学生アスリートの深刻な腸内環境が判明 コハク酸値が大腸炎患者レベル 食物繊維摂取で劇的な改善も期待 -- 摂南大学

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摂南大学(大阪府寝屋川市)農学部応用生物科学科井上亮教授とスポーツ振興センター瀬川智広准教授、農学部食品栄養学科藤林真美教授、京都府立医科大学のチームは本学ラグビー部員の腸内環境調査を行い、学生アスリートの腸内環境が深刻な状況であることを明らかにしました。この研究により学生アスリートの栄養面の改善や教育の促進、パフォーマンスの最大化につながることが期待されます。 【本件のポイント】 ●学生アスリートは一般健常人と比べ悪玉菌やそれらが作るコハク酸(悪い物質)が多く、コハク酸は大腸炎患者レベルに達している選手もいる事が判明 ●ほとんどの一般健常人で検出される酪酸(良い物質)が少なく、1/4は検出不可 ●対象の学生アスリートのほとんどが排便異常を抱えているのに、事前のアンケートで「体調に問題がない」と回答 ●食物繊維の摂取量を増やすと、4週間で腸内環境や体調が劇的に改善する例を確認  トップアスリートと違い、学生アスリートの栄養については十分なサポートが行き届かないなどの課題があります。また、学生アスリートが日頃起こす下痢や軟便も、本人や指導者にとって習慣化し、あまり問題視されることはありません。  今回、腸内細菌叢について数多くの研究を行う本学の応用生物科学科井上教授とラグビー部監督のスポーツ振興センター瀬川准教授、食品栄養学科藤林教授、京都府立医科大学のチームは、本学ラグビー部員88人を被験者として腸内環境を調べ、一般健常人の数値と比較調査を行いました。また、2014年に報告されたアイルランド代表ラグビー選手=※1=の腸内環境との比較も行いました。  その結果、学生アスリートの腸内では炎症などを起こすコハク酸(悪い物質)=※2=の量が多く、なかには大腸炎患者のレベルの値に達している選手もいることが判りました。一方、炎症を抑え、免疫を調整する酪酸(良い物質)=※3=は一般健常人より低いうえに、被験者の1/4では検出すらされませんでした。  酪酸は酪酸菌が作り出しますが、酪酸菌を含む食品は少なく、食事の工夫で酪酸菌を育てる必要があります。そこで酪酸菌のエサとなる食物繊維が重要となりますが、被験者のラグビー部員の腸内には食物繊維の摂取量が少ないと増える細菌(コリンセラ菌)が一般健常人の2倍以上多く存在していました。実際にアイルランド代表ラグビー選手は1日4500kcalの食事で39gの食物繊維を摂取するのに対し、本学ラグビー部員は4000~4800kcalの食事で12~14gしか摂取しておらず、一般健常人の平均摂取量17gよりも少ない結果となりました。  食物繊維不足の原因として、一般的に学生アスリートはタンパク質や炭水化物が体作りに大事と考え、これらを重要視する傾向があるため、結果食物繊維が軽視されていることが挙げられます。食物繊維の摂取量は日本人の食事摂取基準によると男性で1日21gが目標とされていますが、実は食べる量に応じて増やさなければなりません。そういった知識が学生アスリートに乏しいことも要因の一つです。  被験者の1人であり、現在ジャパンラグビートップリーグである東芝ブレイブルーパスに所属する本学卒業生の高城勝一選手に、卒業前の4週間、サプリメントと食事で1日40gの食物繊維を摂ってもらったところ、摂取前には検出できなかったビフィズス菌や酪酸菌などの善玉菌が大きく増え、コハク酸の量は1/5に減少しました。ラグビー部所属時のエネルギー摂取量を変えずに、体重(筋肉量)が増加、便通の改善、そして以前はよく出ていたニキビも治るなど、劇的な体調の改善が見られました。この結果をうけ、現在、食品企業の協力のもと、ラグビー部員の腸内環境の改善を試みており、機能性食品(サプリメント)の摂取だけでも腸内環境が改善される可能性がわかってきています。  学生アスリートの栄養改善によるパフォーマンスの更なる向上を目指して、農学部食品栄養学科の織田奈央子助手・古野幸子助手(いずれも管理栄養士)の協力も得て、今後も研究を続けます。  なお、本研究成果は学術雑誌『Microorganisms』 (2021年8月9日付)に掲載されました。  URL: https://doi.org/10.3390/microorganisms9081687 [用語説明] ※1:2014年ラグビーのアイルランド代表チームの腸内環境が調べられ、一般健常人よりも腸内環境が良いことが報告された(Clark et al. 2014 Gut) ※2:コハク酸=腸内で炎症を惹起するとされる物質。腸内での水分泌を促進し下痢を起こしやすくする。「ランナー下痢」の原因と疑われている。 ※3:酪酸=腸内細菌の酪酸菌が作り出す短鎖脂肪酸の一種。  酪酸は、主に大腸が正常な働きをするためのエネルギー源として使われる。  免疫調節作用があり、腸の炎症を抑え、がんのリスクを下げる可能性も分かってきている。 ▼本件に関する問い合わせ先 学校法人常翔学園 広報室 坂上・上田 住所:大阪府寝屋川市池田中町17-8 TEL:072-800-5371 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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