“増える訪日外国人” と “高まる地震リスク”に備え、大学が行う防災の取り組み 外国人向けの「地震 防災マニュアル」を制作
- 地震発生から5分の「初動」に特化し、大学の知見である「インフォグラフィック」を活用 -
文京学院大学は、この度、外国人を対象とした「地震 防災マニュアル(文京区版)」を作成し、東日本大震災から5年の節目を迎える3月11日(金)から順次配布を予定しています。 本マニュアルは、地震の経験や知識がない外国人でも地震発生時に適切な対応ができるよう「初動」に内容を絞り、また、内容が瞬時に理解できるよう「インフォグラフィック」で作成している点が特長です。英語版と中国語版の2種類を制作し、今後の状況に応じて他の言語にも対応する予定です。本学は、地域・社会に根ざす大学として、大学の知見を生かした防災への取り組みを推進していく予定で、今回、その一環として経営学部のカリキュラム「ビジュアル・シンキング」の1つの手法である「インフォグラフィック」を用いて制作しました。 【 制作にあたっての社会的背景 】 ~高まる地震リスクに対する外国人のため防災マニュアルの必要性 ~ 東日本大震災から5年目を迎え、震災を教訓とした防災への取り組みが各所で進められています。しかし、手薄と言われる分野も多く、その一つが日本に滞在する外国人への災害時対応です。東京都が2012年4月、都内在住の外国人169名に実施した調査※1によると、日本在住までに地震を経験したことのない外国人は約4割に及びました。また、本学が日本在住の外国人70名を対象に「地震があったらどのような行動を取るか?(複数回答)」との調査を行ったところ、「何をして良いか分からない(15名)」「避難すべきかどうか判断できない(8名)」などが上位を占め、「何もしない(9名)」「避難しない(7名)」との回答も目立ちました。東京都内の外国人登録者数は都内人口の約3%にあたる約45万人※2に達しており、また、訪都外国人観光客は過去最多の約887万人※3に及びます。今後、滞在外国人数の増加が見込まれる中、地震に対する経験と知識が少なく、かつ、“言葉の壁”のある外国人を「災害弱者」にしないための活動が求められています。 ※1)東京都「災害時における外国人への情報提供」2012年4月 ※2)東京都「区市町村別主要10か国外国人人口」2016年1月1日 ※3)「訪都外国人旅行者数・日本人旅行者数及び観光消費額」2015年5月25日 【 本学の防災マニュアル制作の経緯 】 ~ 大学が持つ「インフォグラフィック」の知見を生かした制作 ~ 外国人向けの防災は、手薄と言われながらも、防災訓練などの取り組みが各地で徐々に進められています。また、多言語対応した「避難マニュアル」や「災害時の会話集」、「防災マップ」など、制作物の対応も進展が見られます。しかし、「カバーする範囲が多岐にわたるためボリュームが多過ぎる」「地震への知識のない外国人には内容が難しい」「テキストが中心のため理解に時間がかかる」「携帯に不向きで有事の際は参照できない」などの幾つかの課題を含んでいました。そこで、それらの課題を解消するため、本学が制作に取り組んだのがビジュアルを活用し初動に特化した「地震 防災マニュアル(文京区版)」です。本学は、今春4月に経営学科から「経営コミュニケーション学科」へと名称変更するに伴い、次世代のマネジメント技術と言われる “可視化する能力”、中でも核の一つとなる「インフォグラフィック」を取り入れたカリキュラムを強化します。本学が持つこの「インフォグラフィック」の知見を、今回のマニュアル制作に取り入れることで、従来の課題点のクリアを試みました。 特長1)取るべき行動を瞬時に伝える「インフォグラフィック」を採用 地震の経験や知識の有無に関わらず、言葉の壁を超える「インフォグラフィック」で制作することで、緊急時においての取るべき行動を瞬時に伝えることができます。 特長2) 震災発生時に行動すべき必要最低限の「初動」に特化 日頃の準備、避難生活などさまざまな項目をカバーする従来の地震関連の書籍やマニュアルとは異なり、自分の判断と行動が必要な“最初の5分”のみに特化した内容で構成されています。 