大学通信から中学・高校のニュースリリースをお送りします。
学校法人桐蔭学園(横浜市青葉区:溝上慎一理事長)トランジションセンターは、8月4日(日)に第1回「学校と仕事・社会をつなぐ『トランジション』の学びフォーラム」を開催した。アクティブラーニング・探究・キャリアのワークショップ型研修で、全国から200名弱の参加者が集まった。
学校法人桐蔭学園では、幼稚園から大学まで全学校種において「アクティブラーニング(AL)型授業・探究・キャリア教育」を推進している。同学園では2015年から毎年、ALの取り組みを全国の教育機関と共有することを目的として、「アクティブラーニング公開研究会」を開催してきたが、今回のフォーラムはその発展型といえる。
このフォーラムは、桐蔭学園における授業実践のノウハウ発信だけでなく、全国から現役の教員を講師に招いて、参加者全員が学び合うワークショップ型研修であることが特徴。北は北海道、南は沖縄まで、全国から中学・高校・大学の教職員、企業関係者が200名弱参加した。
【本イベントのポイント】
(1)全国の選りすぐりの講師陣
ファシリテーターは全員現役の教員で、学校現場のみならず、様々な地域で活躍している魅力的な講師陣。教育の現状に合わせた実践的かつ先進的な教育プログラムが受講できる。
(2)「AL・探究・キャリア」のワークショップ型研修
教育の現状、相互の学び合いを引き出す実践型のプログラム。講演を聞くだけでなく、学校現場ですぐに実践できる内容を共有する。
(3)交流機会の実施
全国で教育改革を実施する仲間との交流により、孤立しない教員ネットワークの形成を図る。講師のみならず、参加者同士の活発な発言や、相互の教育情報の共有などができる場を提供。
【講座・ワークショップ講師】
・池田 径(大阪府教育センター附属高等学校指導教諭<教育相談分野人間関係論>)
・井上 志音(灘中学校・高等学校国語科教諭兼進路指導部長兼国際バカロレア試験官)
・大畑 方人(東京都立高島高等学校主任教諭<公民科>)
・木村 裕美(東京都立駒場高校主任教諭<家庭科>)
・林田 暢明(角川ドワンゴ学園N高等学校顧問兼北九州市立大学大学院特任教授)
・藤牧 朗(目黒学院中学・高等学校教諭 進学・学習指導部主任)
・松井 晋作(桐蔭学園トランジションセンター専任講師)
※講座および講師のプロフィール詳細は、以下のURLご参照。
https://www.toin-tc.com/
各参加者が上記の中から受講したい講座を選び、各教室に分かれて受講した。
例えば藤牧朗教諭の「ルーブリックを用いた評価策定」の講座では、自身が普段の授業で実践している手法や考え方の紹介と、「ルーブリックはどんな場面で必要になるか?」「評価は何のために行うのか?」などのグループワークを行った。
藤牧教諭自身は、アクティブラーニング型授業において生徒の評価をどうするのかという問題に直面し、客観性と公平性を担保する評価法としてルーブリックを導入したという。
講座の中で藤牧教諭は「ルーブリックを使うと時短・ぶれない・公平性の担保というメリットがある。ルーブリックを生徒に見せることでそれが『学びの羅針盤』となり、学習活動や自己評価の指針となる」と話した。また「同じルーブリックを使っても、評価者によって結果に隔たりが生じることもある。評価者同士が話し合い、随時更新していくことも必要だ」と語った。
【基調講演】
・川妻 篤史(桐蔭学園教育企画室長・教務部次長)
・溝上 慎一(桐蔭学園理事長)
川妻篤史室長の講演では、桐蔭学園におけるアクティブラーニング型授業の導入経緯と実施状況、さらには学園内のトランジションセンターと連携した教学IRについての説明があった。
同学園のAL型授業では講義とALのバランスを重視し、授業に20%程度ALを入れている。ALでは自分の頭の中にある思考を外に出すことが重要で、それによって自分の考えを誰かに受け止めてもらう。そこからさらにステップとして自分の思考に戻っていくことで、「個」→「協働」→「個」のサイクルを回していくのだという。
