【京都産業大学】ミトコンドリアのポリンがミトコンドリアタンパク質搬入装置の集合を制御することを発見



京都産業大学の遠藤斗志也教授らの研究グループは、小分子の代謝物質のミトコンドリアへの出入りを担うポリンが、Tom22と結合することで、TOM複合体の3量体から2量体への変換を促進することを見いだした。さらにTOM複合体の3量体と2量体が通過させるタンパク質の種類は異なることも新たに見いだし、ポリンはこうした機能変換を助ける働きをしていることがわかった。




 ミトコンドリア(注1)は細胞内で生命活動に必要なエネルギーを産生し、ヒトではその正常機能がヒトの健康につながっている。ミトコンドリアの機能低下は老化や神経変性疾患、糖尿病、がんなど様々な病態と関連することが知られている。正常機能のミトコンドリアを維持するためには、ミトコンドリアの外(サイトゾル)からミトコンドリア内にミトコンドリアを構成する1000種におよぶタンパク質を配送する必要がある(注2)。このミトコンドリアへのタンパク質搬入口として働くのが、複数のタンパク質が組み合わさって出来たTOM複合体(注3)である。

 今回京都産業大学の遠藤斗志也教授らの研究グループは、小分子の代謝物質のミトコンドリアへの出入りを担うポリン(注4)が、Tom22と結合することで、TOM複合体の3量体から2量体への変換を促進することを見いだした。さらにTOM複合体の3量体と2量体が通過させるタンパク質の種類は異なることも新たに見いだし、TOM複合体は組成を3量体と2量体で変えることで、さまざまなミトコンドリアタンパク質をうまく取り込めること、ポリンはこうした機能変換を助ける働きをしていることがわかった。またTOM複合体の構成因子Tom6は2量体から3量体への変換を促進することで、ポリンと逆の調節を担うが、この調節が細胞周期(注5)に依存することも明らかになった。ミトコンドリアへのタンパク質搬入のメカニズムの解明により、ミトコンドリアへのタンパク質配送に関連する病気の治療法の開発や、老化とミトコンドリアの関係解明へのあらたな糸口が見つかることが期待される。



 むすんで、うみだす。  上賀茂・神山 京都産業大学

※用語解説 
(注1)ミトコンドリア
 酵母からヒトまで広く真核生物の細胞内に見られる必須のオルガネラ(細胞小器官)。生命活動に必要なエネルギー(ATP)を酸素呼吸によって産生するほか、さまざまな物質の代謝やアポトーシスにも関わる。ミトコンドリアの機能低下や機能異常と老化やがん、糖尿病、さまざまなミトコンドリア病との関連がわかっている。ミトコンドリアの機能を健全に保つことがヒトの健康に重要であることから、健全なミトコンドリアを増やす方法が注目されている。

(注2)タンパク質の配送機構
 細胞内で合成されたタンパク質は、働くべき目的地に正しく配送される必要がある。ブローベルらはタンパク質には宅配便のように自分自身に宛名が書き込まれており、それを目的地の装置(トランスロケータの受容体)が読み取る、という原理があることを発見した(1999年ノーベル生理学医学賞)。シェクマンとロスマンは、さらに小胞体からリソゾーム、細胞膜を含む細胞内膜系の間のタンパク質の輸送が小胞を介して行われ、小胞を生み出す膜、小胞、目的地の膜の間でタンパク質の選別の原理が働くことを見出した(2013年ノーベル生理学医学賞)。このようにタンパク質の宛名や選別の仕組みについては理解が進んできたが、トランスロケータがタンパク質をどう膜透過させるのか、などの詳細な仕組みの解明に必須となるトランスロケータの構造については、原核生物等一部の膜系のものについてしか明らかになっていない。

(注3)TOM複合体
 酵母からヒトまで保存されているミトコンドリア外膜のトランスロケータ(膜透過装置)で、800種(酵母)~1500種(ヒト)におよぶ、ほとんどすべてのミトコンドリアタンパク質のミトコンドリアへの搬入口として働く。ミトコンドリア行きシグナルを認識する受容体、ミトコンドリアタンパク質前駆体の外膜透過を行うTom40、複合体の集合に重要なTom22など7~8種類のサブユニットから構成される膜タンパク質複合体。

(注4)ポリン
 酵母からヒトまで進化的に保存されたミトコンドリアの外膜のチャネルタンパク質(筒状のバレル型膜タンパク質)で、ミトコンドリアとサイトゾルの間の代謝物質(分子量数千以下の小分子)の輸送を担う。ヒトなどの哺乳動物ではVDAC(電位依存性陰イオンチャネル)と呼ばれる。ミトコンドリアの様々な機能において重要な役割を果たし、アポトーシスにも関わることから、創薬のターゲットとしても注目される。

(注5)細胞周期
 細胞が増えるときは、まずDNAの複製が行われ(S期)、複製が完了すると次に細胞が2つの娘細胞に分かれて、DNAが各々に分配される(M期)。この一連のイベントの進行を細胞周期とよぶ。イベントの順番が狂うと娘細胞にDNAが正しく伝わらないため、細胞周期の進行を厳密にチェックし、間違いが生じないようにする仕組みが存在する。



関連リンク
・ミトコンドリアのポリンがミトコンドリアタンパク質搬入装置の集合を制御することを発見
 https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20190207_345_release_ka01.html
・京都産業大学研究ブランディングサイト「生命とタンパク質の世界」
 https://www.kyoto-su.ac.jp/protein/

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