横浜市立大学附属病院(以下、附属病院)では、難治性てんかん
*1の患者さんに対して、2022年6月に手術支援ロボットアーム(Cirqロボットアームシステム:図1)を用いたものとしては世界初となる定位的頭蓋内電極留置/頭蓋内脳波(stereotactic electroencephalography:SEEG)
*2を行いました。
難治性てんかんの患者さんではてんかん焦点
*3を特定するために脳の表面や内部に直接電極を留置する頭蓋内電極留置と呼ばれる手法が必要となることがあります。SEEGは開頭(頭蓋骨を専用のカッターで切って外すこと)を必要としないため、従来のシート状電極を用いた頭蓋内電極留置(硬膜下電極留置)よりも身体的負担が小さいことが知られています。また、脳の深い領域に位置するてんかん焦点や、てんかんの電気的ネットワークの広がりを、開頭の範囲に制限されることなく効率よく探索できる点で有用な方法とされています。このシステムを用いることで高精度な頭蓋内電極留置が可能となります。さらに、従来の定位脳手術
*4用フレームを用いる方法に比べて、手術時間で大幅に短縮することが可能となりました。
横浜市立大学附属病院では今後も高度な医療技術を取り入れて、患者さんに安全で効率的な治療を提供していきます。
図1:Cirqロボットアームシステムによる定位的頭蓋内電極留置(SEEG)
術前に作成した電極留置プランをCirqロボットシステムに読み込ませることで、電極挿入のエントリーとターゲット、挿入角度が計算され、ロボットアームが術者を自動的に誘導する。このシステムを用いることで正確かつ安全に電極を留置することが可能となる。
<脳神経外科 山本哲哉 主任教授のコメント>
2021年に本医療機器が導入(2021年のプレスリリース:
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2021/20211019CirqRobotArm.html)され、高い精度を要する脳神経外科手術手技を迅速に行うことが可能となりました。手術時間の短縮により患者さんの負担が軽減され、ミリ単位の精度を求められる手技でのヒューマンエラーを回避して、脳の手術を安全に行うことができます。特にてんかん外科の領域では、本機器を用いることで、これまで対象とならなかった患者さんにも治療が可能となりました。
我々は最新の技術を取り入れながら、高度な医療を提供することで、市民・県民のみなさまの期待と信頼に応えられるよう努力して参ります。
用語説明
*1 てんかん:脳の神経細胞の異常な活動によって引き起こされる一過性の症状=てんかん発作を主症状とする慢性脳疾患。
*2定位的頭蓋内脳波(SEEG:stereotactic electroencephalography):脳に深部電極を刺入し、頭蓋内脳波を記録することでてんかんの原因となっている脳領域(てんかん焦点)の局在を探るための検査。
*3てんかん焦点:てんかん発作を起こす原因となっている脳の領域のこと。ここを切除することで発作が消失する。
*4定位脳手術:脳の深部にある標的に向けて、電極を挿入したり、電気刺激による治療機器を埋め込んだり、標的部位の小組織を採取する手術。
参考URL
横浜市立大学医学部・医学研究科 脳神経外科学教室
URL:
https://ycuneurosurgery.jp