【東京情報大学】ICU看護師の「道徳的苦悩」と病院の「倫理的風土」との関連を明らかに
~看護師が道徳的苦悩を一人で抱え込まない組織づくりに向けて~
研究のポイント
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1.概要
東京情報大学(設置者;学校法人東京農業大学)看護学部の山内英樹教授による研究論文 “Moral Distress and Ethical Climate Among Japanese Intensive Care Unit Nurses” が、別府大学看護学部の上野恭子教授との共著論文として、国際学術誌 SAGE Open Nursing に掲載され、2026年7月1日にオンライン公開されました。
本研究では、質問紙調査とインタビューを組み合わせた混合研究法により、日本のICU看護師が経験する道徳的苦悩と病院の倫理的風土との関連を、量的・質的の両面から検討しました。
2.背景
ICUでは、生命維持治療の継続や中止、患者・家族の意思決定支援、多職種間の判断の違いなど、正解が一つに定まらない倫理的課題に直面することがあります。看護師は患者に最も近い立場でケアを担う一方、組織の制約や職種間の力関係の中で、倫理的に望ましいと考える行動を十分に実行できない場合があります。
こうした経験は道徳的苦悩として蓄積し、看護師の心理的負担やバーンアウト、離職意向にも関わることが国際的に指摘されています。一方、日本のICU看護師を対象に、道徳的苦悩と病院の倫理的風土との関連を量的・質的の両面から検討した研究は限られていました。
3.研究手法
国内54施設のICU看護師168人に質問紙調査を実施し、道徳的苦悩と病院の倫理的風土を測定しました。さらに、質問紙調査の結果を踏まえて選定した11人にインタビューを行い、量的結果の背景にある経験や認識を分析しました。
4.研究成果と期待される効果
量的・質的双方の分析から、ICU看護師の道徳的苦悩は、終末期医療、多職種連携、治療方針の意思決定などの場面で生じやすく、病院の倫理的風土や組織的支援のあり方と関連していることが示されました。
特に、組織として倫理的課題を共有し、看護師を含む医療従事者が意見を交わしやすい環境を整えることの重要性が示されました。本研究の成果は、倫理カンファレンスや倫理コンサルテーション体制の整備、倫理原則の明確化、円滑な多職種コミュニケーションを支える環境づくりに活用されることが期待されます。
5.研究プロジェクトについて
本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業(科研費)基盤研究(C)「ICU看護師の道徳的苦悩への対処能力を高めるエンパワーメントプログラムの開発」(課題番号:JP22K10857、研究代表者:山内英樹)の支援を受けて実施されました。
6.論文情報
論文名 Moral Distress and Ethical Climate Among Japanese Intensive Care Unit Nurses
著者名 Hideki Yamauchi, Kyoko Ueno
雑誌名 SAGE Open Nursing
DOI https://doi.org/10.1177/23779608261457808
PDF https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/23779608261457808
公表日 2026年7月1日公開済 (SAGE Open Nursing掲載)
7.用語解説
- 道徳的苦悩(Moral Distress):倫理的に正しいと考える行動が分かっていながら、組織の制約や力関係などによってその行動をとることができないときに生じる心理的苦痛。
- 倫理的風土(Ethical Climate):倫理的な問題が職場でどのように認識され、話し合われ、対応されているかについての組織内の共有された認識。
- 混合研究法(Mixed Methods Research):質問紙調査などの量的研究と、インタビューなどの質的研究を組み合わせ、数値で示される傾向と当事者の経験を統合して解釈する研究方法。
