KS木質座屈拘束ブレースに国産材含む2樹種を追加 ~ロシア産材の確保困難で~
「KS木質座屈拘束ブレース」は木質材料によって鋼材を拘束することで安定的な変形性能を発揮する鋼製ブレースです。熊谷組が得意とする中高層建物の耐震構造技術と、住友林業の木質系材料に関する豊富な知見、技術を融合して開発しました。2022年3月には、日本ERI株式会社※3の構造性能評価でブレースとしては最高のBAランクを取得※4しています。今回参画した東京電機大学は木質座屈拘束ブレースの耐力をさらに高め、より大規模な建物への適用、設計時の自由度向上への対応も視野に、学術的な観点での知見提供を担いました。
国産カラマツも活用可能とすることで、国内林業の活性化、サステナブル社会の実現に貢献します。
※1 座屈:細長い部材が、ある圧縮力を受けた際に急に湾曲すること。
※2 ダフリカカラマツ:北洋カラマツ、シベリアカラマツとも呼ばれる。
※3 日本ERI株式会社:建築確認申請を円滑に進めるための第三者機関。
※4 参考:「耐震性の高い木質座屈拘束ブレースを共同開発」 https://sfc.jp/information/news/2022/2022-03-23.html
「KS木質座屈拘束ブレース」の座屈拘束材には密度が大きく強度も高いダフリカカラマツLVL(Laminated Veneer Lumber)※5と国産の針葉樹合板を使っています。国際情勢の変化や国産材利用促進の機運の高まりもあり、開発チームに東京電機大学の笹谷研究室(未来科学部建築学科)を迎え入れ、樹種の活用研究を進めました。実大構造実験を繰り返し実施し、今般、LVLに用いる樹種拡大に成功し実用化を実現しました。
熊谷組と住友林業は脱炭素社会の実現に向けて建物の木造化・木質化を目指し、特に中大規模木造建築の受注拡大のため木質部材に関連する研究や技術開発に力を入れています。熊谷組は仕様提案、シミュレーションによる性能評価、構造実験、住友林業は木材に関する知見の提供、仕様提案・試作、構造実験、東京電機大学は部材構成、実験方法、解析方法のアドバイスを分担しました。本部材の社会実装に向けて、まずは自社の案件等での適用を積極的に検討していきます。利用樹種の拡大により利便性を高めた本部材を、オフィス、商業施設、集合住宅、宿泊施設や生産・物流施設などの様々な鉄骨造建物に加えて、中大規模木造建築にもさらに積極的に導入していく予定です。
※5 LVL:単板積層材。単板(Veneer)の繊維方向を、平行にして積層・接着して造る木材加工製品。