大阪工業大学(大阪市旭区)応用化学科の平井智康准教授、台湾の国立陽明交通大学(台北市北投区、旧国立交通大学)の李明家助教、東京工業大学(東京都目黒区)の早川晃鏡教授らの国際共同研究グループは、極めて簡便なプロセスによって、分子スケールのらせん構造からなるキラルシリカを調製する革新的な手法を開発しました。
【本件のポイント】
●らせん構造はDNAなど生体高分子の代表的な構造
●さまざまな機能性材料に展開可能な人工らせん高分子の合成が注目されている
●らせん構造を持つキラルシリカの従来より簡便な調製法を開発
キラルシリカは触媒や分子認識の分野において注目を集めている材料です。既存のキラルシリカの多くは界面活性剤を鋳型とする手法(ゾルーゲル反応)より調製されています。しかし、分子レベルのサイズ(数nm以下)からなるらせん構造の創製が難しいことや、多段階の工程が必要なことが課題でした。
本研究では、市販のかご型シルセスキオキサン(POSS)含有メタクリレートモノマー(MAPOSS)を用いて重合することで立体規則性をイソタクチック(全ての置換基が炭素骨格の同じ側にある)に制御した高分子(it-PMAPOSS)を調製しました。it-PMAPOSSに対してキラル分子を添加することで、it-PMAPOSSのらせん構造の巻方向が制御されること、さらにこの試料を高温(620℃)で焼成することでシリカの調製が簡便にできるばかりか、その後も、らせん構造が保持されることを見出しました。また、本手法で調製したキラルシリカ中のらせん構造は分子レベルのサイズで、優れた光学活性も示しました。従来のキラルシリカ調製法と比べ、簡便な手法によりキラルシリカが調製できるだけでなく、既存のキラルシリカよりはるかに小さならせん構造の形成が可能になります。
本研究成果は、不斉合成やキラル分離を必要とする医薬品開発分野の発展に寄与することが期待されます。
本研究は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のムーンショット型研究開発事業にて推進され、このほど米国化学会(ACS)のオープンアクセス誌『JACS Au』に掲載(2021年4月1日付)されました。
・URL:
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacsau.1c00098
・大阪工業大学ウェブサイト
http://www.oit.ac.jp/
▼本件に関する問い合わせ先
学校法人常翔学園 広報室
大野、田中
住所:大阪市旭区大宮5-16-1
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【リリース発信元】 大学プレスセンター
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