選択的SGLT2阻害剤フォシーガ 日本において1型糖尿病に対する 効能・効果および用法・用量の追加承認を取得
フォシーガは、腎尿細管でのグルコース再吸収を抑制するSGLT2に対する選択的かつ可逆的な阻害剤であり、血液中の過剰なグルコースを尿中に排出することで血糖値を低下させる薬剤です。インスリンを介さずに空腹時血糖および食後の高血糖を改善します。
1型糖尿病は、体内でインスリンが生成されなくなる疾患で、主には自己免疫反応によってインスリンを生成する膵臓内の膵島ベータ細胞が壊されてしまうことで発症します。この破壊過程の原因は十分に解明されていないものの、感受性遺伝子と環境因子の関連性が示唆されています 1。
厚生労働省の調査によれば、本邦における「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」患者さんは約10~14万人と推定されています 2。1型糖尿病は特に小児~青年期に多く発症し、本邦では毎年0~19歳の1000人に4.4人が発症していますが、年齢にかかわらず発症し得る疾患です 1。
1型糖尿病患者さんは、日常の活動で変動する血糖値を正常域に維持するため、毎日頻回のインスリン注射が必須です。成人の糖尿病患者さんが、糖尿病による合併症を予防するための、長期血糖コントロールの指標であるヘモグロビンA1c(HbA1c)値の目標値は、7.0%未満が目安とされていますが、1型糖尿病患者さんにおける平均HbA1c値は7.8%と高い傾向にあります 3。このため、1型糖尿病患者さんのより良い血糖コントロールにつながるインスリン治療と併用可能な治療薬の開発が期待されていました。
本承認は、第III相臨床開発プログラムDEPICT(Dapagliflozin Evaluation in Patients with Inadequately Controlled Type 1 Diabetes)、および別途実施された国内第III相長期安全性試験(D1695C00001試験)の結果に基づくものです。両試験では、血糖コントロールが不十分な1型糖尿病患者さんに、用量調整可能なインスリン療法への経口投与の補助治療としてフォシーガを投与しました。その結果、フォシーガ5mgおよび10mgいずれの用量も平均HbA1c値(主要評価項目)が有意かつ臨床的に意義のあるベースラインからの低下を示し、また24週の時点での体重とインスリンの1日総投与量(副次評価項目)が減少しました 4,5,6。
1型糖尿病試験におけるフォシーガの安全性プロファイルは、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)がプラセボ群と比較してフォシーガ群でより多く確認されたことを除いては、2型糖尿病試験で確立されたプロファイルと一貫していました。糖尿病性ケトアシドーシスは、2型糖尿病患者さんよりも1型糖尿病患者さんでより多く発現する合併症として知られています。
本邦以外では欧州において、フォシーガが成人1型糖尿病患者さんのインスリン治療への経口の補助治療として承認されたことを2019年3月25日に発表しました。米国においては同適応で当局の審査中で、結果は2019年後半に発表されることが期待されています。
製品概要(下線部:今回の承認による追加記載)
【製品名】
フォシーガ®錠 5mg、フォシーガ®錠 10mg
【一般名】
ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物
【効能・効果】
2型糖尿病、1型糖尿病
【用法・用量】
2型糖尿病
通常、成人にはダパグリフロジンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mg 1日1回に増量することができる。
1型糖尿病
インスリン製剤との併用において、通常、成人にはダパグリフロジンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mg1日1回に増量することができる。
【承認事項一部変更承認取得日】
2019年3月26日
【製造販売元】
アストラゼネカ株式会社
【販売】
小野薬品工業株式会社
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臨床開発プログラムDEPICT試験について
DEPICT(Dapagliflozin Evaluation in Patients with Inadequately Controlled Type 1 Diabetes)臨床試験プログラムは、DEPICT-1およびDEPICT-2 の2つの臨床試験で構成されています。インスリン治療で血糖コントロールが不十分の1型糖尿病患者さんを対象として、フォシーガ5mgまたは10mgが血糖コントロールに及ぼす影響を評価した24週間の無作為化二重盲検並行群間試験です。全症例が24週時およびその後28週間延長時(合計52週時)で評価されました。
フォシーガ(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物)について
フォシーガは、ナトリウム・グルコース共輸送体2に作用する選択的阻害剤(SGLT2阻害剤)で、世界で最初に承認されました。日本において、2型糖尿病患者さんの食事、運動療法の補助治療としての血糖コントロールの改善を適応として、経口1日1回投与で単剤療法または併用療法の一環として使用されます。フォシーガの強固な臨床試験プログラムは、35,000例以上の患者さんを対象とする終了済みおよび進行中の試験を含む35件以上の第IIb/III相試験から構成されています。フォシーガは、現在までに180万患者年以上に処方されました。本邦では2019年3月、1型糖尿病に対する効能・効果および用法・用量の追加承認を取得しました。また、EUにおいても1型糖尿病および2型糖尿病の治療薬として承認されています。
アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主にオンコロジー、循環器・腎・代謝疾患、および呼吸器の3つの重点領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。また、炎症、感染症および ニューロサイエンスの領域においても、他社との提携を通じて積極的に活動しています。当社は、100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはwww.astrazeneca.comまたは、ツイッター@AstraZeneca(英語のみ)をフォローしてご覧ください。
日本においては、主にオンコロジー、循環器・代謝/消化器、呼吸器を重点領域として患者さんの健康と医療の発展への更なる貢献を果たすべく活動しています。当社についてはwww.astrazeneca.co.jpをご覧ください。
小野薬品工業株式会社について
小野薬品工業株式会社は、日本の大阪市に本社を置き、特定領域における革新的な医薬品の創製に取り組む研究開発型の製薬企業で、糖尿病領域とがん領域を重点領域として活動しています。詳細については、www.ono.co.jpにてご覧ください。
References
1. IDF(国連糖尿病連合) Diabetes Atlas Eighth Edition 2017, P129
https://www.idf.org/e-library/epidemiology-research/diabetes-atlas.html
2.平成 29 年度 厚生労働科学研究補助金 1 型糖尿病の実態調査、客観的診断基準、日常生活・社会生活に着目した重症度評価の作成に関する研究;2018年7月http://dmic.ncgm.go.jp/content/type1_insulin_20180817.pdf
3. 一般社団法人糖尿病データマネージメント研究会2017年度基礎集計資料 http://jddm.jp/data/index-2017.html
4. Dandona P, Mathieu C, Phillip M, et al. Efficacy and safety of dapagliflozin in patients with inadequately controlled type 1 diabetes (DEPICT-1): 24-week results from a randomised controlled trial. Lancet Diabetes and Endocrinol. 2017:5;846-17
5. Mathieu C, Dandona, P, Gillard, P, et al. Efficacy and Safety of Dapagliflozin in Patients With Inadequately Controlled Type 1 Diabetes (the DEPICT-2 Study): 24-Week Results From a Randomized Controlled Trial. Diabetes Care 2018;41:1938–1946
6. Dandona P, Mathieu C, Phillip M, et al. Efficacy and safety of dapagliflozin in patients with inadequately controlled type 1 diabetes: The Depict-1 52 week study. Diabetes Care 2018 Dec; 41(12): 2552-2559