昇給に対する圧力が高まると同時に「大量離職時代」も継続 ― 世界52,000人への労働力調査 ―

PwC Japanグループ

2022年5月24日
PwC Japanグループ

 
 
昇給に対する圧力が高まると同時に「大量離職時代」も継続
― 世界52,000人への労働力調査 ―

スキルを持つ人々が力を行使し、世界の労働力は分裂
 
  • 5人に1人が、今後12カ月以内に転職する可能性があると回答
  • 3分の1以上が昇給を求めているが、仕事での充実感も同様に重視している
  • 高いスキルを持つ従業員は、昇進や昇給を求め、また上司に話を聞いてもらえていると感じている傾向が強い。一方、スキルが不足している従業員は職場でのそのような力を持っていない
  • 社会的な課題を職場で話題にすることはネガティブではなく、自分たちにポジティブな影響を与えていると感じる回答者は、そうでないと感じる回答者より30ポイント以上多かった
  • 意見の異なる人同士が効果的に働くためのサポートを会社が提供しているとした回答者は30%にとどまる
※本プレスリリースは、2022年5月24日にPwCが発表したプレスリリースの翻訳です。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

従業員の5人に1人が今後12カ月以内に転職する可能性が高いと回答したように、「大量離職時代」は今後も続きそうです。これは、過去最大規模となる44の国と地域で52,195人を対象とした世界の労働力に関する調査PwC「Global Workforce Hopes and Feares Survey」で明らかになりました。今回の調査によると、35%が今後12カ月以内に昇給を求めていくとの結果が出ています。賃金上昇圧力が最も高いのはテクノロジーセクターで44%の回答者が昇給を求めており、最も低かったのは公共セクターの25%でした。

転職の主な動機は、昇給(71%)、やりがいのある仕事をしたい(69%)、自分らしく働きたい(66%)が上位3位を占めています。また、半数近く(47%)が、働く場所を選択できることを優先しています。

今後12カ月以内に転職先を探す可能性が高いと回答した従業員は、現在の雇用主に満足していない傾向があり、転職の意思がない人と比較すると次のような差がみられます。
  • 仕事にやりがいを感じる割合が14パーセントポイント低い
  • 職場で自分らしさを発揮できていると感じる割合が11パーセントポイント低い
  • 経済的な報酬が公平であると感じる割合が9パーセントポイント低い
PwCグローバル会長のボブ・モリッツ(Bob Moritz)は、次のように述べています。
「従業員のスキルを向上させるためにより多くの施策をすることが企業に対して強く求められています。社会全体に成長の機会が提供されなければ、労働力の分断されるリスクがあることをわかる必要があります。同時に、従業員は適切な賃金を求めるだけではなく、自分で働き方をよりコントロールすることや、仕事により大きな意味を見いだすことを望んでいます。これらは密接に関係しており、従業員は、スキルを身につけることで自らが望む働き方を手に入れることができるのです。リーダーには、現在、そしてこれから向き合うであろう課題と機会にうまく取り組むためのさまざまなチームを組成していく適応力が必要です。」

社会課題を議論することは職場において日常的なことになっている。雇用主からのサポートは不足しているが、従業員たちは議論することの恩恵を感じている

今回の調査結果によると、従業員の65%が社会的・政治的課題について同僚と頻繁に、あるいはときどき話し合っており、その中でも若い世代の従業員(69%)とエスニックマイノリティ(民族的少数者)(73%)の回答がより大きいことが分かりました。ビジネスリーダーは、分断につながる可能性のある課題を職場に持ち込むことに神経質になることもありますが、その影響は結果的にポジティブに作用しています。職場で社会的・政治的な問題について話をしている人の79%が、その議論から少なくとも1つのポジティブな結果を得たと回答しています。一方で、41%が社会課題に関する議論がネガティブな結果を生んだとの回答もあり、雇用主が為すべきことは、オープンな会話のメリットを確保しつつ、ネガティブな影響を最小限に抑えるような状況を創り出すことです。いずれの数字も、自身がエスニックマイノリティであると考える人々の回答はより大きな数字となっています(肯定的84%、否定的59%)。

このような議論は、ポジティブな結果を確保するための組織側からの積極的な取り組みはほとんどないにもかかわらず、行われています。異なる意見を持つ人々と効果的に働くためのサポートを会社が提供していると答えた従業員は、わずか30%でした。

今回の調査では、従業員は、経済、気候問題、社会課題に対する雇用主の影響に特に関心を持っていることもわかりました。従業員の半数(53%)は、雇用主が環境に与える影響について透明性を確保することが重要だと感じています。また、3分の2(65%)は健康と安全についての透明性確保が極めて重要と感じており、経済的影響についての透明性が60%、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みが54%と続きました。

