日本製鉄 第30回日本製鉄音楽賞受賞者決定
《フレッシュアーティスト賞》副賞300万円
大西 宇宙(おおにし たかおき)<バリトン>
【贈賞理由】
大西宇宙は日本人の若手歌手の中でもとりわけ際立った存在だ。バリトンの魅力を感じさせる張りのある素晴らしい声、幅広い表現力、曲の特質を的確に捉える優れた音楽性を兼ね備える彼は、アメリカでのめざましい活動ぶりに示されているように、世界に通用する実力の持ち主である。稀に見る大器として今後の活躍に注目したい。(寺西基之選考委員)
《特別賞》副賞100万円
小林 道夫(こばやし みちお)<清里音楽祭創設および音楽監督、ゆふいん音楽祭音楽アドバイザー、ピアニスト、チェンバリスト>
【贈賞理由】
国内における音楽祭の先駆け的存在である「清里音楽祭」で長く音楽監督を、また、「ゆふいん音楽祭」でも音楽アドバイザーを務めた他、東京藝大バッハカンタータクラブ(2020年に結成50周年)や自身のアカデミーで多数の後進を育てた。音楽祭主宰の他、バッハ作品解釈、室内楽、ピアノという枠を超えた全ての分野でのパイオニアであり、代名詞ともいえる「12月のバッハのゴルトベルク変奏曲公演」は1972年から現在も続く。(上田弘子選考委員)
なお、第30回日本製鉄音楽賞の贈呈は、日本製鉄株式会社本社において行います。
また、贈呈とは別に、受賞記念コンサートを、2020年7月15日(水)に紀尾井ホール(東京都千代田区紀尾井町6番5号)にて開催いたします。
《受賞者経歴》
第30回日本製鉄音楽賞フレッシュアーティスト賞
大西 宇宙(バリトン)
1985年10月16日東京都稲城市生まれ。
2019年8月セイジ・オザワ松本フェスティバル(OMF)のチャイコフスキーのオペラ《エフゲニー・オネーギン》にてタイトルロールの代役を務め、日本でのオペラ公演デビュー。同年9月にはP.ヤルヴィ指揮NHK交響楽団オペラ《フィデリオ》(演奏会形式)に出演し、いずれも好評を博した。海外では、2019年1月ノースカロライナ歌劇場の《カルメン》、2020年には《道化師》に出演し、高評された。4月にはフィラデルフィア歌劇場には《蝶々夫人》に出演予定。また、2019年2月にはカーネギーホールにてニューヨーク・オラトリオ協会主催のシベリウス《クレルヴォ》交響曲のソリストを務め、2020年3月にも同協会主催のブラームス《ドイツ・レクイエム》に出演予定。今後も国内外での活躍が期待される。
武蔵野音楽大学及び大学院卒業(2004~10)。大学院1年時の2008年には第62回全日本学生音楽コンクール第1位および第39回イタリア声楽コンコルソ金賞・バリトン特賞を受賞、翌09年第1回IFACジュリアード音楽院声楽オーディションにて最優秀賞を受賞し、日本人としては数少ない声楽専攻生としてジュリアード音楽院に入学。2015年の卒業時には在学中の活躍を讃えられ、特別賞と奨学金を付与された。この他、イタリアやドイツ、スイスのアカデミーなどでも研鑽を積む。ジュリアードではモーツァルト《フィガロの結婚》《エフゲニー・オネーギン》、バッハ《マタイ受難曲》など多くの公演に主要キャストとして抜擢されたほか、学内オーディションを経て、リンカーン・センターでリサイタル・デビューを飾った。在学中、アメリカのオペラ・インデックス(2012)、リチア・アルバネーゼ=プッチーニ国際コンクール(2013)などのコンクールで第1位を獲得し、2015年モントリオール国際コンクールではファイナリストに選ばれた。2018年12月にはプリミエ・オペラ財団国際声楽コンクール(NY)で優勝し、同時にホロストフスキー記念特別賞を受賞。
2015年、全米でテレビ放送されたシカゴ・リリック・オペラの世界初演オペラ《Bel Canto》(ジミー・ロペス作曲)で神父アルゲダス役を演じ、アメリカ・プロ・デビューを飾り、海外新聞社・クラシック雑誌から称賛を得た。
2015年から3年間、シカゴ・リリック歌劇場ライアン・オペラ・センターに所属し、《エフゲニー・オネーギン》、ビゼー《真珠採り》《カルメン》他、数多くのオペラに出演している。
