芝浦工業大学(東京都港区/学長:村上雅人)応用化学科の吉見靖男教授は、分子インプリント高分子とカーボンペーストを利用して、血液中でも高い感度と再現性を示すヘパリンセンサを開発した。ヘパリンとは、血液の凝固を抑える薬で、人工心肺を用いる心臓切開手術では不可欠である。しかし、この薬の投与量が多すぎれば出血を起こすため、厳密な薬剤濃度の管理が求められる。従来、血液凝固時間を計ってヘパリンの濃度の代わりに「ヘパリンの効き具合」を判定する方法が採られていたが、その値でヘパリン投与量の過不足を判断することはできなかった。そこで血液中のヘパリンの濃度を直接監視できるセンサの開発に至った。
【ポイント】
(1)従来のバイオセンサに比べて耐久性に優れ、保存しやすい
(2)短時間・低コストで均質なセンサを作製可能
(3)応答が約30秒と速いため、リアルタイムなセンシングが可能
【開発背景】
吉見教授は特定物質(今回はヘパリン)を認識できる高分子膜を電極に被覆することで、血液中の特定物質を検出するセンサを開発してきた。ラジカル重合で高分子の膜に目的物質の分子構造を記憶させる仕組みだ。今までは平板電極を反応液(高分子の原料と目的物質を混ぜた溶液)に浸して、光照射してセンサを作る方法を取ってきた。しかし、この方法では、均質な高分子膜を形成することは難しく電極ごとに感度のバラツキが発生するという問題があった。衛生面を考えると、臨床用センサは単回測定して捨てる必要があるが、センサ間の感度のバラツキが大きいとそれができなくなる。
そこで新しく、表面にラジカル重合開始剤を固定したカーボン粒子(直径8ミクロン)を反応液に浸して、よく混ぜながら光を当てて表面に高分子膜を形成する方法を開発した。この時点では各粒子表面にできる膜には多少のバラツキがあるが、これに油を加えてよく混ぜてペースト状にして表面を平らにすれば、均質な電極が出来上がる。実際に発生する電流を測定したところ、作られた電極はどれもヘパリンに対して同じ感度を示した。さらにウシの全血中(血漿分離していない血液)でも安定した感度を示すことが確認され、血液中のヘパリン濃度を簡単に測定する使い捨て型のセンサとして期待できる。測定にかかる時間は30秒程度であり、リアルタイムな計測が可能。またこの高分子は、構造を記憶させる分子を変えることでさまざまな物質をセンサのターゲットにできる。
【今後の展望】
吉見教授は今後、抗菌剤や免疫抑制剤など、投与の際に厳密な管理が求められるさまざまな薬剤の血中濃度を簡便かつ迅速に測定できるセンサを開発していく方針。
なお、この技術については2017年2月15日(水)~17日(金)にインテックス大阪で開かれるメディカルジャパンに出展予定。
■メディカル ジャパン 2017 大阪(第3回 日本 医療総合展)
会期: 2017年 2月15日(水)~17日(金) 10:00~18:00 (最終日のみ17時まで)
会場: インテックス大阪
・再生医療 産業化展ブース(12-38番) にて実演
※製品・技術セミナー (申込不要:受講を希望される方は直接会場(展示会場内 特別スペース)へお越しください。)
2017年2月15日(水) 11:50~12:20
会場: セミナー会場N (インテックス大阪 3号館)
▼本件に関する問い合わせ先
芝浦工業大学 経営企画部企画広報課
担当: 鮫島
TEL: 03-6722-2900
E-mail: koho@ow.shibaura-it.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
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