【ニュースレター】二輪レーサー中須賀克行選手の「勝ち」への執念

ヤマハ発動機株式会社

ファクトリーチームの吉川和多留監督に聞く、中須賀選手の習慣と思考法

2025年9月14日に開催された「全日本ロードレース選手権 スーパーバイクレース in 九州」で優勝した
中須賀選手(中央手前)、拍手で勝利をたたえる吉川和多留監督

21年間で計13回のチャンピオンに
 二輪ロードレースの最高峰シリーズ「全日本ロードレース選手権 JSB1000クラス」で前人未到の通算94勝を挙げ、2005年に同クラスに参戦以降、計13回の年間チャンピオンを獲得したロードレースライダーの中須賀克行選手(45)=福岡県北九州市出身。当社の運営するレースチーム「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」に所属し、二輪モータースポーツ界をけん引するエースとして走り続け、引退を発表した今季、10月25日の鈴鹿サーキットで最終戦を迎えます。勝負の世界で結果を多く出せた理由は何だったのか―。約20年にわたり中須賀選手の成長を支えた吉川和多留監督(58)に話を聞きました。
 「とにかく誰よりも勝ちにこだわっていました。一般的な選手心理だと (全日本で)3回、年間チャンピオンになれば十分、5回チャンピオンならお腹いっぱいという感じですが、彼は違いました」。中須賀選手の勝利への意識について、吉川監督はそう明言します。スピード、エンジン音など、観戦する人に迫力あるシーンを提供する裏側で、フィジカル、メンタル、車両の状態など、繊細さが求められるモータースポーツの世界。その世界で結果を出し続けることは容易いことではないと言われていますが、中須賀選手は結果へのこだわりを常に持ち続けていました。
 その姿勢は日々のトレーニングにも表れていたといいます。30代後半になると体力の回復も20代より落ちると言われる中、中須賀選手は勝ち続けるために、若いころ以上に自身のコンディションづくりを重視。「ランニングシューズがすり減り、よく買い替えるほど毎日ランニングに取り組み、持久力を保っていた」(吉川監督)。年齢を理由に妥協することなく、必要な努力を積み重ねていました。
 
ニュースレターのインタビューに応じる吉川監督(都内、2026年10月7日撮影)

勝ちを引き寄せる思考で好循環へ
 レースの勝敗は、選手のフィジカルはもちろんのこと、メンタルやチーム体制もその結果を左右します。勝つことへのこだわりを持ち続けた中須賀選手は、体調管理やトレーニングだけでなく、勝ちを引き寄せる思考法を持っていました。
 レースチームは選手が勝つために、数多くのスタッフを投入し、サーキットの環境に合わせた車両の整備、新技術導入時のテスト走行など、より速く走るための準備に膨大な時間が費やします。一方で、チームが総力を挙げて挑んでも、本番までに100%完璧な車両を作るのは難しいというレース競技。そんな条件下での中須賀選手の思考法について、吉川監督は「マシンの状態を言い訳にするのではなく、提供された車両の良い面、悪い面を把握して、“どうしたら勝てるか”という考えに集中していた」。さらに「チームのスタッフもそんな姿勢を見て(中須賀選手を)もっと支えようという気持ちになり、勝利への好循環ができていました」と明かします。
 個人のトレーニングの積み重ね、さらにチーム全体を前向きにしてくれる姿勢、その両方があったからこそ、シビアなレースの世界で前人未到の勝利数を獲得できた中須賀選手。7月に当社で行われたインタビューで中須賀選手はこう話しています。「負けた時に自分に足りないものが見えていればへこむことはありません。そこを補えばやれるってことなんですから」―。
 
全日本ロードレース選手権 スーパーバイクレース in 九州で「YZF-R1」を走らせる中須賀選手
(2026年5月31日撮影)


■広報担当者より
モータースポーツというと、普段なかなか馴染みのない世界に感じる方も少なくないかもしれません。一方でレースで勝つための中須賀選手のトレーニング姿勢や思考法は、レース以外での職場や日常生活、人とのコミュニケーションなど、日ごろのシチュエーションでも生かせるものだと感じました。吉川監督は13歳の年の差がある中須賀選手について「ジェネレーションギャップを感じさせない相性の良さ」と今回の取材で語っていました。勝利へのこだわりを持ち、周囲と信頼関係を築けるそうした中須賀選手の人間的魅力も、トップでい続けられた理由なのかもしれません。
 
吉川和多留(よしかわ・わたる)1968年9月26日生まれ。東京都出身。
YAMAHA FACTORY RACING TEAM監督。1991年から2002年まで現役ライダーとして全日本ロードレース選手権などに参戦。1994年と1999年には全日本ロードレース選手権スーパーバイククラス(現JSB1000)で年間チャンピオンを獲得した。1996年には世界スーパーバイク選手権に参戦し、シリーズ総合9位の成績を残す。現役引退後はチーム運営やライダー育成に携わり、2015年からYAMAHA FACTORY RACING TEAM監督を務めている。
 
中須賀克行(なかすが・かつゆき)1981年8月9日生まれ。福岡県北九州市出身。
YAMAHA FACTORY RACING ライダー。2000年から2004年まで全日本ロードレース選手権GP250クラスに参戦。2005年に最高峰クラスのJSB1000へ転向し、2008年に自身初となる年間チャンピオンを獲得した。その後も長年にわたり国内ロードレース界のトップライダーとして活躍し、2025年までに通算13回の年間チャンピオンに輝く。全日本ロードレース選手権通算94勝を挙げるなど、日本モータースポーツ界を代表するライダーの一人


 

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