カナダで拡大する木造建築の高層化、地域活性化にも期待
アルバータ州における木造建築の階数制限が6階から12階に引き上げ
カナダ林産品の普及活動を行う非営利業界団体カナダウッドの日本事務所、カナダウッドジャパン(所在地:東京都港区、代表:ショーン・ローラー)より、アルバータ州における大規模木造建築の最新動向をご紹介します。カナダ西部に位置するアルバータ州は、カナディアン・ロッキーを挟んで隣り合うブリティッシュコロンビア州と同様にカナダの豊かな森林資源を支えています。そのアルバータ州では、2019年12月、建築基準法の改正によって州内における木造建築の階数制限を6階から12階に引き上げました。これは、2021年に予定されているカナダの国のモデル建築基準NBCC(National Building Code of Canada)の改正に先駆けたものとなります。
同州では、この改正によって建設現場ごとに60の雇用が創出され、新たな製材所や生産現場ごとには最大400の雇用が創出される可能性があるとし、約4000万ドルに相当する23万立方メートルもの木材の需要増加を見込んでいます。また、この改正は林業やデベロッパーを支援し地域経済の発展を促進するだけでなく、手頃な価格の木造住宅を提供できるようになることでアルバータ州に競争上の優位性をもたらすとの期待も寄せられています。
建築基準法では、高層の木造建築物は比較的質量の大きいエンジニアードウッドを指すマスティンバーを用いたマスティンバー構造であることが定められており、北米においてマスティンバーはその耐火性やRCや鉄骨と比べて工期の短縮や建物の軽量化が可能であることから、すでに理想的な建築材料として位置付けられています。また、マスティンバーは再利用可能な循環資源というだけでなく、質量が大きいが故に得られる二酸化炭素貯留効率が高い点も特長として挙げられます。鉄やコンクリートが二酸化炭素を排出するのに対し、マスティンバーは1立方メートルあたりおよそ1トンもの二酸化炭素を貯留できるとされ、環境負荷を低減する素材としても近年注目が集まっています。
カナダ国内では現在までに750件以上もの木造中高層建築物が建設されており、アルバータ州においても今回の法改正をはじめとして、さらなる木造化の推進と高層化がすすめられています。州内では、木材を多用した公共施設や商業施設がすでに市民たちにとって身近な存在となっています。
シェーンホームズYMCAロッキーリッジ
北米でも最大級となる集成材を用いた曲線の屋根が特徴的な複合レクリエーション施設で、プールや体育館、フィットネススタジオの他にホッケーリンクなども併設されています。環境負荷の軽減を目指した運営に取り組んでおり、木材を多用した建設をはじめとして温室効果ガス排出量を大幅に削減しています。環境性能においても高い評価を受け、LEED認証のゴールドを取得しています。
ATCO商業センター
カナダを拠点とする電力会社ATCOの本社施設でも木材がふんだんに使用されており、木の質感をそのまま活かすことで温かみのある空間を作り上げています。こちらもLEED認証のゴールドを取得しています。
カルガリー中央図書館
ウエスタンレッドシダーを多用したエントランスから、ベイツガで覆われた高さ約25メートルにおよぶ開放的なアトリウムに至るまで、近未来的でありながら、訪れる人々を木々で包み込むようなデザインを実現しています。館内には収録スタジオやカフェなども設けられており、図書館以外としても多目的に利用することができます。2018年のオープン以来、地元住民のコミュニティスペースとしてだけでなく、観光スポットとしても象徴的な施設となっています。