グローバル企業を始めとして多様な人材を活用する企業に向けて、ジョブ型雇用の変化、テクノロジーの活用、メタバース活用を含めた職場空間の変化など組織・雇用の課題とグローバルトレンド紹介
デロイト トーマツ グループ(東京都千代田区、グループCEO:木村研一)は、世界105か国、約10,000人におよぶ人事部門責任者と管理職等へのアンケートをもとに、新時代における人事部門・人材活用の課題とトレンドをまとめた『デロイト・グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2023 境界の無い世界のための新たな原理』を公開しました。『デロイト・グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド』は、グローバルで行う人事、人材、リーダーシップに関する調査では世界最大級のものです。
今年のレポートは、日本国内では導入途上にあるものの欧米では既にスタンダードとなっているジョブ型雇用に関する変化のほか、労働者へのテクノロジー活用、コロナ禍により変化が急速に進んだ職場空間の未来、タレントマネジメントシステムなどで活用される労働者データの今後、多様性・公平性・インクルージョン(DEI)実現のための課題と解決アプローチ、など9つのトレンドを3つの提言に分けてまとめています。
業界や業務内容、時間や価値観、テクノロジーなど様々な分野で従来の区分が通用しなくなる、これからの境界のない世界では、仕事はジョブによって定義されず、職場は特定の場所を意味せず、多くの労働者が従来型の組織に属する従業員とはなりません。今後は、そのような彼らと協働し、あらゆることを試行できる組織、そしてリーダーが、持続可能なワークモデルと高い成果を生み出します。
レポートの詳細は以下URLよりご覧ください。
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/human-capital/articles/hcm/global-hc-trends.html
『デロイト・グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2023』が掘り下げる3つ提言、9つのトレンド
提言1.課題を設定する:研究者のように考える
境界のない世界をリードするためには、組織と労働者は、直面する課題について実験的な取り組みから学び、適応し、改善する、という研究者のような思考が求められます。3つのトレンドは、組織や労働者が研究者のように考える必要性を示しています。
- ジョブの終焉への先導:ジョブとジョブを区別し、タスクをグループ化し、労働者を狭い役割と責任に分類していた境界線は、現在、イノベーションや機敏性等の組織の成果を制限しています。多くの組織が労働力に関する意思決定のベースラインとして、ジョブではなくスキルを使用することを試みています。労働者はジョブから解放されると、組織や労働者の成果の向上に向けて、その能力、経験、興味をより活用していく機会を得られます。
- テクノロジーで人間そのものの能力を高める:人間が行う作業を自動化・拡張するだけでなく、実際に人間やチームのパフォーマンスを向上させる新しいテクノロジーが職場に登場するにつれて、人間とテクノロジーを区分してきた境界は消滅しつつあります。先進的な組織は、人々が最高の自分でいられ、より良い仕事をすることを奨励するようなテクノロジーの使い方を模索しています。
- 未来の職場の活性化:デジタルや仮想技術の進歩とメタバースの新たな役割は、物理空間としての職場の概念を再定義しています。現在では、相互接続性が高まり、在宅勤務とオンサイト勤務の境界が曖昧になっているため、組織は “どこで” ではなく “どのように” 仕事を行うべきかを実験するユニークな機会を得ています。場所と様式は、仕事と労働者のニーズにおいて二の次となっています。
提言2.新しい道を描く:関係を共創する
組織は、労働者が組織のコントロール下ではなく、ともに主導的立場にあることを認識し、境界のない世界をともに先導するために新たなルールや関係性を彼らと共創する必要があります。以下3つのトレンドは、組織と労働者が関係を共創しなければならないポイントを示しています。
- 労働者データの交渉:組織と労働者におけるデータの所有権の境界、すなわち労働者が所有するデータなのか組織が所有するデータなのかという2つの区分は、無意味になりつつあります。そして、所有権のみならず、労働者データとは何か、そのデータの透明性、データドリブンな洞察の相互利益についての議論は、データが新しい “通貨” になりつつある中で増加しています。
- 労働者の交渉力の活用:労働者がより意味のある仕事、柔軟な職場モデル、よりパーソナライズされたキャリアパスを求めている中で、組織が唯一の意思決定権限を持つことを前提とした従来の仕事、労働力、職場モデルは廃れつつあります。労働者の交渉力はこれまで脅威と見られていたかもしれませんが、先進的な組織は、労働者のモチベーションと共創を活用して相互の利益を高め合う方法を模索しています。
- 労働力のエコシステムの解放:多様な労働力のエコシステムを育成する価値は非常に大きいですが、多くの組織はあらゆるタイプの労働者(ギグ、フリーランサー、請負業者、従業員等)に、どこで、どのように、誰のために働くかについての発言権を与えていないため、人材へのアクセスと旧来の管理パターンから抜け出せずにいます。はるかに複雑で、従来とは異なる労働者構成になっていることが多い現実世界の人材プールに合わせて戦略と施策を適応させる組織は、成長、イノベーション、敏捷性を加速するためのスキルと経験にアクセスできるようになるでしょう。
提言3.影響を考慮した設計:人間の成果を優先する
組織は、ビジネス、労働者、株主だけでなく、より広範な社会にも影響をもたらす必要があります。今年調査に参加した組織のうち半数以上は、自身が働いている社会と、より大きな繋がりを作ることを望んでおり、2018年のデロイト・グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンドで定義したソーシャル・エンタープライズは、ビジネスの世界で引き続き中心的な力を持つことを示しています。以下3つのトレンドは、組織と労働者が人間の成果をどのように優先しているかを示しています。
- 公平な結果のために大胆なアクションをとる:組織がダイバーシティのみを指標とする考え方は失われつつあり、組織は代わりにDEIを成果として見る必要があると捉えています。これらの結果は、3つのポイントに焦点を当てています。まず、組織がどのようにして人材にアクセスするかに関する公平性。次に、開発プログラム、メソッド、ツールによって人材を活かすこと。そして、組織のあらゆるレベルでどのように人材を昇進・昇格させるのかという点です。組織は、その活動や努力に対する責任よりも、より大きな社会目標を支援する公平な成果の達成能力に対する責任を負うことになるのです。
- サステナビリティにおける人的要素を進化させる:社会全体の利益とは切り離して考えられる利益を持つ、完全な自律的存在として組織をとらえることの境界は曖昧になってきています。組織は、政府、グローバルの連合、コミュニティ、少なくとも現在と将来の労働者から、持続可能性の問題に対処するよう、強いプレッシャーにさらされています。労働者は、組織が目に見える成果をもたらすために、持続可能性に関する美辞麗句は過去のものにすることを求めています。その結果、組織は、労働力と仕事自体に持続可能性を適用することによって、これまでの戦略や行動には殆ど存在しなかった人的要素に焦点を当てなければなりません。
- 人的リスクへの関心を高める:組織は従来、労働者がビジネスにもたらす潜在的なリスクという狭いレンズを通して人的リスクを考えてきました。新しい世界では、組織は、コンプライアンスや報告を超えて、人的リスクに対する見解を拡大し、広範な一連のリスクがどのように人々に大きく影響を与え、また、大きく影響を受けているかを考慮する必要があります。これらのリスクは、企業の長期的な存続可能性に重大な影響を与える可能性があり、全ての経営陣は十分に理解し、取締役会は最終的な説明責任を負う必要があります。