杏林大学 保健学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻の松嶋真哉学内講師が筆頭著者、同専攻の柴田茂貴教授が責任著者となった研究チームは、健康な成人を対象にLF-NMES単独、LF-NMESとPCEの併用、及び自発的サイクルエルゴメーター(VCE)の3つの運動が血行動態へ与える影響を比較した、初めての試みを実施しました。結果として、LF-NMES単独ではCOの増加が不十分で、末梢循環不全を引き起こす可能性が示されました。一方で、PCEを併用することでCOと左室拡張末期容積が改善し、VCEに近い血行動態が得られることが示されました。この研究成果は、重症患者など自発的な運動が困難な患者に対する運動療法の開発への応用が期待できるものです。研究成果はAmerican Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology誌の電子版に,2024年11月25日に先行公開されました。
掲載URL:
https://doi.org/10.1152/ajpregu.00141.2024
筆頭 松嶋 真哉(保健学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻 学内講師)
責任著者 柴田 茂貴(保健学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻 教授)
研究のハイライト
・ 低周波神経筋電気刺激療法(LF-NMES)の課題: 心拍出量(CO)が十分に増加せず、末梢循環不全を引き起こす可能性がある。
・ LF-NMESと他動的サイクリングエルゴメーターの併用:LF-NMESに他動的サイクリングエルゴメーター(PCE)を併用することで、心拍出量を改善し、LF-NMES単独の課題を克服できる。
・ リハビリテーションへの応用:集中治療室に入室している重症患者など自発的な運動が困難な患者に対し、有望な運動療法の選択肢となる可能性がある。
概要
杏林大学 保健学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻の松嶋真哉学内講師が筆頭著者、同専攻の柴田茂貴教授が責任著者となった研究チームは、健康な成人を対象にLF-NMES単独、LF-NMESとPCEの併用、及び自発的サイクルエルゴメーター(VCE)の3つの運動が血行動態へ与える影響を比較した、初めての試みを実施しました。結果として、LF-NMES単独ではCOの増加が不十分で、末梢循環不全を引き起こす可能性が示されました。一方で、PCEを併用することでCOと左室拡張末期容積が改善し、VCEに近い血行動態が得られることが示されました。この研究成果は、重症患者など自発的な運動が困難な患者に対する運動療法の開発への応用が期待できるものです。研究成果はAmerican Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology誌の電子版に,2024年11月25日に先行公開されました。
掲載URL:
https://doi.org/10.1152/ajpregu.00141.2024
背景
神経筋電気刺激(NMES)は、重症心不全患者や集中治療室(ICU)に入院する患者の筋力維持を目的として使用される非随意運動療法です。高周波NMES(30~50 Hz)は筋力維持や筋量増加を目的とした設定が一般的ですが、低周波NMES(LF-NMES: 2~10 Hz)は有酸素運動の代替としての利用可能性が示されています。これまでの研究では、LF- NMESが酸素消費量の増加や慢性脊髄損傷患者の筋酸化能の改善に寄与することが報告されていますが、心肺機能に与える影響については解明されていません。また、NMESに他動的サイクルエルゴメーター(PCE)を組み合わせると心拍出量が増加するという報告がある一方で、その生理学的背景については詳細が不明でした。本研究では、LF-NMESにPCEを併用することで、静脈還流を増加させ、心拍出量の向上が期待できるという仮説を立てました。
研究概要
本研究では、健康な男性13名を対象に、LF-NMES単独、LF-NMESとPCEの併用、自発的サイクルエルゴメーター(VCE)の3つの運動モダリティを比較するランダム化クロスオーバー試験を実施しました。各運動モダリティは酸素消費量14 mL/kg/min(4 METs)に調整し、血圧、心拍数、心拍出量、左室拡張末期容積、血中乳酸濃度などの指標を評価しました。結果として、LF-NMES単独では心拍出量が十分に増加せず、末梢循環不全を引き起こすことが示唆されました。一方、LF-NMESにPCEを併用することで、心拍出量と左室拡張末期容積が改善し、VCEに近い血行動態が得られることが明らかになりました。
研究の意義
本研究は、LF-NMESの単独使用が血行動態の不全を引き起こす一方で、PCEを併用することでこの課題が改善されることを明らかにしました。この結果は、NMESを用いたリハビリテーションの新たな可能性を示し、随意な運動が困難な患者に対する代替療法としての展望を提供します。
掲載論文
発表雑誌名
American Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology
論文タイトル
Effect of Low-Frequency Neuromuscular Electrical Stimulation Combined with Passive Cycle-ergometry on hemodynamics in Healthy Adults
著者
Shinya Matsushima1, Ai Hirasawa2, Rina Suzuki 1, Hiroyasu Murata3, Masahiko Kimura1, Shigeki Shibata1
著者(日本語表記)
松嶋真哉1, 平澤 愛2, 鈴木里奈 1,村田裕康 3, 木村雅彦1, 柴田茂貴1*
*責任著者
所属
1. 杏林大学 保健学部 リハビリテーション学科理学療法学専攻,2. 杏林大学 保健学部 健康福祉学科,3. 杏林大学医学部付属病院 リハビリテーション室
▼本件に関する問い合わせ先
杏林大学 保健学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻
学内講師 松嶋真哉(まつしま しんや)
TEL:電話:0422-47-8000(代表)
メール:shinya-matsushima@ks.kyorin-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/