ノバルティス、慢性蕁麻疹患者アンケート「RELEASE調査」がThe Journal of Dermatologyに掲載
蕁麻疹とは、かゆみを伴う一過性かつ限局性の浮腫が病的に出没する疾患です。症状は、通常数十分から数時間程度で跡を残さずに消えます。明らかな直接的誘引のないものを特発性の蕁麻疹とよび、そのうち1カ月以上繰り返し症状が現れるものを慢性蕁麻疹と呼びます[2]。日本では約23万人が蕁麻疹に罹患していると言われており、そのうちの5割以上が慢性蕁麻疹であると考えられています[3],[4]。
今回の調査は、多くの患者が悩んでいる慢性的な蕁麻疹の症状がもたらす疾病負荷を検証する目的で、過去1年以内に医療機関の受診歴がある蕁麻疹患者を対象に、社会人口学的特性*、受療状況、蕁麻疹の疾患コントロール度、QOLおよび労働生産性をインターネット患者調査により評価しました。蕁麻疹の疾患コントロール度、QOL、および労働生産性については、それぞれUCTスコア、DLQIおよびWPAI-GHを用い評価しました。また、他の皮膚疾患と比較するために、アトピー性皮膚炎と乾癬の患者に対しても同様の調査を行いました。
*患者を特徴付ける性別、年齢、身長、体重などの基本的特性のこと
今回の結果により、慢性蕁麻疹患者はアトピー性皮膚炎、乾癬と同様にQOLが障害されていることが分かりました。また、慢性蕁麻疹患者およびアトピー性皮膚炎患者では、会社や学校にはいけるが、十分なパフォーマンスが発揮できず、業務遂行能力や生産性への影響が大きいことが分かりました。
蕁麻疹は比較的よく見られる疾患ですが、慢性蕁麻疹患者の64%は症状のコントロールが出来ていないことが分かりました。また、その疾病による様々な負担までは良く理解されておらず、57%の慢性蕁麻疹患者は痒みがひどく、しばしば夜眠れないなど、日常生活に支障があることも分かりました。症状のコントロールが不良な人(UCT<8)は、より強く健康状態や治療に対する不満を感じ、生活の満足度が損なわれていることが明らかになりました。
本調査の監修者である秀 道広先生(広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 皮膚科学 教授)は次のように述べています。「慢性蕁麻疹では、現治療に満足していない患者が多いことが分かりました。医師と患者の両者がUCTスコアなどを使い、正しく疾患コントロール度を評価することの重要性が示唆されました」
■ゾレアについて
ノバルティス ファーマ株式会社は、2017年3月24日に、ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤「ゾレア®皮下注用75mg、150mg」(一般名:オマリズマブ(遺伝子組換え)、以下「ゾレア」)について、特発性の慢性蕁麻疹の治療薬として効能追加の承認を取得いたしました。
「ゾレア」は、血中や皮膚内の遊離IgEに結合し、肥満細胞および白血球の一種である好塩基球の活性化などを抑制することで、特発性の慢性蕁麻疹の症状を抑制すると考えられています。
■UCTスコアについて
Urticaria Control Test(以下、UCT)は、過去4週間の蕁麻疹の状態について、4つの質問を0~4点、計16点満点で評価する質問票です。本調査では、UCTスコア8未満を「コントロール不良」、UCTスコア8~11を「コントロール不十分」、UCTスコア12以上を「コントロール良好」としました。
Q1. この4週間に、蕁麻疹による症状(痒み、膨疹、腫れ)がどのくらいありましたか?
Q2. この4週間に、蕁麻疹によってあなたの生活の質はどのくらい損なわれましたか?
Q3. この4週間に、蕁麻疹の治療があなたの症状を抑えるのに十分でなかったことがどのくらいありましたか?
Q4. 全体として、この4週間にあなたの蕁麻疹はどのくらい良い状態に保たれていましたか?
■DLQIについて
Dermatology Life Quality Index(以下、DLQI)は、皮膚の状態が生活にどれくらい影響を与えたかを図る指標であり、数値(最大30点)が大きいほど影響が大きいとされています。
■WPAI-GHについて
Work Productivity and Activity Impairment Questionnaire-General Health(以下、WPAI-GH)は、労働生産性を評価する指標であり、過去7日間における4つの項目(プレゼンティズム、アブセンティズム、労働生産性の低下、活動障害)について評価されるもので、それはパーセンテージで評価されます。高いパーセンテージは、より多くの欠勤、労働生産性や活動の低下を示します。
■主な調査結果のサマリー
●慢性蕁麻疹患者はアトピー性皮膚炎、乾癬と同様にQOLが障害されていた
(DLQI総計スコアCU vs AD, Pso;4.8 vs 6.1, 4.8)(数値が高いほど障害が強い)
●慢性蕁麻疹患者はアトピー性皮膚炎患者、乾癬患者と同様に、労働生産性への影響が大きかった
●UCT(疾患コントロール度)は、DLQIと強く相関することが示された
●慢性蕁麻疹患者の多くは、クリニックにて診療されており(85.1%)、総合/大学病院への受診は一部の患者(20%)に限られていた
●64%の慢性蕁麻疹患者は、症状のコントロールができていない
●57%の慢性蕁麻疹患者は、痒みがひどく夜眠れないことがよくある
●症状のコントロールが不良な人(UCTスコア8未満)は、健康状態、治療そして生活面に対する不満をより強く感じている(不満な患者の割合:53.3%、47.4%、34.5%)
参考文献
[1].Itakura A et al. Impact of chronic urticaria on quality of life and work in Japan: Results of a real‐world study, J Dermatol. 2018 in press
(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/1346-8138.14502、2018年6月14日)
[2].富田靖「標準皮膚科学」医学書院、2013年。
[3].厚生労働省「平成26年 患者調査(傷病分類編)」
(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/index.html、2018年6月6日)
[4].田中 稔彦、亀好 良一、秀 道広「広島大学皮膚科外来での蕁麻疹の病型別患者数」『アレルギー』第55巻、一般社団法人日本アレルギー学会、2006年、134-139頁
ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置くヘルスケアにおける世界的リーダーであるノバルティス社の医薬品部門の日本法人です。ノバルティス グループ全体の2017年の売上高は491億米ドル、研究開発費は90億米ドルでした。ノバルティスは約122,000人の社員を擁しており、世界150カ国以上で製品が販売されています。詳細はホームページをご覧ください。