特長3) パスポート等と一緒に持ち運べる「携帯性」と「耐久性」を重視 常時携帯して地震発生時でも素早く取り出し参照できるようにパスポートやガイドブックに挟める折り畳み式のコンパクトサイズになっています。また、紙は、破れや割けに強く、耐水性・筆記性に優れたストーンペーパーを使用しています。 【 本マニュアルの概要と普及のための取り組み 】 ~ 必要最低限の情報を1つに集約した防災対応マニュアル ~ 今回の制作にあたり、「ビジュアル・シンキング」を専門とする経営学科(4月から経営コミュニケーション学科)の倉嶋正彦准教授が中心となり、同学科の馬渡一浩教授ならびに本学で学ぶ中国人留学生3名が一連の制作活動に携わりました。マニュアルは、表裏両面を使い、表面には災害対応情報などの情報を記載し、非常食の新たな備蓄法「ローリングストック法」についてや、文京区の地図を記載しています。また、裏面は地震発生からの5分間を、どう対応するかについて「(1)身を守る」「(2)避難の準備」「(3)情報収集」「(4)避難の判断」の4つのステップで説明しています。 本マニュアルは、英語と中国語の二つのバージョンを制作し、3月11日(金)から順次配布を予定しています。また、多くの外国人が手にできるよう自治体・団体、公共施設などとも連携して配布を実施していく予定です。 【 「文京学院大学」が取り組む意義 】 ~ 建学の地である文京区へ還元する2つのテーマ ~ 本学は、建学の地であり、本郷キャンパスを構える文京区で地域の皆さまからご理解いただき、現在、4学部10学科を擁する総合大学となりました。本学は、「地域に根ざし、社会に開かれた大学」の更なる実現を目指し、大学の研究成果や人的資源を活用し、地域社会が直面する課題解決に向けた取り組みをさまざまな分野で推進しています。それらの取り組みの一環として、「防災」と「外国人(グローバル)」の両テーマを掛け合わせた今回の活動を実施するに至りました。 ■防災 本学は、東京大震災が発生した1923年、その惨事を目の当たりにした創設者・島田依史子が翌年1924年に建学しました。学ぶ機会に恵まれない女性の不遇を憂い、震災で財を失った人々を目の当たりにして、人が拠って立つ真の財は、生涯失うことのない知識や技能にあることを確信してのことでした。一つ目の「防災」は、本学の設立のきっかけとなった大きなテーマでした。 ■外国人(グローバル) 文京区には外国人の観光客が訪れるスポットや、留学生が学ぶ大学が多くあります。災害時、情報弱者になりうる外国人に対して、まずは本学にいる外国人学生が地震の際の初動対応に困らないツールとしてパスポートサイズのマニュアルを制作しました。また、文京区における外国人人口の中で中国人が一番を占め※2、かつ、本学で学ぶ外国人学生も中国人が一番多いこともあり、中国語版での制作と多くの外国人が対応できる英語の2つの種類を制作しました。 90年前に建学のきっかけとなった「震災」と、今後の100年に向けて本学が目指す「外国人(グローバル)」を掛け合わせた今回の「地震 防災マニュアル(文京区版)」の制作が、地域に貢献する活動であると位置づけています。本学は、学園創立90周年を機に、地域に根ざした大学としての更なる推進を目指して参ります。 【 本件に関する報道関係者様のお問い合わせ先 】 文京学院大学(学校法人文京学園 法人事務局総合企画室) 三橋、谷川 電話番号:03-5684-4713< 文京学院大学について >
1924年、創立者島田依史子が島田裁縫伝習所を文京区に開設。教育理念「自立と共生」を根源とする先進的な教育環境を整備し、現在は、東京都文京区、埼玉県ふじみ野市にキャンパスを置いています。外国語学部、経営学部、人間学部、保健医療技術学部、大学院に約5,000人の学生が在籍する総合大学です。学問に加え、留学や資格取得、インターンシップなど学生の社会人基礎力を高める多彩な教育を地域と連携しながら実践しています。