会話AIの発話計画を量子コンピューティング技術で高速にパーソナライズ / 3月開催の「言語処理学会第28回年次大会」にて研究成果を発表
〜 あなたが興味のある話題を、会話形式でわかりやすく伝えるAI 〜
GCS研究機構の対話システム研究グループでは、ニュース記事に代表されるまとまった量の情報を個人の興味に合わせて要約し、これを会話形式で効率的に伝える音声対話システムの研究開発を行っています。当社は、AI学習用のデータ構築やメディア表現の知見をかけあわせて、機械学習モデルの頑健性を高めることに協力してきました。
この音声対話システムは、ユーザの人数と元となる情報の規模が大きくなるほど、最適解を探索するのに膨大な計算時間が必要となります。そのため、多くのユーザに対してパーソナライズした発話計画を実用的な時間で生成するためには最適化計算の高速化が重要です。
今後は、ニュース読み上げサービスや音声対話広告など新しいサービスと体験価値をデザインする実践的な取り組みとして研究開発を推進いたします。
また本研究成果は、3月に開催された言語処理学会第28回年次大会にて発表いたしました。
【言語処理学会 第28回年次大会 2022年3月開催】
https://www.anlp.jp/nlp2022/
https://www.anlp.jp/nlp2022/program.html
- タイトル:デジタルアニーラを用いたパーソナライズド抽出型要約の高速求解
- 著者:高津弘明, 柏川貴弘, 木村浩一, 安藤涼太, 松山洋一
- 予稿集:言語処理学会第28回年次大会発表論文集, pp. 758-763, 2022.
【背景・目的】
進化するデジタル経済のなかで生成される情報は増加を続け、その情報が価値創出の源泉となっています。企業にとってはビジネスにおける情報収集・分析・活用の重要性が増しています。
また生活者にとっては、パソコンやスマートフォンなどの普及によりウェブ上の情報へ容易にアクセス可能となりました。そのため人々のメディア接触時間は年々増加しています(※3)。一方で「世の中の情報量は多すぎる」という意識も高まってきており、限られた時間の中でより効果的に情報を取得することへのニーズが高まっています。
このような社会背景を踏まえ、本共同研究では増え続ける情報をテーマに課題を設定し、人々のメディア体験をより豊かにするためのアイデア創出を目指します。
※3 株式会社博報堂DYメディアパートナーズ(編), 広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2020, 株式会社宣伝会議(出版).
【2021年度 発表実績】
共同研究成果を以下の国際ワークショップ、国内研究会および人工知能EXPOで発表いたしました。
① IWSDS(2021年11月発表)
IWSDS(International Workshop on Spoken Dialog System Technology)は音声対話システム技術に関する国際ワークショップであり、12回目となる2021年はシンガポールで開催されました。
https://www.colips.org/conferences/iwsds2021/wp/accepted-papers/
- Title: Personalized Extractive Summarization with Discourse Structure Constraints Towards Efficient and Coherent Dialog-based News Delivery
- Authors: Hiroaki Takatsu, Ryota Ando, Hiroshi Honda, Yoichi Matsuyama, and Tetsunori Kobayashi
- Proceedings: Proceedings of the 12th International Workshop on Spoken Dialog System Technology, 2021.
② NLP4ConvAI(2021年11月発表)
NLP4ConvAI(NLP for Conversational AI)は会話AIのための自然言語処理技術に関する国際ワークショップであり、3回目となる2021年は自然言語処理分野のトップカンファレンスであるEMNLPのワークショップの一つとして開催されました。
https://sites.google.com/view/3rdnlp4convai/accepted-papers/
https://aclanthology.org/2021.nlp4convai-1.3/
- Title: Personalized Extractive Summarization Using an Ising Machine Towards Real-time Generation of Efficient and Coherent Dialogue Scenarios.
- Authors: Hiroaki Takatsu, Takahiro Kashikawa, Koichi Kimura, Ryota Ando, and Yoichi Matsuyama
- Proceedings: Proceedings of the 3rd Workshop on Natural Language Processing for Conversational AI, pp. 16-29, 2021.
③ 対話システムシンポジウム(2021年11月発表)
人工知能学会 言語・音声理解と対話処理研究会は、言語・音声・対話に関する基礎研究から、音声処理・言語処理・対話処理に関するアルゴリズムやシステムに関する研究などを扱う研究会です。第93回研究会は第12回対話システムシンポジウムとして開催されました。
https://jsai-slud.github.io/sig-slud/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsaislud/93/0/93_26/_article/-char/ja/
- タイトル:イジングマシンを用いたミュージアムガイドの発話計画最適化
- 著者:高津弘明, 安藤涼太, 中野鐵兵, 柏川貴弘, 木村浩一, 松山洋一
- 予稿集:第93回言語・音声理解と対話処理研究会(第12回対話システムシンポジウム)資料, pp. 26-31, 2021.
この音声対話システムは、要点説明のための主計画と補足説明のための副計画からなる発話のシナリオに基づいて対話を進めます。システムは、ユーザが受け身で聞いている間は主計画の内容を伝えますが、適宜ユーザの情報要求に応じて副計画に遷移し補足説明を行います。本研究では、効率的で一貫した情報伝達を実現するための主計画の生成手法について検討しました。IWSDSの論文では、主計画を生成する問題を、文書の談話構造と合計発話時間の制約のもと、ユーザごとに計算した興味度が最大となる文集合を文書集合の中から抽出する組合せ最適化問題として定式化しました。評価指標として、興味のある情報を被覆できた割合と興味のない情報を除外できた割合の調和平均である情報伝達効率を定義しました。ニュース記事に対して談話構造と興味度を付与したデータセットを用いて提案手法の情報伝達効率を評価し、一貫性と効率性の高い主計画が生成できることを確認しました。
一方、ここで定式化した主計画生成のための整数線形計画問題は、問題の規模が大きくなるほど、最適解を探索するのに膨大な計算時間が必要となります。膨大な数のユーザに対して、一人一人にパーソナライズした主計画を実用的な時間で生成するためには、最適化計算の高速化が重要です。そこで、NLP4ConvAIの論文では、IWSDSの論文で定式化した整数線形計画問題をQUBO(Quadratic Unconstrained Binary Optimization)形式に変換し、デジタルアニーラを用いて解くことにより、制約違反のない準最適解が実用的な時間で得られることを確認しました。さらに、本技術をミュージアムガイドシステムに実装し、パーソナライズされた主計画に基づいてバーチャルミュージアム上の展示物を解説することの有効性を実証しました。その成果を対話システムシンポジウムで発表しました。
④ 言語処理学会(2022年3月発表)
デジタルアニーラを用いた手法に関して、さらに検証を重ねた研究成果を2022年3月に開催された言語処理学会第28回年次大会で発表いたしました。
https://www.anlp.jp/nlp2022/
https://www.anlp.jp/nlp2022/program.html
- タイトル:デジタルアニーラを用いたパーソナライズド抽出型要約の高速求解
- 著者:高津弘明, 柏川貴弘, 木村浩一, 安藤涼太, 松山洋一
- 予稿集:言語処理学会第28回年次大会発表論文集, pp. 758-763, 2022.
⑤ NexTech Week 2021秋 第2回 AI・人工知能EXPO【秋】 出展協力
2021年10月に幕張メッセで開催された「第2回 AI・人工知能EXPO【秋】」の特設ゾーン「アカデミックフォーラム」へ出展いたしました。
GCS研究機構 対話システム研究グループ 研究代表 松山洋一氏登壇