~磁気メモリーなど高機能デバイス開発に新たな可能性~
首都大学東京大学院理工学研究科 田口勝久特別研究員と多々良源准教授
首都大学東京大学院理工学研究科の田口勝久日本学術振興会特別研究員と多々良源准教授は、円盤状ナノ磁性体の中心にあらわれる磁気コアの向きを、偏光で効率良く反転する仕組みを理論的に示し、シミュレーションによりコアの向きが超高速で反転することを世界で初めて発見しました。高密度磁気メモリーの書き換え時間の短縮に道を開く成果です。
この成果は、アメリカ物理学会が発行する英文誌Physical Review Letters(PRL)の2012年9月21日号に掲載される予定です。
磁気コアは、ハードディスクのようにコアの向きを情報として記録する磁気メモリーとしての応用が期待されています。今後の磁気メモリーでは書き換え時間の短縮が望まれていることから、コアの向きを高速に反転することが重要となっています。これまでには磁場や電流を用いる反転メカニズムが提案されていますが、それぞれ課題がありました。磁場を使うと反転にかかる時間を短くすることができますがデバイスの高密度化に向かず、電流を使うとデバイスの高密度化は可能な反面、速い反転は困難です。
今回、田口特別研究員らは偏光を使って磁気コアの向きを反転する仕組みを発見し、その反転メカニズムが高密度化と高速化を両立できるものであることを明らかにしました。このメカニズムを用いると150ピコ秒1)での反転が可能で、これは電流を使った場合と比べて150倍も速いものです。また、このメカニズムは従来の光磁気現象と異なり重い元素のもつスピン軌道相互作用を使わないもので、今回の発見は資源の埋蔵量に問題のあるレアアース金属を用いない高機能デバイスの開発に新たな可能性を示したものになっています。
注 1) ピコ秒 =1兆分の1秒