【昭和医科大学】医薬品の設計に役立つ重要な「分子間相互作用」を3次元で解明 ― より効率的で合理的な創薬につながる新たな手がかり ―

昭和医科大学(東京都品川区、学長:上條由美)大学院薬学研究科 生物物理化学分野の早川大地准教授と合田浩明教授は、医薬品によく含まれる「ハロゲン化ベンゼン」と呼ばれる分子構造の周囲で生じる重要な分子間相互作用(分子どうしが引き合う力)の3次元的な形成パターンを、独自に開発した解析手法を用いて明らかにしました。
多くの医薬品は、体内の標的となるタンパク質等に結合することで効果を発揮します。その結合の強さや正確さを左右するのが分子間相互作用です。本研究により、医薬品に多く用いられる構造がどのような位置や向きで分子間相互作用を形成しやすいかが3次元的に示され、医薬品候補となる分子をより合理的に設計するための新たな手がかりとなることが期待されます。
本研究成果は、米国化学会(American Chemical Society)が発行する物理化学分野の国際学術誌『The Journal of Physical Chemistry B』に掲載されました。


【研究成果のポイント】


医薬品によく含まれる「ハロゲン化ベンゼン構造」の周囲で形成される3種類の重要な分子間相互作用(π/π相互作用*1、CH/π相互作用*2、ハロゲン/π相互作用*3)の形成パターンを3次元的に解明しました。

独自に開発した量子化学計算に基づく解析手法と、大規模な結晶構造データベースの統計解析を組み合わせることで実現しました。

本成果は、医薬品候補となる分子をより合理的に設計するための新たな手がかりとなり、今後の医薬品開発への貢献が期待されます。



【研究の背景】

 医薬品の多くは、体内に存在するタンパク質などの標的分子に結合することで、その薬効を発揮します。この結合を支えているのが、「分子間相互作用」と呼ばれる、分子どうしが引き合うさまざまな力です。
 近年の医薬品開発では、標的となるタンパク質の立体構造をもとに、コンピューターを用いて医薬品候補分子を設計する「構造に基づく創薬」が広く行われています。そのため、分子間相互作用がどこで、どのような向きに形成されやすいのかを3次元的に理解することは、創薬において非常に重要です。
 医薬品には、「ハロゲン化ベンゼン」と呼ばれる構造が数多く含まれています。この構造は、π/π相互作用、CH/π相互作用、ハロゲン/π相互作用といった重要な分子間相互作用を形成することが知られていました。しかし、それらが3次元空間のどこに、どのような形で形成されるのかについては、十分に明らかになっていませんでした。

【研究成果】

 本研究では、ハロゲン化ベンゼン構造の周囲に形成される3種類の分子間相互作用について、それぞれが形成されやすい位置や方向を3次元的に解析しました。
 その結果、ハロゲンを持たない通常のベンゼンでは、π/π相互作用が形成されやすい領域は環の上下に広がる「O字型」の分布を示す一方、ハロゲン化ベンゼンでは「C字型」の特徴的な分布となることが分かりました。また、CH/π相互作用はその外側の限られた領域に形成され、ハロゲン/π相互作用は炭素とハロゲンを結ぶ結合(C-X結合)の延長方向に形成されることが明らかになりました。
 さらに、ベンゼンにハロゲン原子を導入することで、これらの分子間相互作用が大きく強まり、分子どうしがより安定して結合できることも確認されました。
 これらの成果は、研究グループが独自に開発した量子化学計算に基づく3次元分子間相互作用解析法と、大規模な結晶構造データベースの統計解析を組み合わせることで得られました。理論計算と実際の結晶構造データを組み合わせて検証したことで、解析結果の信頼性も高めています。

【今後の展望】

 本研究で得られた3次元的な分子間相互作用の形成パターンは、医薬品候補となる分子をより合理的に設計する際の新たな手がかりとなることが期待されます。
 今後は、この成果を活用して、標的となるタンパク質により強く、より選択的に結合する医薬分子を高精度に設計するための新しい研究手法の開発を進めていきます。将来的には、創薬研究の効率化や、新しい治療薬の創出につながることが期待されます。

【論文情報】


タイトル:Three-Dimensional Descriptions of π/π, CH/π, and Halogen/π Interactions Formed Between Phenyl Substructures

掲載誌: The Journal of Physical Chemistry B

著者: Daichi Hayakawa and Hiroaki Gouda

DOI: 10.1021/acs.jpcb.6c03632

掲載URL: https://doi.org/10.1021/acs.jpcb.6c03632



【用語解説】

*1 π/π相互作用
 ベンゼン環のような平らな環状構造どうしが重なり合うように引き合う分子間相互作用です。医薬品がタンパク質と結合する際によく見られます。

*2 CH/π相互作用
 炭素と水素(CH)を含む部分と、ベンゼン環などのπ電子との間に働く分子間相互作用です。比較的弱い力ですが、多数集まることで分子の結合を安定させる重要な役割を果たします。

*3 ハロゲン/π相互作用
 塩素や臭素などのハロゲン原子と、ベンゼン環などのπ電子との間に働く分子間相互作用です。ハロゲン原子の表面に形成される「σホール」と呼ばれる正電荷を帯びた領域が、この相互作用に関与します。



▼本件に関する問い合わせ先
 昭和医科大学 大学院薬学研究科 生物物理化学分野 准教授
 早川 大地(はやかわ だいち)
 TEL: 03-3784-8200
 E-mail: d-hayakawa@pharm.showa-u.ac.jp

▼本件リリース元
 学校法人 昭和医科大学 総務部 総務課 大学広報係
 TEL: 03-3784-8059
 E-mail: press@ofc.showa-u.ac.jp

【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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組織名
昭和医科大学
ホームページ
https://www.showa-u.ac.jp/
代表者
上條 由美
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〒142-8555 東京都品川区旗の台1-5-8

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