脳血流の急激な変化が「脳のバリア」を壊す仕組みを解明

学校法人慈恵大学

―機械刺激受容チャネルPiezo1を介した脳血液関門障害の新たなメカニズム―

東京慈恵会医科大学 分子生理学講座の梅村 将就 教授らの研究グループは、横浜市立大学との共同研究により、脳血管内皮細胞に存在する機械刺激受容チャネルPiezo1(注1)の活性化が、Srcを中心とする細胞内シグナルを介して、脳血液関門(blood–brain barrier:BBB)(注2)の透過性を急速に亢進させることを明らかにしました。
培養脳血管内皮細胞を用いた解析では、Piezo1への刺激後早期にSrc、PYK2、paxillinおよびOccludinなどのリン酸化が生じ、「脳のバリア」BBBの機能が低下することを確認しました。さらに、脳虚血再灌流モデル(注3)において機械刺激受容チャネル阻害薬(GsMTx4)を使用することで、BBBの破綻が抑制されることを示しました。
これらの結果から、脳虚血後に血流が再開した際に生じる機械的刺激が、Piezo1を起点とする細胞内シグナルを活性化し、BBB障害を引き起こす分子メカニズムの一端が明らかになりました。
本研究成果は、脳梗塞に対する血栓回収療法など、脳血流が急激に変化する状況で生じるBBB障害の理解を深めるとともに、将来的にはPiezo1を標的としてBBBを保護する新たな脳保護治療の開発につながる可能性があります。
本研究の成果は、国際学術誌「Fluids and Barriers of the CNS」に2026年9月24日付で最終版(Version of Record)として掲載されました。

【用語解説】
(注1)Piezo1
細胞膜に存在する機械刺激受容イオンチャネルの一つです。血流によるせん断応力、圧力、細胞膜の伸展などの物理的な力を感知して開口し、カルシウムイオンなどを細胞内へ流入させることで、さまざまな細胞応答を引き起こします。

(注2)脳血液関門(blood–brain barrier:BBB)
脳の血管と脳組織の間に存在する特殊なバリア構造です。主に脳血管内皮細胞が密接に結合することで形成され、血液中の物質が脳内へ無秩序に侵入することを防ぎ、脳内環境を一定に保っています。

(注3)脳虚血再灌流
脳への血流が一時的に低下・遮断された後、再び血流が回復する状態です。

【論文情報】
掲載誌: Fluids and Barriers of the CNS
論文タイトル: Piezo1–Src signaling rapidly disrupts brain endothelial barrier integrity
著者: Yu Iida, Taisuke Akimoto, Kagemichi Nagao, Akane Nagasako, Michiko Endo, Yayoi Kimura, Makoto Ohtake, Tetsuya Yamamoto, Yoshihiro Ishikawa & Masanari Umemura
DOI: 10.1186/s12987-026-00859-6

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