにした輸入雑貨業を起業。その後IT業界、外資系企業において、主に企業のブランディングに関わるプロジェクトに携わる。その後、元々大好きだった自然に携わる仕事がしたいと思い、2010年よりCIジャパンに参加。CIのグローバルネットワークを活かしながら、コーヒーによるSDGs達成へ向けた普及啓発に取り組む他、CIジャパンが実施する国内外プロジェクトのコミュニケーションを担当している。
石川 俊介(いしかわ・しゅんすけ)
株式会社エグジステンス デザイナー。1969 年兵庫県出身。学生時代から古着やスニーカーの買付けを行う。大学卒業後は経営コンサルティングの会社に勤務した後、2002 年ファッションブランド「marka 」を立ち上げ。2009 年にはじめた新ライン「MARKAWARE 」ではいち早くファッションのトレーサビリティに着手。2019 年秋冬から、よりサステナブルなファションを標榜して新ブランド「TEXT」をスタート。人と環境に優しい素材と工場を求め世界中を巡っている。日々日本茶の鑑定と生産に取り組む。
品川 陸人(しながわ・りくと)
オーストラリアの大学を志望する高校3年生。
2018年夏にボルネオ島に行ったことをきっかけに、現在は、ボルネオで見た森林伐採、それに密接に関わっているのに無意識な僕たち。これらの問題にアプローチし、解決するプロジェクトringを進めている。
遠藤 綾(えんどう あや)
Spiber株式会社 / やまのこ保育園 園長。2005-07年大学の研究機関で子どもをテーマに研究・実践に従事。2008年から主に子ども領域で書く仕事・つくる仕事に携わる。2013-16年 NPO法人SOS子どもの村JAPANで家族と暮らせない子どものための仕事に携わる。2016年Spiber株式会社入社。2017年やまのこ保育園home、2018年やまのこ保育園を立ち上げ、現職。「地球に生きているという感受性」を育むために奔走中。一男一女の母。
田原 象二郎(たはら しょうじろう)
コーヒースペシャリスト。スターバックス コーヒー ジャパン 商品本部 リテイル&ビジネスディベロップメント部 リテイルグループ コーヒーリーダーシップチーム。2000年に入社。ストアマネージャーを経て、2006年からはコーヒースペシャリストとして活躍している。パートナー(従業員)のコーヒーに関する知識向上のための教育プログラムを開発し、パートナーからお客様へ分かりやすくコーヒーの魅力を紹介するしくみを考えて伝達している。また、コーヒーの生産地を実際に訪れた経験を活かして、同社の取り組みを社内外に伝えている。
【AMU TOKYO】
人々が社会にインパクトを与えるような対話を行い、世の中に発信していくための場所です。 「AMU(編む)」という言葉に込められたコンセプトは、多様な人や価値観がつながり、情熱が一つになる、というスターバックスがこれまでずっと大切にしてきた想いをベースにしたものです。さまざまな人の想いや情熱がつながり、編まれることで、新たなアイデアやクリエーションが生まれるきっかけをつくります。それを積み重ねていくことで、革新的なコミュニティを作り、社会により良い変化を起こしていきます。コーヒーを楽しみながら、つながりを生み出し、より良い未来のために、一人ひとりがどう行動すべきか、考えます。
https://www.starbucks.co.jp/roastery/amutokyo/