PwC Japan、「食卓で起きる変革と代替」 調査結果を発表

2024年7月22日
PwC Japanグループ

PwC Japan、「食卓で起きる変革と代替」 調査結果を発表
ネイチャーポジティブに向けて進む技術開発、「植物工場」「Eコマース」「代替食品開発」が活発

PwC Japanグループ(グループ代表: 久保田 正崇、以下、PwC Japan)は、2024年7月22日、環境負荷の低減に貢献するフードバリューチェーン関連技術の世界的な技術開発動向を、投資情報および特許出願件数から調査、分析した「食卓で起きる変革と代替」調査の結果を発表しました。

今回の調査は、PwCが独自で開発した、特定技術領域のグローバル特許データと企業の財務・投資情報をAIにより分析するツール「Intelligent Business Analytics(R)(IBA)」を用いてPwC Japanが実施したものです。今回のテーマ、ネイチャーポジティブに貢献するフードバリューチェーン関連技術動向を調査、分析し、同分野の今後の展望に関する示唆を導きました。さらに未来を見据え、それらの技術が将来的にどのようにフードバリューチェーンにおける環境面の課題を解決し、ネイチャーポジティブに貢献しうるか、特に上述の自然への影響が大きい原材料の生産・調達にどのような変革を起こしうるかの考察も併せて行いました。技術によるネイチャーポジティブへの貢献の例として、自然に負荷をかける現行の食料生産方式が技術適用により異なる方式に置き換わり、従来の生産過程で発生していた自然資本の喪失が抑えられる可能性があります。このように、世界中で進むネイチャーポジティブの取り組みを、技術動向の観点から理解することは、企業が今後の注力分野を検討するうえで有用な情報となります。

その結果、トレンドになっている技術として「植物工場」と「Eコマース」、有望なシーズ技術として「代替食品開発」が特定されました。下記は、それぞれの分野で得られた分析結果の一部です。

1 土から工場へ
・現状
日本がGHG削減、持続可能な土地利用に関する技術で高いスコアを示す一方、「植物工場」の技術では、中国が存在感を示す

・技術
代表的な技術トップ5を、水に関すること(排水・廃液処理/水循環)と、エネルギーに関すること(植物照明装置、熱回収、太陽光発電)が占める

・環境負荷低減
植物工場への移行で、肥料、農薬、プラスチック資材、輸送などによる環境負荷を削減することが可能に

2 畜産から代替たんぱく質へ
・現状
欧州と米国が高い技術競争力を持っており、かつ重要特許保有割合と件数も多い

・技術
プラントベースドミートと呼ばれる畜肉の代替食品が多く、用途、製品の種類を特定できる重要特許24件のうち、16件が畜肉代替品に関するもの

・環境負荷低減
植物性の原料あるいは昆虫の生産にかかる環境負荷は畜産に比べ低いとされており、畜産物を代替しGHG排出量や環境負荷を低減

3 小売店からECへ
・現状
Eコマースの技術クラスタにおけるスコアは日本が最も高く、IT企業、電子・電機メーカーが技術開発をリード

・技術
商品提案システムなどの商品選択に関する重要特許は日本が多く保有。購買システムなどの受注・発注に関するものは韓国が多数所有し、配送システムなど出荷、配送は米国が強い

・環境負荷低減
実店舗が不要なため建材の依存度が低く、物流も効率化が可能。賞味期限が近い食品の販売サイトなどで、食品ロス削減や廃棄のGHG削減に貢献

<主な国・地域別の技術動向>

電化/水素化に関して高い技術を持つ日本
農業機械の電化/水素化に関する「燃料電池」や「電池・電極」といった分野は日本の技術スコアが高く、日本の大手自動車メーカーおよび電機メーカーがこのスコアをけん引しています。一方、有望なシーズ領域と考えられる「細胞農業」(※1)や「その他代替たんぱく質」に関しては一層の技術開発を進める必要があると思われます。特に細胞農業に関しては技術面以外の課題も出てきており、一部の国や地域で、細胞農業に対する規制や畜産業界からの反発の動きがみられ、また消費者の認知や理解も十分とは言えない状況です。そのため、細胞農業やそれを活用した製品の普及に向けては、法整備や消費者の認知向上も含めた、政府、企業、社会それぞれの取組が必要になると思料しております。
※1 動物の可食部の細胞を組織培養することによって、主に食肉を生産する技術のことで、細胞採取-大量培養-組織化-加工の4ステップを経て代替たんぱく質を生産します。



