PwCコンサルティング、LIXILへAIを活用した需要予測を導入、全国での試験運用開始を支援

PwCコンサルティング合同会社

2023年4月27日
PwCコンサルティング合同会社

 
    
PwCコンサルティング、LIXILへ
AIを活用した需要予測を導入、全国での試験運用開始を支援

予測対象は少量品を含む約120万の製品機種で、総予測対象数は230万超
欠品・機会損失・コスト・廃棄ロスの削減および
生産計画・在庫計画・調達計画を含めた、サプライチェーン全体の最適化に向けた
ロードマップの第一歩として、高精度の需要予測ソリューションを採用

PwCコンサルティング合同会社(東京都千代田区、代表執行役CEO:大竹 伸明、以下「PwCコンサルティング」)は、当社が独自開発したAI・機械学習アルゴリズムを用いた次世代型需要予測ソリューション「Multidimensional Demand Forecasting(以下、MDF)」(※1)を基に、株式会社LIXIL(東京都品川区、取締役 代表執行役社長 兼CEO:瀬戸 欣哉)のAIを活用した需要予測による生産計画業務のDXを支援しています。全国で試験運用を開始している需要予測の対象は、サッシ・ドアやエクステリアなどの建材事業を展開するLIXIL Housing Technology (以下、LIXILハウジングテクノロジー事業)の約120万機種におよぶ製品です(予測対象数は約230万)。2023年4月以降はさらに、MDFの予測値をインプットとして需給システムと連結させることで、約120万の製品機種個々の需要傾向を所要量展開し、計画業務の高度化対象領域を、製品だけでなく輸入原材料や副資材などの調達品にも拡大していく計画です。

LIXILでは従来、計画業務改善による欠品/過剰在庫/横持ち輸送/廃棄コストの抑制や納品リードタイムの短縮、さらには事業生産性向上やブランド競争力向上に取り組んできました。しかしながら、資材調達リスク、コンテナ不足など世界的なサプライチェーンにおける問題が発生し事業環境が大きく変化する中、多岐に渡る製品コードを人の手を使って需要予測をすることは困難です。そこで、これから先に起きるイシューを予見し、迅速な対応が可能な体制を構築していく必要があります。そのために、調達から製造、販売までの各プロセスにおける状況を把握し、在庫管理や業務運営の効率化などサプライチェーン全体の最適化に向けた取り組みの一つとして、AI需要予測ソリューションを導入し、プロジェクトを始動しました。

このたび、新たにPwCコンサルティングが提供するMDFを採用し需要予測を高解像度化することで、大量の予測対象である個々の動きや特徴を捉えた高精度の需要予測算出が可能となりました。導入フェーズは二段階に分かれており、第一弾として2022年9月に、LIXILハウジングテクノロジー事業の約半数を占める既存品の予測値を先行リリースしました。そして第二弾となる2023年1月には、過去実績だけでは予測できなかったモデルチェンジ品(旧機種の終息、新機種の立ち上がり)についても、対象品の新旧機種マッピングを用いた機械的予測アプローチを用いることで、予測値を追加リリースしました。これにより、LIXILハウジングテクノロジーほぼ全ての製品をカバーする予想値の提供が可能となりました。
                                                                                           
PwCコンサルティングはかねてより、企業が、AIを起点とするデータ活用を経営の中枢に取り入れる「AI経営」(※2)を提唱しており、状況把握から意思決定・実行までの高速化を実現し、企業の競争力向上を図ることを支援しています。需要予測においても、従来のコンサルティングサービスに加え、MDFをサブスクリプション(SaaS型)で提供し、従来型のアプローチでは対応が困難な領域にまで踏み込んだ需要予測の支援、定常業務としての需要予測算出の運用を行っています。MDFは、時系列パターンを捉えにくい予測対象、新商品やモデルチェンジ品、ロングテール化(多品種/少量/不規則化)に伴い従来予測が難しいとされていたものなどへ、予測の対象範囲を大幅に拡張しています。このたびのプロジェクトでは、LIXILハウジングテクノロジーのほぼ全製品機種を対象に、定番・量産品から特注・少量品までに渡って、網羅的に予測精度向上を実現しています。

PwCコンサルティングは今後も、AIを活用した需要予測を起点に計画業務の最適化を通じ、クライアントの抱える課題解決を支援します。


図:出荷数量と予測誤差

MDF導入前                                                                            MDF導入後
※MDF導入により、定番品・量産品だけでなく、少量品に対しても予測誤差(上ぶれ、下ぶれともに)が低減。

(注1): MDFについて
https://www.pwc.com/jp/ja/services/consulting/analytics/df.html
(注2): AI経営について
https://www.pwc.com/jp/ja/services/consulting/analytics/ai-transformation.html



ご参考:本プロジェクトの内容

■ 課題:サプライチェーンリスクの低減と計画業務の高度化
LIXILハウジングテクノロジー事業においては、生産から物流に向けて、毎月数百万の単位で計画値を出す必要がありました。しかし、個々(エリア、SKU:商品の最小管理単位)の需要の動きや特徴を充分に捉えきれない状況にあり、計画精度の限界に起因する種々のサプライチェーンリスク(欠品/リードタイム延長/過剰在庫/廃棄コスト/横持ち輸送コスト)を低減することが課題になっていました。
  • 背景1:膨大な予測対象数
    人手では、商品シリーズ別と主要品目の需要傾向の把握は可能でしたが、約120万の製品機種を有し、さらに物流センター別に展開するとSKUが230万を超えることから、より細かい粒度で需要の動きや特徴を捉えることは難しく、計画を作成するにあたり、計画値を過去の出庫構成比などで簡易的に按分することで細粒化していました。
     