同学園でAL型授業を実践して5年目となるが、そこで蓄積されたデータは教学IRに活かされている。生徒の模試の成績変化を分析すると、実はALとの相関関係は見られないという。つまり現状では、ALは生徒の成績向上に寄与しているわけではない。この結果に対して川妻室長は「模試の成績に効果をもたらすようなALが実践できていないということなので謙虚に受け止めたい」と話した。さらに「逆に、ALの実施が模試の結果に悪影響を与えているわけではないと言うこともできる。学校から社会へのトランジションを考えると、ALを通じて協働性やコミュニケーション力を育てていくことは必須であり、ALと学力の向上は両立していける可能性はあるわけです」と語った。
溝上慎一理事長の講演ではまず「データとエビデンスを使って学校の活動をチェックし、生徒の成長をアセスメントしていく。さらに学校のさまざまな取り組みに繋げて発展させていくのがIRの役割だ」という解説があった。さらに昨年まで在籍していた京都大学でのIRの取り組みを例に挙げながら、「大学や学生の間に起こっていることでも、意外に学内で知られていないことも少なくない。その実態を明らかにして、狭い個人的な経験から脱却させるためにIRは必要だ」とした。
また、「ステークホルダーへの説明責任を果たすためのIRだけでなく、収集・分析するデータなどから出てきた課題を解決しながら組織のパフォーマンスを向上させていかなければなりません」と話した。「ただ全国的にみれば、データやエビデンスは集めたが、その先の改善にはいたっていないという例は山ほどある」とも指摘した。
溝上理事長自身は実際に京都大学でIRに関する部署の一つを統括してきた経歴を持つ。ただ今年度から桐蔭学園の理事長として学校をマネジメントする立場となり、IRの見方が少し変わり始めたという。
「理事長や学長などの経営トップにはまず『ビジョン』があるのであって、そのビジョンはIRによって簡単に変えられるものではありません。むしろIRはビジョンの実施に関するエビデンスを収集し、教育現場での具体的な取り組みにおける改善のために使われるものなのだと感じています」。
○参加者の声
・大手前高松中学高等学校(香川県高松市) 合田意(ごうだのぞみ)教諭
「溝上慎一先生の教育論が好きで、4年ほど前から可能な限り先生の企画に参加してきました。このイベントの前身である『アクティブラーニング公開研究会』にも参加したことがあり、桐蔭学園に来るのはこれで3回目です。教育界のフロントランナーであり、アクティブラーニングの先を見据えている先生の考えを知り、自分の教育活動に落とし込みたいというのが、参加の動機です。普段の授業ではリフレクション(振り返り)を重視していますが、これまでの活動と今回受講したワークショップがリンクし、理解が深まりました。早く学校に戻って授業に生かしたい気持ちでいっぱいです」
・桐蔭学園高等学校(横浜市青葉区) 新井大輔教諭
「今年度、高校の『スタンダードコース』の主任になったこともあり、リーダーシップについて学びたいと思っていました。そのため、今回のフォーラムでリーダーシップのワークショップが選択できることを知り、すぐに参加を決めました。実際の講座では、他校の先生や他業界の人など、通常では接点のない人と意見交換や情報交換ができて有意義でした。『21世紀型のリーダーシップ』=権限や役職に関係なく誰もが発揮するリーダーシップだという話を聞き、自分がこれまでイメージしていたものと同じ方向性だったことがわかったので、自信になりました。今後は自分なりにアレンジして業務に活かすとともに、桐蔭学園の先生方にも共有していきたいと思います」
▼本件に関する問い合わせ先
桐蔭学園 トランジションセンター
(担当:松井・武田)
住所:〒225-8502 神奈川県横浜市青葉区鉄町1614
メール:transition@toin.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/