北太平洋域にて初めて首長竜と翼竜の共存が判明 ~現存する生態系の成立過程の解明に期待~東京都市大学知識工学部中島保寿准教授ら研究チーム



東京都市大学(東京都世田谷区、学長:三木 千壽)知識工学部自然科学科の中島保寿准教授らの研究チームはこのたび、北海道三笠市に分布する三笠層(※1)から首長竜(※2)の化石(頸椎骨)を発掘した。中島准教授らのチームは2003年に同じ地層から翼竜(※3)の化石を発見しており、今回の発掘で、首長竜と翼竜が1億年前の同時代(白亜紀(※4)中頃)に同じ地域で共存していたことを明らかにした。今回判明した事実は、当時の北太平洋域における生態系の全体像を明らかにするとともに、現在の生態系の成立過程解明への貢献も期待されるものとなる。なお、この成果は、6月3日の「第36回 化石研究会 総会・学術大会」で発表された。




【ポイント】
○白亜紀に生息した首長竜と翼竜の化石が、同じ地層(三笠層)で発掘された。
○過去に三笠層で発見された他の化石(魚類、貝、アンモナイト等)との組み合わせから、当時の北太平洋域における生態系の全体像が明らかになってきた。
○白亜紀中頃は、急激な地球温暖化と生物の多様化が進み、現代の生態系基盤ができあがった時期とされることから、当時の生物群集(※5)を知ることにより、現代に続く生態系の成り立ちについて理解を深めることができる。

【概 要】
 中島准教授らのチームはこのたび、中生代白亜紀に堆積した三笠層の中にある脊椎動物の化石密集層から、海の大型爬虫類である首長竜の首の骨(頸椎骨)を発見した(図1、2)。同チームはこれまでの調査で、同じ地層から中生代(※6)の空の爬虫類である翼竜の四肢骨(図3)、サメや硬骨魚類、二枚貝や巻貝、アンモナイトなどの化石を発見しており、今回の発掘で、現在の北海道に相当する地域で首長竜と翼竜(図4)が共存していたことを初めて明らかにした。
 厚さわずか30cmほど(単純計算で、30cm堆積するのに1万年程度を要するとされる)の全く同じ地層から多様な生物化石の群集が見つかることは極めてまれなことで、今回の発見は、同時期・同地域に生息した生物の組み合わせ(生物相)を示すものとしても重要である。
 また、化石密集層が示す白亜紀中頃(約1億年前)は、急激な地球温暖化と生物の多様化が進んだ時期で、現代の生態系の基盤ができあがった時代とされている。この時代の理解を深めることで、現代の生態系成立を解明できる可能性がある。

【背 景】
 現在の地球上には、哺乳類を食物連鎖の頂点とした生態系が広がっているが、今から約2.5億年前~6600万年前の中生代に地球上で繁栄していたのは、哺乳類ではなく爬虫類だった。中生代の爬虫類といえば、代表的なものは恐竜である。恐竜はワニに近い爬虫類から進化した動物で、基本的に陸上で生活していた。中生代には恐竜以外にも、空を飛ぶ爬虫類である翼竜や水中を泳ぐ爬虫類である首長竜、魚竜(※7)、モササウルス類(※8)などが繁栄していた。
 中生代の中でも、白亜紀の中頃は地球温暖化が進んだ時代とされ、温室効果ガスであるCO2の大気中濃度が現在の4倍程度(1500ppm)にまで上昇したとされる。花を咲かせる被子植物や花粉を媒介する昆虫、鳥類、カメなどが多様化した一方、魚竜などの生物の多くが絶滅し、現代の生態系の基盤ができあがった。このことから、白亜紀中頃の生態系を理解することは非常に重要であると考えられている。
 白亜紀中頃の地層は国内でもいくつかの地域で確認されている。北海道中西部の三笠市に分布する砂岩層「中部蝦夷層群・三笠層」は、白亜紀の比較的浅い海の底で堆積した地層で、二枚貝類、巻貝類、アンモナイトなど、多種多様な海洋生物の化石が発見されることで有名である。
 三笠層のうち、特定の層準から脊椎動物の化石が見つかることは知られていたが、種類を明らかにするには化石の保存状態が悪いため、報告は予察にとどまっていた。そこで、本研究チームは、化石の追加解析と継続的な発掘調査を行ってきた。そしてこのたび、発見した化石を分析し、首長竜の化石であることを明らかにした。

【応用と課題】
 これまで国内の化石研究においては、個々の化石や生物が注目されてきたが、本研究は同じ地層から発見された古生物を群集としてとらえ、生態系の全容解明を目指すという点で新しい試みであるといえる。
 今後は、生態系の全容を解明すべく、これまで発見された化石と標本との比較検討を行うとともに、新たな化石発見を目指し、精力的に発掘調査を行っていく。また、新たな分析技術を導入することで、生物の組み合わせ(生物相)だけではなく、生物間の相互作用を含めた研究を展開し、さらには地域社会の振興にも貢献していきたいと考えている。

<用語解説>
(※1)三笠層
 日本ジオパーク(地学分野において重要な遺産を守り、教育や観光に活用しながら、持続可能な開発を進める地域認定プログラム)の1つである三笠ジオパーク内に分布する中生代・白亜紀(約1億年前)の地層。三笠ジオパークは、北海道三笠市にあり、炭鉱遺産や白亜紀の化石で有名。白亜紀後期の水生爬虫類「エゾミカサリュウ」の産地としても重要性が認められている。
(※2)首長竜
 中生代に繁栄した海の爬虫類のグループ。名前の通り首の長い種類が多いが、首の短い種類もいた。恐竜ではない。
(※3)翼竜
 中生代に繁栄した、空を飛ぶ爬虫類のグループ。大きさはさまざまで、最大級のものは翼開長10mを超えたとされる。恐竜ではない。
(※4)白亜紀
 約1億4500万年前から6600万年前までの間。現在と比べて大気CO2濃度が高く、温暖であったとされる。
(※5)生物群集
 ある場所に生息する全生物を一つの集団とみなしたもの。
(※6)中生代
 約2億5200万年前から約6600万年前までの間。白亜紀は中生代のうち最後の時代区分。中生代の始まりと終わりはそれぞれ、史上最大規模の生物の大量絶滅事件によって区切られている。
(※7)魚竜
 中生代に繁栄した、魚のような体型をした海の爬虫類のグループ。白亜紀の中頃の温暖期に姿を消した。恐竜ではない。
(※8)モササウルス類
 白亜紀に繁栄した、大型の海の爬虫類。トカゲの仲間であり、恐竜ではない。

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