図3. 粘り気評価実験の結果。(a)パソコンを用いた実験室実験の結果。(b)スマートフォンを用いたオンライン実験の結果。
4.今後の展開
本技術は、こうした「触れられないことによる不確実性」を、視覚情報とインタラクションによって補完するものであり、ユーザが自身の手の動きを通じて質感を直感的に把握できる環境を提供します。これにより、オンライン上での製品理解の向上や、購買判断の支援が期待されます。
また、専用の触覚デバイスを必要とせず、一般的なパソコンやスマートフォンで利用可能であるため、導入コストや利用ハードルを抑えながら、広範なユーザへの展開が可能です。
具体的には、食品や衣料品など、質感が購買判断に大きく影響する製品分野において、柔らかさや粘り気といった情報を視覚的に提示することで、オンライン上での体験価値の向上に寄与します(図1(c))。さらに本技術は、遠隔コミュニケーションにおける体験共有や、教育・訓練分野における直感的理解の支援、エンターテインメント分野における新たなインタラクション表現などへの応用も考えられます。これらの分野においては、質感を伴う体験を非接触で共有できる点において新たな価値を生むことが期待されます。
今後は、実サービスへの適用を見据え、利用環境やデバイス差、通信遅延がユーザ体験に与える影響の検証を進めるとともに、実際の購買行動における有効性の評価を行います。また、産業分野との連携を通じて、具体的な利用シナリオに基づく実証を進め、社会実装に向けた検討を加速していきます。
さらに、本技術で明らかにした視覚パラメータの枠組みを拡張し、重さや温度感など、他の質感要素への適用可能性についても検討を進めます。これにより、視覚を基盤とした質感提示技術の体系化を図ります。
5.関連する過去の報道発表
・2024年9月18日「資生堂とNTT、化粧品の触り心地を遠隔・非接触で体験できる技術開発に向けた共同研究を開始
~両社の強みを活かし一人ひとりの多様なニーズに応え、新たな体験の機会創出をめざす~」
(
https://group.ntt/jp/newsrelease/2024/09/18/240918a.html )
・2025年5月13日「デバイスの装着なしに超音波で空中にリアルな触感を創出~触れずにつるつる・ざらざらとした多彩な触り心地を演出~」
(
https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/05/13/250513b.html )
6.発表した雑誌および国際会議の情報
[1] T. Kawabe, Y. Ujitoko, “Visual features involved in determining apparent elasticity elicit touch desire,” IEEE Transactions on Visualization and Computer Graphics, Vol. 31(10), pp. 9530 – 9536, 2025.
[2] T. Kawabe, T. Morisaki, Y. Ujitoko, “Unbreakable bond: induced viscosity between the fingers,” The 47th European Conference on Visual Perception, 2025.
【用語解説】
※1 Electronic Commerceの略で、インターネット上で商品やサービスを売買する仕組みを指す。