【東京工科大学】DNA二本鎖切断修復の制御に重要な初期過程を解明

東京工科大学

 東京工科大学 応用生物学部の西 良太郎教授らの研究グループは、DNA二本鎖切断修復の制御に重要な初期過程を同定・解明しました。本研究成果は、学術誌「Scientific Reports」に2026年6月22日に掲載されました。 【研究背景】  生物のゲノムには常に多様な傷(DNA損傷)が生じています。特に電離放射線や、ある種の抗がん剤等によって生じるDNA二本鎖切断 (DNA double-strand break: DSB)は、最も重篤なDNA損傷の一つです。DSBの修復過程においては、DNA-RNAハイブリッド(注1)を含む構造が一時的に形成されることが分かっており、その形成と解消のメカニズムは特に注目を集めています。これまでに、DNA-RNAハイブリッドの形成と解消には様々なメカニズムが提唱されてきましたが、その全体像は不明であり、DSB修復経路の選択に与える影響についても解明すべき点が残されていました。 【研究成果】  本研究では、DNA-RNAハイブリッド構造の形成には、PARP1と呼ばれる酵素によるpoly ADPリボシル化反応が必要であることを明らかにしました。さらに、形成されたDNA-RNA hybrid構造は、DHX9と呼ばれる酵素によって解消されることを明らかにしました。これに加えて、DHX9は、DSB修復経路の選択(注2)に関わる因子(53BP1)のDSB部位への動員を抑制することを見出しました。驚くべきことに、これら一連の反応ではDSB発生から2分以内に重要な段階があることが示唆され、これまで考えられてきたよりもかなり早い段階でDSB修復経路の決定が行われていることが示唆されました(図1)。本研究は、これらの事象がDHX9の一つのドメインと、その翻訳後修飾によって担われていることを合わせて見出しており、DNA-RNAハイブリッド制御を中心としたDSB初期応答という新たな研究領域の開拓につながりました。 【社会的・学術的なポイント】  本研究は、DSBの修復経路決定メカニズムを再定義するものと考えられます。従来は、DSB発生から10〜30分後にDSB部位に動員される因子群によって修復経路が決定されると考えられていましたが、本研究により、既知の因子群の動員よりもかなり早い段階(2分以内)で修復経路の決定がなされている可能性が示唆されました。西教授の研究グループでは、これまでもDHX9を抗がん剤の重要な標的であると考えていましたが、本研究もその可能性を支持するものです。 【論文情報】 論文名: Dual roles of the DHX9 RGG domain in hybrid-dependent recruitment and suppression of 53BP1 著者名: Yuina Tsuchiya, Yudai Hiwatashi, Hayaki Ikegame, Saaya Matsuya, Yurina Abe and Ryotaro Nishi 雑誌名:Scientific Reports, 2026 U R L :10.1038/s41598-026-59280-6 【用語解説】 (注1)DNA-RNAハイブリッド:通常、ヒトの細胞内ではDNAはDNA同士が対になった二本鎖を形成していますが、一時的にDNAとRNAが結合した構造、DNA-RNAハイブリッド、をとることがあります。特に、DNA損傷発生時などでは、正常な細胞活動では見られない大きなDNA-RNAハイブリッド構造が形成され、DSB修復の鍵となる構造として注目されています。 (注2)DSB修復経路の選択:ヒト細胞において、DSBは複数の経路によって修復され得ます。適切な経路を選択することが、ゲノムの恒常性維持に重要であることが分かっており、従来はDSB部位へ動員される53BP1タンパク質とBRCA1タンパク質のバランスで決定されると考えられていました。 ■東京工科大学応用生物学部 西(分子生物学)研究室 ゲノムの安定性を維持する機構であるDNA修復に関する研究を行っています。特に、DNA二本鎖切断修復に着目して、基礎研究から応用研究に近い内容のものまで研究を展開しています。 [主な研究テーマ] 1.タンパク質翻訳後修飾によるDNA二本鎖切断修復制御の解明 2.核内構造体に着目したDNA二本鎖切断修復の新規制御機構 3.正確性の高い相同組換え修復が優先される機構の解明 [研究室ウェブサイトURL] https://nishi-lab.bs.teu.ac.jp/ ▼本件に関する問い合わせ先 《この件に関しての報道関係からのお問い合わせ先》 ⽚柳学園 コミュニケーション企画部 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

その他のリリース

話題のリリース

機能と特徴

お知らせ