  • 背景2:事業を取り巻く環境の複雑化
    新型コロナウイルス感染症のような予測できないパンデミックや原材料価格の高騰、エンドユーザーの購買行動の変化など、事業環境の複雑化に伴い、より精緻な需要予測が求められるようになりました。

また、海外生産拠点での生産から日本国内への納入、全国6カ所の物流センターでの在庫までの業務精度を向上させるために、エリア別かつSKU別に、3~4カ月先までの予測精度向上が求められていました。

■ MDFによるアプローチおよび主な効果
-高解像度・高精度な予測によるサプライチェーンリスクの低減
約230万の予測対象個々に対して月次で予測の算出をする際に、予測モデルを都度生成することで、対象それぞれの特徴を捉えた高解像度かつ高精度な予測算出が可能となりました。膨大な予測データをLIXILハウジングテクノロジー内に提供する環境構築にはLIXIL Data Platform(LIXILが独自に提供するデータプラットフォーム)が採用され、各工場でデータ活用の自走化を促すためのデジタルスキル支援も並行して進められました。これにより、予測値のリリース後は、多くの工場において、従来から抱えていた欠品/リードタイム延長/過剰在庫/廃棄コスト/横持ち輸送コストといった潜在リスク低減に向けた、実用化の取り組みが加速しています。 
  • 例1:エリア別予測精度向上による 横持ち輸送コストを抑制
    高解像度な予測によって、エリア別の予測精度の向上に貢献しています。海外で生産する製品については、海外の生産拠点から日本国内の全国6エリアの物流センターへ向け、SKUごとの適切な数量を船輸送することで、ムダかつ高コストな日本国内での横持ち輸送発生を抑制します。2023年1月には、MDFによる予測値を活用し、タイ工場、ベトナム工場、中国大連工場から、中四国エリアの岡山物流センターに輸送する対象SKUが見直されました。今後は、年3回実施されている、日本国内全エリアの定期見直しにも展開される予定です。
  • 例2:需要予測対象の広さによる 手動対応(=業務コスト)の削減
    MDFは、定番・量産品のみならず、特注品や少量品(=ロングテール品)も需要予測可能で、モデルチェンジ(旧モデルの終息、新モデルの立ち上がり)にも対応しています。機械的アプローチが可能になることで、人手による手動対応が必要な範囲が極小化しました。LIXILではこれを機に、特定の人材に頼っていた計画業務を標準化し、業務の属人化を解消するとともに効率化を進め、さらに浮いた工数を、欠品/過剰在庫/横持ち輸送コストといった潜在リスク低減活動に振り向ける計画があり、さらに好循環が生まれることが期待されています。
尚、モデルチェンジは、さまざまなパターン(1対1~多対多まで)へ対応しており、旧モデルの終息に向けた需要の動きを正確に捉えることで、滞留在庫および廃棄コストの発生を抑制するとともに、納品リードタイム延長を防ぎます。

-高速処理、精度劣化防止によるタイムリーかつ安定的な計画業務
MDFの特徴である軽量かつ高速並列処理により、定常業務におけるタイムリーな月次計画業務へとつないでいます。約230万におよぶ予測対象のモデル再学習から予測算出までを、約90時間(サーバーマシン1台)で処理しています。
また、モデルの再学習を都度月次で行うことで、最新の傾向の学習・反映をし、予測モデルの経時劣化を防いでいます。また、MDFの独自アルゴリズムにより、実績値を主としたシンプルなデータで、高い予測精度を実現しています。
以上

LIXILについて                                                                               
LIXILは、世界中の誰もが願う豊かで快適な住まいを実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しています。ものづくりの伝統を礎に、INAX、GROHE、American Standard、TOSTEMをはじめとする数々の製品ブランドを通して、世界をリードする技術やイノベーションで、人びとのより良い暮らしに貢献しています。現在約55,000人の従業員を擁し、世界150カ国以上で事業を展開するLIXILは、生活者の視点に立った製品を提供することで、毎日世界で10億人以上の人びとの暮らしを支えています。
株式会社LIXIL(証券コート:5938)は、2022年3月期に1兆4,286億円の連結売上高を計上しています。
LIXILグローバルサイト:https://www.lixil.com/jp/
LIXIL Facebook(グローバル向け):https://ja-jp.facebook.com/lixilglobal/
LIXIL Facebook(日本国内向け):https://www.facebook.com/lixilcorporation

PwCコンサルティング合同会社について:https://www.pwc.com/jp/consulting
PwCコンサルティング合同会社は、経営戦略の策定から実行まで総合的なコンサルティングサービスを提供しています。PwCグローバルネットワークと連携しながら、クライアントが直面する複雑で困難な経営課題の解決に取り組み、グローバル市場で競争力を高めることを支援します。

PwC Japanグループについて:https://www.pwc.com/jp
PwC Japanグループは、日本におけるPwCグローバルネットワークのメンバーファームおよびそれらの関連会社の総称です。各法人は独立した別法人として事業を行っています。
複雑化・多様化する企業の経営課題に対し、PwC Japanグループでは、監査およびアシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、そして法務における卓越した専門性を結集し、それらを有機的に協働させる体制を整えています。また、公認会計士、税理士、弁護士、その他専門スタッフ約10,200人を擁するプロフェッショナル・サービス・ネットワークとして、クライアントニーズにより的確に対応したサービスの提供に努めています。

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