日本では、近年各地でベートーヴェン交響曲第9番のソリストを務めているほか、飯森範親指揮オルフ《カルミナ・ブラーナ》(2014)や、広上淳一指揮《ドイツ・レクイエム》(2016)、ミハイル・プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団チャイコフスキー・オペラ《イオランタ》(コンサート形式)、高関健指揮京都市交響楽団ブリテン《戦争レクイエム》(以上2018)などに出演。2019年12月は広上指揮日本フィルおよび飯森指揮山形交響楽団の《第9》、2020年1月3日のバッティストーニ指揮第63回NHKニューイヤー・オペラコンサートと続けて出演した。2月には飯森指揮いずみシンフォニエッタ大阪と、マーラーの《大地の歌》(川島素晴編)を初演し絶賛された。
2019年度第30回五島記念文化賞オペラ新人賞を受賞し、2019年9月よりニューヨークを拠点に研修中。
第30回日本製鉄音楽賞特別賞
小林 道夫(清里音楽祭創設および音楽監督、ゆふいん音楽祭音楽アドバイザー、ピアニスト、チェンバリスト)
1933年1月3日東京都世田谷区生まれ。都立小山台高校を経て、東京藝術大学音楽学部楽理科卒業。ドイツのデトモルト音楽大学に留学、幅広く研鑽を積む。帰国後はチェンバロ、ピアノ、室内楽、指揮など多方面にわたり活躍、特にバッハ、モーツァルト、シューベルトの解釈、演奏は高く評価されている。1970年には東京藝術大学バッハカンタータクラブの指揮者に迎えられ、後の日本のバッハ演奏の中心的な存在になる演奏家を数多く育てた。数多くの世界的名演奏家たちとも共演を重ねており、最も経験豊かな音楽家のひとり。
1956年毎日音楽賞・新人奨励賞、1970年第1回鳥井音楽賞(現サントリー音楽賞)、1972年ザルツブルク国際モーツァルテウム財団モーツァルト記念メダル、1979年モービル音楽賞を受賞。
1975年「清里音楽祭」を創設し音楽監督(~2004年の第30回で終了)を、1981年から「ゆふいん音楽祭」にも参加し音楽アドバイザー(2004~2009)を務め、地域の音楽振興に長年に亘り尽力した。
国立音楽大学大学院教授、東京藝術大学客員教授、大阪芸術大学大学院教授を歴任し、現在、大分県立芸術文化短期大学客員教授。
【日本製鉄音楽賞】Nippon Steel Music Awards
日本製鉄音楽賞(旧称・新日鉄音楽賞、2012(平成24)年10月より新日鉄住金音楽賞、2019年4月1日より現行に改称)は、1990年(平成2年)に旧新日鉄創立20周年と、同社が提供してきた「新日鉄コンサート」放送35周年を記念して設けられた音楽賞です。この賞を通して、日本の音楽文化の発展と、将来を期待される音楽家の方々の一層の活躍を支援することを目的としています。
【賞の概要】
フレッシュアーティスト賞[賞状/副賞300万円]
将来を期待される優れたアーティストを対象とした賞。
選考方針としては、技術のみにかたよらず、音楽性、将来性を重視し、広い範囲から選出。その年の最優秀者を決定し、賞を贈る。
特別賞[賞状/副賞100万円]
クラシック音楽をベースにした活動を行っている個人を対象とした賞。
幅広いジャンルのなかから、演奏会を支えるなど音楽文化の発展に大きな貢献を果たした方に対して、賞を贈る。
【選考委員】
寺西基之 (音楽評論家)
上田弘子 (音楽評論家)
山野雄大 (音楽評論家)
江口 玲 (ピアニスト・東京藝術大学准教授)
山崎伸子 (チェリスト・桐朋学園大学特任教授・東京藝術大学名誉教授)
お問い合わせ先:
日本製鉄株式会社
日本製鉄音楽賞運営事務局
(公益財団法人 日本製鉄文化財団 受託事業)
〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町6番5号
電話 03-5276-4500(代表) FAX 03-5276-4527