「植物工場」で存在感を放つ中国
トレンドになっている「植物工場」の技術クラスタでは、中国が存在感を示しています。出願特許に占める中国企業及び研究機関の割合も高く、中国がこの技術クラスタ全体に大きな影響を与えており、日本や欧州のスコアはマイナスとなっています(※2)。例えば、中国では植物工場に関する技術の一部(特に排水処理など)が高層建築物による養豚などに活用されており、他の国とは異なる方向性と言えるでしょう。ほかにも、中国は植物工場の垂直方向への多段化、大型化を進める一方、日本や欧州は照明や排水などを含む高度な環境制御に関連する特許が比較的多く見られ、また消費地で必要な農産物だけを生産できるユニット型、モジュール型の植物工場の技術開発も進んでおり、こうした点にも方向性の違いが見られます。
※2 技術スコアがマイナスになっているのは、必ずしも技術競争力が低いということを示しているわけではなく、トレンドとは異なる方向性の技術開発を進めていることを示しています。

畜産を代替する技術開発を進める欧米
畜産由来のGHG削減に関する技術は欧州、米国が高いスコアを示しています。「細胞農業」は細胞培養を用いて農産物(特に畜産物)を生産する技術で、再生医療に関する技術を転用できる分野でもあることから、医療機器メーカーやバイオテック企業がこの分野における高い技術競争力を有しています。「その他代替たんぱく質」は、いわゆるプラントベースドミートのような植物性代替食品に代表される技術や製品のことで、技術開発は欧州の食品メーカーがリードしています。

<ネイチャーポジティブに対する貢献と、技術への市場の評価>

技術がもたらすネイチャーポジティブのシナリオ

植物工場によって、一部の農産物の生産が土耕栽培から植物工場での栽培に切り替わることが考えられ、この移行によって窒素やリンなどの肥料成分を効率的に利用するとともに土壌や水域への流出を防ぎ、その環境負荷を削減することが可能です。また、代替食品開発技術の発展によって、畜産物が培養肉やブラントベースドミートなどの代替食品に切り替わっていく可能性もあります。この技術によって、GHGの主要な排出源となっている畜産物や乱獲、漁具などによる海洋生態系への影響が大きい魚介類の代替が進むことで、環境への影響を抑えられる可能性もあります。さらに、ECおよびスマートフードチェーンなど、先端技術の利用拡大や進展によって商流・物流が効率化され、食品を購入する方法やチャネルもさらに変わり、それによって食品ロスを削減、食品の廃棄に係る環境負荷削減に貢献することも考えられます。今後より一層の技術開発や適用拡大によって、フードバリューチェーン全体の自然への影響を軽減させることが期待されます。

「植物工場」、「Eコマース」の技術開発が進み、資金を獲得している
本調査では、GHG削減、持続可能な農業、食品ロス削減などに関係する特許情報と、企業および投資情報をIBAによって分析しました。その結果、「植物工場」および「Eコマース」が技術スコア、市場性ともに高く、新市場形成の中心となっている技術領域であることがわかりました。先端技術を活用して需給調整や保管、流通を最適化することで食品ロス削減につながる「スマートフードチェーン」は、技術開発の余地がありながら比較的大きな投資を獲得しており、今後さらに技術開発が進む可能性が高いと言えます。技術スコアも市場性もまだ十分ではないですが、「細胞農業」や「その他代替たんぱく質」に関する技術は、技術スコアの成長率も大きく、次世代のトレンドになり得る可能性を秘めていると言えます。



本調査では、ネイチャーポジティブなフードバリューチェーンの概観を分析し、現在の技術トレンドや、国・地域別の技術動向を解説しています。さらに各論として、トレンドになっている技術として「植物工場」と「Eコマース」、今後開発が進む技術として「スマートフードチェーン」、有望なシーズ技術として「代替食品開発」を特定し、現状、技術動向、ネイチャーポジティブへの貢献可能性について詳細な検討を行っています。
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/nature-positive-food-value-chain.html

以上

PwC Japanグループについて:https://www.pwc.com/jp
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この企業の情報

組織名
PwC Japanグループ
ホームページ
https://www.pwc.com/jp/ja/
代表者
久保田 正崇
資本金
1,000 万円
上場
非上場
所在地
〒100-0004 東京都千代田区大手町1‐1‐1大手町パークビルディング
連絡先
03-6212-6810

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