東京薬科大学薬学部 生体分析化学教室 東海林敦准教授、千明大悟(同大学薬学研究科博士課程4年)らの研究グループは、細胞内のシグナル伝達と連動する人工膜システムを開発しました。本研究成果は、バイオエレクトロニクス分野の国際学術誌 Biosensors and Bioelectronics に掲載されました。
■ポイント
膜タンパク質であるGABAA受容体を、人工脂質二重膜に高効率かつ均一な配向で包埋する技術を確立することに成功。膜の内側と外側を独立した反応空間として扱うことが可能となった。
細胞内側に相当する区画にプロテインキナーゼA(PKA)を作用させることで、GABAA受容体の活性が亢進することが明らかになった。
将来、細胞内外の分子との連携を利用した機能評価系の構築に加え、医薬品候補物質の探索や環境中の生体影響性化学物質の検出などへの応用が期待される。
■概要
研究概要図
細胞膜には、多種多様な膜タンパク質が存在し、細胞の内外における物質や情報のやり取りを担っています。しかし、細胞膜は多様な脂質やタンパク質から構成される複雑な環境であるため、特定の膜タンパク質がどのように働き、細胞内外の分子とどのように連携しているのかを個別に解析することは容易ではありません。こうした課題に対し、これまで膜タンパク質を細胞膜から取り出し、人工的に調製した脂質二重膜に再構築する方法が用いられてきました。この方法は、特定の膜タンパク質の機能を解析するうえで有効である一方で、膜タンパク質を人工膜に効率よく組み込み、その配向や活性を維持した状態で機能を再現することには、課題が残されています。
本研究では、膜タンパク質であるGABAA受容体を、人工脂質二重膜に高効率かつ均一な配向で包埋する技術を確立することに成功しました。受容体の配向を揃えることで、膜の内側と外側を独立した反応空間として扱うことが可能となり、細胞内側に相当する区画にプロテインキナーゼA(PKA)を作用させることで、GABAA受容体の活性が亢進することを明らかにしました。
■今後の展望
従来の生体模倣技術では、生体膜の構造や個々の分子機能を人工的に再現する研究が進められてきました。本技術は、こうした取り組みをさらに発展させ、個々の分子や膜構造の再現にとどまらず、膜を介した分子間の相互作用や細胞内外の情報伝達など、それらの連携によって成り立つ生体機能を人工膜上で再構成するための新たな基盤となる可能性を秘めています。将来的に、細胞内外の分子との連携を利用した機能評価系の構築に加え、医薬品候補物質の探索や環境中の生体影響性化学物質の検出などへの応用が期待されます。
■論文情報
論文タイトル:Extracellular vesicle fusion-mediated compartmentalized membrane protein reconstitution toward intracellular signaling coupling
著 者:千明大悟、後藤瑞穂、守岩友紀子、森岡和大、藤野智史、柳田顕郎、東海林敦
掲載誌:Biosensors and Bioelectronics
D O I:10.1016/j.bios.2026.119257.
【研究に関するお問い合わせ】
東京薬科大学 薬学部 生体分析化学教室 准教授 東海林 敦(ショウジ アツシ)
〒192-0392 東京都八王子市堀之内1432-1
電話:042-676-4544
E-mail:ashoji[at]toyaku.ac.jp ※[at]を@に置換してください
▼本件に関するお問い合わせ先
入試・広報センター
住所:東京都八王子市堀之内1432-1
TEL:042-676-4921
FAX:042-676-8961
メール:kouhouka@toyaku.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/