地域おこし協力隊の活動・定着に向け、官民協働による広域的なサポートを実施(新潟県)

~地域おこし協力隊の「受入体制、日本一」を目指す、新潟県の取組紹介①~

 新潟県では、地域おこし協力隊の「受入体制、日本一」を目指し、県と新潟県地域おこし協力隊サポートネットワークの協働による広域的なサポートを開始しています。

 「地域おこし協力隊の推進」をミッションに活動するニイガタコラボレーターズ(新潟県地域おこし協力隊)石塚隊員によるレポートで新潟県の取組を紹介します。
  
  
石塚 直樹隊員
・ミッション:地域おこし協力隊の推進
・活 動 拠 点:十日町市
・着 任 日:2023(令和5)年7月1日着任

1.「三方良し」が求められる地域おこし協力隊制度の活用

 全国の過疎地域等において、地域おこし協力隊の取組が拡大しています。地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る総務省の取組です。

 隊員は各自治体の委嘱を受け、おおむね1年から3年の任期で、活動に取り組みます。活動内容は地域によって異なりますが、農林水産業など一次産業への従事をはじめ、特産物を活かした商品開発、デジタル化などの住民の生活支援、交流の場づくりなど多岐にわたっています。

 2009年から総務省が制度の運用を開始し、2023年時点で7,200人が活動しています。総務省のデータ(2024年4月公表)では、隊員の7割近くが20代から30代の若手であり、2023年3月31日までに退任した隊員の約65%が任期終了後も同じ地域に定住し、起業や就業、就農、事業継承するなど、過疎や高齢化の進行が著しい地方において、地域への人材還流が起き、地域力の維持・強化を図る取組となっています。総務省は制度のさらなる拡充を図っており、地域おこし協力隊の受入は増加傾向がしばらく続くと考えられます。

 しかし一方で、近年、地域おこし協力隊を含む移住者と地域の軋轢やトラブルが話題になることがあります。地域おこし協力隊は、自治体にとって自由度が高い制度であるがために、受入体制の不備や活動内容の曖昧さなどを起因とした問題が起こりやすい状況にあります。地域と隊員双方にとって良い成果を上げるためには、協力隊、地域・団体、行政の「三方良し」の制度設計、そして受入体制が求められています。

2.官民協働で「受入体制、日本一」を目指す、新潟県

「受入体制、日本一」を目指す新潟県
 新潟県の地域おこし協力隊は全国で5番目に多く(2023年度総務省調査)、直近では、2025年3月1日現在で、28の自治体(27の市町村および県)で231名の地域おこし協力隊員が活動しています。
 市町村における取組のほか、2022年度からは広域的な施策や地域課題の解決を目的とし新潟県が取り組む県版の「新潟県地域おこし協力隊(通称:ニイガタコラボレーターズ)」も活動を展開しています。

 新潟県は新たに「受入体制、日本一」を掲げ、地域おこし協力隊や関係地域・団体を総合的に支えて制度活用の質を高める「地域おこし協力隊活用促進事業」を予算化するなど、県域の地域おこし協力隊の推進に力を入れています。

元協力隊員をはじめとした地域の担い手によるサポートネットワークが設立
 2024年3月、新潟県内の地域おこし協力隊の元隊員らが中心となり、「新潟県地域おこし協力隊サポートネットワーク」が設立されました。同ネットワークは「新潟県の協力隊を日本一にすること」をスローガンに掲げ、地域おこし協力隊が地域の中で生き生きと活動できるための協力隊、地域・団体、行政の「三方良し」の土台をつくることを目的としています。
 
 2025年現在、同ネットワークには、県内30の個人・団体が参画しています。元隊員だけでなく、新潟県内の地域づくりに取り組む民間事業者や中間支援組織等、多様な地域の担い手が参画していることが特徴です。

(画像)新潟県地域おこし協力隊サポートネットワーク設立の際、メンバーで花角新潟県知事を表敬訪問

3.新潟県による地域おこし協力隊員向けの取組

新潟県+ネットワークによる地域おこし協力隊へのサポート事業がスタート
 新潟県地域おこし協力隊サポートネットワークは、2024年度から、新潟県が実施する「地域おこし協力隊活用促進事業」の事業実施主体となり、新潟県とネットワークの協働による、地域おこし協力隊員向けの各種事業がスタートしました。初年度は、地域おこし協力隊や関係者の「単純接触効果」を高めることを狙いとし、学びや気づき、また県域のネットワーク形成に資する場を数多く提供してきました。数が多ければ良いというものでは決してありませんが、実施してきた場づくりは全国トップレベルの回数を誇ります。

表1.新潟県が実施する主な地域おこし協力隊員向けプログラム一覧(2024年度)
プログラム 本記事での紹介
集合型研修 初任者研修・キャリア研修 取組事例①
専門研修(情報発信・企画立案)
起業研修・起業に向けた個別相談
インターン 地域おこし協力隊Jobインターン 取組事例②
バーチャルオフィス にいがた協力隊ラボ等 取組事例③


