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摂南大学(大阪府寝屋川市)農学部の増田太郎准教授、北海道大学大学院地球環境科学研究院の小泉逸郎准教授、京都大学大学院農学研究科の下野嘉子准教授、岐阜県水産研究所の岸大弼専門研究員の共同研究グループは、ゲノム網羅的(ゲノムワイド)な多型解析により、本州の河川源流に棲息するイワナ亜種の判別と分布境界の決定に成功しました。各亜種の生息域は分水嶺を挟んで隣接しており、分布境界では地形変化による亜種間の分布拡大のせめぎ合いが起こっていることを示しました。本研究は、在来生物種の分布から地形形成史を検証する手段を提案します。
【本件のポイント】
● 過去の地理的事象「河川争奪」を検証するため、河川源流部に棲息するイワナ個体間の遺伝的な違いを網羅的に解析
● 本州中西部に生息するイワナ亜種群を初めて遺伝的に分離
● 琵琶湖流入河川に棲息するイワナが、これまで知られていた亜種とは遺伝的に異なるグループを形成していることを解明
● イワナの遺伝子型をもとに、地形形成史の道筋を検証できることを提示
悠久の時の流れを象徴する川の流路は時代とともに大きく変化してきました。特に、動的な地質を持つ日本列島の河川源流付近では、地形の浸食で河川の流域のある一部分を隣接する河川が奪う「河川争奪」と呼ばれる地理的事象により、河川の逆流など流路再編が頻繁に繰り返されて現在に至ります。今回、河川争奪の指標生物として、本州では河川源流部にのみ棲息するイワナに着目し、イワナゲノムの個体間の違いを詳細に調べました。その結果、本州のイワナを、日本海型(ニッコウイワナ)、太平洋型(ヤマトイワナ)、琵琶湖型という遺伝的に異なる3グループに分類することに成功しました。
また、河川争奪が実際に起こった場所を含め、本州のさまざまな河川源流に棲息するイワナ個体群の遺伝子型を調べたところ、河川争奪が起こった場所(現在は日本海水系)に棲むイワナ個体群は争奪前(琵琶湖水系)のグループに属しており、河川争奪がイワナの水系を越えた分布拡大に寄与することが分かりました。他の調査河川でも、水系を越えたイワナの分布拡大がみられた場所があり、このことは遠い昔に未知の河川争奪事象が起こった可能性を示しています。
このように、本研究で採用した調査手法により、魚類在来個体群の自然分布から地形形成史を紐解くことができる可能性が示されました。
なお、本研究の成果は、生物地理学に関する英国の学術誌「Journal of Biogeography」に掲載されました。
・URL:
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/jbi.14553
【論文情報】
・タイトル: Systematic headwater sampling of white-spotted charr reveals stream capture events across dynamic topography.
・DOI: 10.1111/jbi.14553
■内容に関するお問い合わせ先
摂南大学 農学部応用生物科学科 准教授 増田太郎
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【リリース発信元】 大学プレスセンター
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