土木工学科の伊代田岳史准教授は、西武建設株式会社(埼玉県所沢市、代表取締役:宮本文夫)と共同で、ドローンを用いて人手の届かないコンクリート構造物に必要な水や補修剤を散布できる仕組みを構築した。近年、カメラ撮影や打音調査を用いて建物や橋梁のひび割れなどを検知する「点検ドローン」については開発が進められているものの、そのひび割れに対し処置剤を施すなどの「補修ドローン」は、議論・検討が進んでおらず前例がなかった。
伊代田准教授は、構造物に対する適切な補修材料や補修方法、これを実現するためのドローン運用方法に関するアイディアを提供し、現場の声を聞きつつ実現に向けて企業と検討を進め、試作機を製作した。今後は、散布の精度向上、自律航行を可能にするなどの改良を行いながら「点検ドローン」との相互活用・連携や異なる環境の現場に適応した機体を開発・実用化し、建設業界初の構造物の維持管理方法の確立を目指していく。
■狭い範囲での散布に有効
コンクリート材料、構造物の維持管理方法などについて研究を進める伊代田准教授は、構造物に対して適切な補修材料や補修方法、これを実現するためのドローン運用方法に関するアイディアを提供し、同社と共同で実験を進めてきた。今回製作した試作機は、既存の機体を改造したもので、2Lのタンクで水や補修材料を蓄え、4本のノズルを使って散布する。ノズルは散布角度のほか、先端を回すことで水流や水圧を調整でき、実験では1m2平均18.3秒で吹付ができることを確認した。農薬散布ドローンに見られるような下方向・広い範囲ではなく、上下左右方向・狭い範囲でピンポイントに散布ができるのも特徴。
■建物の維持管理効率化へ
この補修ドローン導入により補修作業を遠隔操作によって行うことが可能となる。これにより、高所作業車や足場の設置が困難な海上や、高い場所にある橋梁、人が容易に近づけない危険な場所など大がかりな準備が必要であった箇所の補修への活用が可能となる。つまり、作業車や足場を必要としないため、設置や撤去にかかっていた作業工程・人力の負担削減、作業者の安全性向上などが期待できる。
一方、今回作った試作機での作業実験では、人力と比較してムラが生じやすいため補修材を無駄に消費してしまう課題が見つかっている。今後、補修材を高い精度で散布する技術や自身が自律して補修作業を行う技術の開発を進め、将来的には、自律化や「点検ドローン」との相互活用・連携も検討し、建設業界初となる構造物の維持管理方法の導入を目指していく。
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