<新潟県+ネットワークによる地域おこし協力隊員向けの取組事例①
地域や団体からの「信頼」に着目したキャリア研修を開発

 2025年1月、新潟県事業では初となる地域おこし協力隊のキャリア研修を実施しました。地域おこし協力隊のキャリアと「信頼」の関係性に着目し、「地域からの信頼がキャリアを創る」という仮説を立て、県内元隊員への事前インタビュー調査を通し構築した、新潟県独自の研修プログラムです。研修当日は6名の元隊員を講師に迎え、集落受入型、団体受入型、市役所受入型それぞれの協力隊の活動タイプ別に、任期中の姿勢や活動が任期後のキャリアにどのようにつながったのかを紹介頂いた後、ワークシートを用いた参加者のこれまでのキャリアの振り返りと意見交換を行いました。

 アンケート結果では、参加者から「信頼のメソッドが大変参考になりました。自分自身の活動について振り返りができました。」「派手でキラキラしたことをやるよりも、地味な仕事を真面目に取り組んでいたほうが、結果的に信頼関係構築の近道になると感じました。」という回答を得るなど、退任後のキャリアから遡って現在の活動の在り方を考える機会となった様子を伺うことができました。

(画像)任期中の姿勢や活動が任期後のキャリアにどのようにつながったのか、元隊員からの話題提供

<新潟県+ネットワークによる地域おこし協力隊員向けの取組事例②
隊員一人ひとりがオーダーメイドで仕事体験を行うJobインターン

 2023年度から、地域おこし協力隊員を対象に、退任後の働き方や生き方を考えてもらう機会として、元隊員が起業した事業者や一般の県内の事業者での数日間の仕事の体験や視察を行う「Jobインターン」プログラムを実施しています。この取組は、地域おこし協力隊員向けの新潟県独自の取組です。
 プログラムは1日の事業者見学コースおよび2~3日の仕事体験からなり、「退任後の仕事に不安がある」「希望する業種について学びたい」など、一人ひとりの参加目的に合わせて適切なインターンシップ先や視察先をコーディネートすることが特徴です。参加者は自身の活動や自治体を一時離れて退任後の働き方や生き方を考え、また退任後に向けた具体的な準備を進めることができます。これまで延べ約60人がJobインターンプログラムに参加し、Jobインターンの経験やつながりを活かして起業・就業する隊員も複数名生まれています。

 参加者を対象としたアンケート結果では、「スマホ教室における参加者とのコミュニケーションの取り方や進め方などが非常に参考になった。(元隊員が経営するIT企業へのインターン参加者)」、「田舎でカフェ事業を展開する際のコツや注意点を、実体験をもとに聞けた。実際の経営状況を伺いながら聞けたため納得できた。(元隊員が経営するカフェを始めとした地域商社へのインターン参加者)」という回答を得るなど、実際の仕事の現場に接する機会を通して、隊員の退任後に向けた学びを得ることができるものであったと考えています。

(画像)退任後、カフェ・交流拠点づくりを検討している隊員による、中山間地域にあるカフェ及びゲストハウスでのJobインターン

<新潟県+ネットワークによる地域おこし協力隊員向けの取組事例③
バーチャルオフィスovice(オヴィス)を活用した学び合い・交流の場づくりの促進

 新潟県では、2024年度から全国で初めて地域おこし協力隊向けの常設のコミュニティとして「ovice(オヴィス)」を活用したバーチャルオフィスを運用しています。新潟県は県境の端から端までの直線距離が約250キロと長く、2つある離島の自治体(佐渡市、粟島浦村)でも地域おこし協力隊が活動しています。そのようなロケーションにより、対面でコミュニケーションをとりあう機会が限られるなか、自治体の範囲を超えて、地域おこし協力隊や関係者が日常的なやりとりや交流を図れる機会を提供することが狙いです。

 oviceでは「にいがた協力隊ラボ」を立ち上げ、活動に役立つ知識やスキルを学ぶテーマ別勉強会や交流会を定期開催するほか、地域おこし協力隊の合同募集説明会も実施しています。また県内地域おこし協力隊や関係者の日常的な打ち合わせにも活用されており、oviceに入れば誰かしらに会える状況となっています。2025年3月から県内の地域おこし協力隊コミュニティを活性化するため、コミュニティマネージャーとして新潟県地域おこし協力隊も配置され、さらなる活用が進む予定です。

(画像)バーチャルオフィスoviceでのにいがた地域おこし協力隊合同説明会の様子

4.さらなる地域おこし協力隊の活動・定着の向上に向けた新潟モデルを探求

 新潟県と新潟県地域おこし協力隊サポートネットワークでは、今後地域おこし協力隊のキャリアの研究や研究に基づく研修の企画運営など、さらなる地域おこし協力隊の活動・定着の向上に向けた新たな試みにチャレンジしていく予定です。

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 今後も石塚隊員から新潟県の取組を共有させていただきます。今後のレポートもお楽しみに!
本件に関するお問合わせ先
新潟県知事政策局地域政策課地域づくり支援班
電 話:025-280-5095
メール:ngt000200@pref.niigata.lg.jp

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この企業の情報

組織名
新潟県
ホームページ
https://www.pref.niigata.lg.jp/
代表者
花角 英世
資本金
0 万円
上場
非上場
所在地
〒950-8570 新潟県新潟市中央区新光町4番地1
連絡先
025-285-5511

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