研究代表機関:玉川大学農学部 「開発途上国の作物を病害から救い、世界を豊かに」 バナナ・カカオの難防除病害管理技術の創出を目指した国際共同研究がスタートします -- 地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)に採択 --

玉川大学

科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)による「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」の令和2年度新規採択研究課題の選考結果が6月25日に発表され、玉川大学(東京都町田市/学長:小原芳明)が研究代表機関となり国内7つの研究機関と共同提案した「難防除病害管理技術の創出によるバナナ・カカオの持続的生産体制の確立」が条件付採択(*)されました。この結果を受け、フィリピン国との間で5年間の国際共同研究をスタートさせます。  SATREPSは、日本政府が推進する科学技術外交における重要なプログラムであり、科学技術振興機構(JST)の発表によれば、令和2年度は、全95件の応募に対し10件の採択、私立大の採択は10件中3件です。  本研究では、開発途上国で深刻化し、世界的に解決が求められている課題であるバナナ・カカオの重要病害への持続的かつ効果的な防除を目的とし、微生物の分類・生理生態学、分子生物学等の基礎的研究と、それに積み上げられた植物病理学、土壌肥料学、栽培学ならびに工学などの応用を融合し、病害の予防と防除の視点から、フィリピン国において植物健康診断、病害診断薬に加え深層学習による診断および病害発生予察AIを開発し、さらに、安価に行える土壌還元消毒と栽培管理技術を併用して病害防除の対策を講じ、経済性を含めて総合的な判断による評価・改良を加え、病害防除管理技術体系を構築するものです。 (*)今後は外務省による相手国政府との国際約束の締結、JICAによる相手国関係機関との実施協議の上、研究を開始しますが、相手国や各機関の情勢により計画変更の可能性があるため、現段階では条件付採択となります。  詳細は、JSTより令和2年6月25日付けで公開されていますので、JST公式Web( https://www.jst.go.jp )をご覧ください。 【研究体制】 ○日本国研究体制 ・研究代表機関  玉川大学 【研究代表者:農学部/学術研究所 菌学応用研究センター 教授 渡辺京子】 ・共同研究機関 三重大学 東京農工大学 株式会社ユニフルーティージャパン ボッシュ株式会社 ・協力機関 日本大学 森林研究・整備機構 東京農業大学 ○フィリピン国研究体制 ・研究代表機関  セントラル・ルソン大学 ・協力機関  フィリピン国農業省 フィリピン収穫後処理開発機械化センター  フィリピン国農業省 農業バイオテクノロジープログラムオフィス 【研究の背景】  世界人口が増大の一途を辿る中、持続的農業生産は人類の食糧確保と開発途上国の健全な経済発展において最重要な基盤です。その中でもバナナとカカオは開発途上国において主要な換金作物です。日本では、バナナが流通果物の中で年間消費量のトップを占め、1世帯当たり年間消費量は18.43kgであり、バナナ自体が平時の食料安全保障において安定的輸入が確保されるべき重要作物として位置づけられています。その主な輸入元は共同研究を行うフィリピン国で、総輸入量の85%を占めています(1973年~現在)。フィリピン国内でもバナナ産業は20万人以上の一大雇用を生み出しており、持続的な生産とその拡大による農村住民の所得向上は、同国の国家開発計画に記された最重要課題と位置付けています。  ところが、近年、バナナもカカオも防除法が開発されていない病害が多発し、フィリピン・ミンダナオ島では2019年に被害を受けた約3,000haのバナナの耕作地が放棄されたとの報告もあります。さらにカカオについても、同国の戦略的重要農産物であるにも関わらず、殆どの圃場で病気が発生し、甚大な被害を受けています。  そこで玉川大学を研究代表とする日本側研究チームは、SATREPSを通じてフィリピン国セントラル・ルソン大学と同国農業省とともに、我が国の農学、工学、経済学の知識・技術をもとに産官学の連携とフィリピン国の持つ研究ポテンシャルにより既存技術と革新技術によりバナナ、カカオの難防除病害管理技術体系を確立し、破壊的インクルーシブ・イノベーションとして地球規模の課題である食料安全保障問題の解決への貢献をめざします。 【本研究によるSDGsへの貢献】  本研究は、持続可能な開発目標(SDGs)である「2.飢餓をゼロに」「12.つくる責任 つかう責任」「15.陸の豊かさを守ろう」などへの具体的な貢献が期待されます。 2.飢餓をゼロに  本研究で目指す病害防除管理技術は、社会面ではバナナとカカオの持続的生産、収益の増大に繋がり、これによる農家の所得向上、農村部住民の健康と生計向上に貢献できます。特にバナナの新パナマ病は、多くの先進国で消費されるデザートバナナで脅威となっているだけでなく、世界最大の産地であるインド、主食として栽培されるハイランドバナナ(EAHB)へのアフリカでの感染が報告されはじめているため、本病害管理技術を世界中に普及することで世界の食料安全保障にも寄与するだけでなく、経済発展により資金の流入にも繋がることが期待されます。 12.つくる責任 つかう責任  本研究では、研究を通じて設置する微生物遺伝資源センターを基軸とし、植物保護研究への提供はもとより、遺伝資源の産業分野での利用を促進します。また、難防除病害管理技術体系の構築により、環境保全型農業としてフィリピン国内でバナナ、カカオの生産性向上に貢献し、適切な防除体系は、減農薬に繋がり、持続可能な農業生産を可能にします。 15.陸の豊かさを守ろう  本研究では、これまでほとんど手付かずであったフィリピン国の微生物多様性を明らかにし、微生物遺伝資源センターにて収集菌株の収集を行います。その保存菌株は、農業への活用だけでなく、創薬スクリーニング源などの遺伝資源として産業的な利用が期待できます。 ▼本件に関する問い合わせ先 玉川学園 教育情報・企画部 広報課 長野・金子 住所:〒194-8610 東京都町田市玉川学園6-1-1 TEL:042-739-8710 FAX:042-739-8723 メール:pr@tamagawa.ac.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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