金沢工業大学は米を原料とする市販の甘酒にコレステロール低減と便通改善効果が高い成分が含まれていることを学術的に初めて実証しました。これは金沢工業大学バイオ・化学部応用バイオ学科尾関健二教授の研究室と、米こうじを使った麹漬の素や甘酒製造等を手がける厚生産業株式会社(岐阜県揖斐郡)との共同研究で実証されたもので、2018年3月15日から18日まで名古屋市で開催された日本農芸化学会2018年度大会で発表しました。
甘酒は「飲む点滴」とも言われ、健康飲料や栄養補給剤として注目されています。甘酒には肥満抑制や腸内改善効果があると経験的に言われていますが、甘酒の健康効果や機能性に関する学術的な検証は少ないのが現状でした。
尾関教授の研究グループは米に含まれるタンパク質のうち、10%-15%程度を占める「プロラミン」に着目しました。プロラミンはヒト消化器官内で消化・吸収されにくいレジスタントプロテインと呼ばれる難消化性タンパク質の一種で、食物繊維様物質として機能するとともに、便秘改善やコレステロール排出促進、肥満抑制効果などの生理作用があると経験的に言われています。
このプロラミンが市販の甘酒にどの程度含有され、また含有量は製造法による違いがあるのかについて、研究グループは市販されている14種類の甘酒についてプロラミン含有量の測定を行いました。それぞれの甘酒40mlを遠心分離(8,000rpm、15分間)にかけ、上清(上澄み液)と沈殿物に分けて分析したところ、上清にはプロラミンはほとんど検出されず、沈殿物は14種類の甘酒すべてにプロラミンを検出しました。
甘酒の製造方法の違いとプロラミン量との相関を見たところ、製造法では「米麹と米のみから製造されている甘酒」、「米麹と酒粕のみから製造されている甘酒」、「酒粕のみから製造されている甘酒」、「米麹のみから製造されている甘酒」の順にプロラミン含有量が少なくなり、甘酒の原材料によってプロラミン含有量に傾向があることがわかりました。
またヒトではコレステロール低減効果や便通改善効果を発揮するプロラミンの有効量は約113mg/日と言われ、米麹と米のみから製造されている甘酒コップ1杯(約150ml)には、ヒトで機能性を発揮できるプロラミン量が含まれていることが推測されました。
研究グループでは今後、プロラミンを高含有する甘酒製法の開発を行う考えです。
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