杏林大学保健学部理学療法学科の研究当時、学部学生であった田島優希、込山真由、三村尚也、山本麻衣花の研究チームは、運動後の起立性低血圧を軽減する方法として水分摂取の効果を検証しました。健康な成人14名を対象に、水分摂取の有無で運動後の起立性低血圧の発生率と心循環動態を比較しました。その結果、水分摂取は心拍数の低下と血圧の上昇を伴い、心臓自律神経活動の回復を促進することが分かりました。この成果は、運動後の失神や心血管イベントを予防する新しいアプローチとして注目されます。
研究のハイライト
・運動後に起立性低血圧(OH)の発生が増加するが、水分摂取によって急性の予防効果が確認された。
・水分摂取によって心拍数(HR)の低下と収縮期血圧(SBP)の上昇が観察され、心臓自律神経活動の正常化が示唆された。
・水分摂取後に動脈圧受容器感受性が回復し、起立性低血圧の発生率が低下した。
概要
杏林大学保健学部理学療法学科の研究当時、学部学生であった田島優希、込山真由、三村尚也、山本麻衣花の研究チームは、運動後の起立性低血圧を軽減する方法として水分摂取の効果を検証しました。健康な成人14名を対象に、水分摂取の有無で運動後の起立性低血圧の発生率と心循環動態を比較しました。その結果、水分摂取は心拍数の低下と血圧の上昇を伴い、心臓自律神経活動の回復を促進することが分かりました。この成果は、運動後の失神や心血管イベントを予防する新しいアプローチとして注目されます。
背景
運動後の低血圧は、末梢血管拡張や心拍出量の減少によるものとされています。これらの変化は、高血圧患者にとって有益ですが、一部の状況では起立性低血圧や失神を引き起こすリスクがあります。従来の薬物療法では十分な改善が得られない場合が多く、代替療法としての水分摂取が注目されています。
研究概要
本研究では、健康な成人14名(男女各7名、平均年齢20歳)を対象に、水分摂取の有無で起立性低血圧の発生率と心血管動態を比較しました。
方法: 30分間のサイクリング後、500mlの冷水を摂取する群と摂取しない群を比較。
測定項目: 心拍数、血圧、心拍変動(RR間隔の変動)および動脈圧受容器感受性。
結果: 水分摂取後、心拍数が低下し、収縮期血圧が上昇。心臓自律神経活動と動脈圧受容器感受性が改善し、起立性低血圧の発生率が低下した。
研究の意義
本研究は、水分摂取が運動後の起立性低血圧を軽減し、心血管イベントのリスクを低下させる可能性を初めて示しました。この結果は、運動後の失神や心血管イベントの予防に向けた実践的なアプローチを提供します。
掲載論文URL
https://doi.org/10.1007/s10286-024-01077-6
用語の解説
起立性低血圧(OH): 起立時に収縮期血圧が急激に低下し(通常90mmHg未満)、めまいや失神を引き起こす症状。
心拍変動(HRV): 心拍数の時間的変動を指し、自律神経系のバランスを反映する指標。
動脈圧受容器感受性: 動脈圧の変化に応じて心拍数を調整する自律神経の反応性を指す。
収縮期血圧(SBP): 心臓が収縮する際に動脈内に生じる最大の血圧。
RR間隔: 心電図で測定される連続する心拍間の間隔。
▼本件に関する問い合わせ先
杏林大学保健学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
柴田 茂貴
TEL:0422-47-8000(代表)
メール:shigekishibata@ks.kyorin-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/