PwCのグローバル・ピープル&オーガニゼーション・サービス共同リーダーのブーシャン・セティ(Bhushan Sethi)は、次のように述べています。

「多様な人材は、必然的に主要な社会課題に対するさまざまな意見を職場にもたらします。リーダーは、これらの議論がチームの分断ではなく利益になるようにする必要があります。雇用主の役割は、従業員に何を考えるべきかを伝えることではなく、発言や選択ができるようにし、安心して意見を共有できる環境を整え、こうした課題が従業員にどのような影響を与えるかについて耳を傾け、学ぶことです。 特に若年層やエスニックマイノリティの人たちは、敬意と寛容さのある会話に参加することのメリットを感じています。」

スキルを持つ従業員は自分が強い立場にあると感じる傾向にあり、職場での不平等が拡大

今回の調査では、さまざまな面で労働力が分断していることが浮き彫りになりました。

経済的な報酬が公平であると回答した女性従業員は男性従業員より7ポイント低いにもかかわらず、昇給を求める女性従業員は男性従業員より7ポイント低くなっています。また、女性従業員が昇進を求める割合も男性従業員より8ポイント低く、上司が自分の話に耳を傾けてくれると感じる割合も男性従業員より8ポイント低いことから、昇進の要望が聞き流されることが多くなっていることがうかがえます。

PwCのグローバル・ピープル&オーガニゼーション・サービス共同リーダーのピート・ブラウン(Pete Brown)は、次のように述べています。

「女性従業員が男性従業員と同じようにスキルやキャリアを磨く機会を得られないことは、社会にとっても企業にとっても不幸なことです。労働力を強化するための第一歩は、女性従業員が見過ごされないようにすることで、女性従業員を失うことにつながるような組織文化や制度、構造の問題に対処することです」 。

また、世代間にも大きな違いがあり、Z世代は仕事への満足度が低く、今後3年間で自分の役割がテクノロジーに取って代わられることを懸念している割合が、ベビーブーマー世代の2倍に上っています。

労働力の分断の最も重要な要因の1つはスキルです。高く評価されるスキルを持つ従業員とそうでない従業員との間には大きな差ができています。調査結果によると、需要の高いスキルを持つ人(調査対象の29%が自国で不足しているスキルを持っていると認識)の方が、仕事に満足し(70% :52%)、上司に話を聞いてもらっていると感じ(63%:38%)、生活費の支払い後によりお金が手元に残る(56%:44%)傾向にあります。

このスキルギャップを埋めるべく、会社はアップスキリングや昇給を通じて現在の労働力に投資していると従業員は回答しています。それに反して、自動化やアウトソーシング、新規採用に重点的に取り組むと回答する従業員は少ない傾向でした。

PwCのグローバル・タックス&リーガル・サービス・リーダーのキャロル・スタビングス(Carol Stubbings)は、次のように述べています。

「ひっ迫する労働市場において、組織が人間主導で、テクノロジーを駆使したアプローチをとることがより重要になっています。つまり、デジタルトランスフォーメーションとスキルの双方に投資することです。投資は公平性の原則に基づき、スキルを持つ従業員の能力を強化し、スキルが十分でない従業員にスキルを身につける機会を提供し、人にしかできないことをするために、自動化を進めることです。これは、新卒社員やインターンも同様で、継続的なスキルアップの取り組みを必要としています。スキルミックスにフォーカスした投資は、企業にとっても個人にとっても有益であり、無力化を回避できることから社会にとっても有益であると考えます。」

その他の主な調査結果は次のとおりです。
  • 回答者の45%が、自分の仕事はリモートでは対応できないと回答
  • リモートワークが可能と回答した人たちは次のように考えています
  1. 63%がオフィスワークとリモートワークの組み合わせたハイブリッドワークを希望している。また、少なくとも今後12カ月間、その組み合わせを雇用主が提供することを期待すると回答した割合も63%だった
  2. 26%の従業員がフルタイムのリモートワークを希望しているが、雇用主がこの勤務形態を導入する可能性が高いと答えた従業員は18%にとどまる
  3. 18%の従業員は、雇用主がフルタイムのオフィスワークを求める可能性が高いと考えたが、フルタイムの勤務形態を好む従業員は11%にとどまる
調査について
  1. 2022年3月に就業中または求職中の52,195人を対象に調査を実施しました。調査対象は、さまざまな業種、人口統計学的特性、労働形態を反映するよう設計されています。また、44の国と地域にわたり、国や地域のGDPが世界全体のGDPに占める割合を反映するように構成されています。国・地域あたりのサンプル数は250~5,000人で、1国・地域あたりの平均サンプル数は約1,200人です。
     
  2. 調査対象の年齢層を、Z世代(18~25歳)、ミレニアル世代(26~41歳)、X世代(42~57歳)、ベビーブーマー世代(58~76歳)に分類しています。
     
  3. 調査レポート(英文)はこちらから、より詳細な内容をご覧いただけます。
    https://www.pwc.com/workforcehopesandfears
以上

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