東京医科大学が、「臓器移植の拒絶反応に細胞外小胞が重要な働きをしていることを世界で初めて解明~ 移植医療の発展に細胞外小胞であるエクソソームの重要性を示唆 ~」



東京医科大学(学長:林由起子/東京都新宿区)医学総合研究所の落谷孝広教授が参画する共同研究グループ(米国ペンシルベニア大学・移植部門、イェール大学外科部長のPrashanth Vallabhajosyula博士らのチーム)が、胚移植における拒絶反応に、ドナー由来のエクソソームが関与していることを明らかにしました。
本研究成果は、米国移植外科医協会および米国移植学会の発行する専門誌である「American Journal of Transplantation」に2022年7月6日(日本時間)に正式に公開されました。




【研究の背景および本研究で得られた結果・知見】
 肺移植は患者への負担の大きい手術であり、移植後の拒絶反応の発症率も他の臓器移植より高く、また急性拒絶反応のメカニズムについても不明な部分がたくさんありました。肺移植後の気管支吻合部全体のリンパ排液の回復には数週間かかるため、肺移植後の急速な拒絶を説明する代替経路が存在しなければなりません。我々は本研究で、ドナー由来の移植細胞に由来する細胞外小胞(EV)であるエクソソームが、胸膜腔を介して縦隔リンパ節へ輸送されることにより、肺移植後の新しいアロ認識経路を形成することを明らかにしました。

【研究成果の概念図】(図1参照)
 肺移植の数時間後には、移植ドナー由来の肺組織から細胞外小胞(EVs)が分泌され、胸膜腔を介して縦隔リンパ節へ輸送されます。そのリンパ節内では、抗原提示細胞(APC)と共存し、T細胞を活性化します。これが急性拒絶の要因となります。この一連の反応は、4時間以内に起こります。

【掲載誌名・DOI】
掲載誌:American Journal of Transplantation
DOI:https://doi.org/10.1111/ajt.17023

【論文タイトル】
 Donor extracellular vesicle trafficking via the pleural space represents a novel pathway for allorecognition after lung transplantation.

【著者】
 Habertheuer A, Chatterjee S, Sada Japp A, Ram C, Korutla L, Ochiya T, Li W, Terada Y, Takahashi T, Nava RG, Puri V, Kreisel D, Vallabhajosyula P.
 Am J Transplant. 2022 Jul;22(7):1909-1918.

【関連業績】
 本研究のオーサーである落谷孝広教授は、エクソソームとして知られる細胞外小胞(EV)研究の第一人者であり、これまでEVが関わる多くの生命現象の解明に携わってきました。その中で、現在、藤田医科大学・病態モデル先端医学研究センターに在籍している吉村文講師と共同で、全身の臓器に由来するEVsが蛍光ラベルされた遺伝子改変ラット (Tgラット)を作製しました(文献1、2)。
 今回、共同研究相手であるイェール大学外科部長のPrashanth Vallabhajosyula博士らのチームが落谷教授のTgラットの肺や蛍光ラベルされたエクソソームを使って、本研究を成し遂げました。さらに、この研究に先立ち、落谷教授とVallabhajosyula博士らは、肺移植の成否の判定に、血液中に流れ出るドナー組織由来のエクソソームを検出するという新しい方法を開発し、移植のモニタリングを可能にするリキッドバイオプシーの概念を2022年に樹立しました(文献3)。
 これらの一連の研究成果は、エクソソーム研究が移植医療にも様々な形で貢献する可能性を実証したもので、米国の移植学会でも大きな話題となっています。

※文献1
 Generation of a novel transgenic rat model for tracing extracellular vesicles in body fluids.
 Yoshimura A, Kawamata M, Yoshioka Y, Katsuda T, Kikuchi H, Nagai Y, Adachi N, Numakawa T, Kunugi H, Ochiya T, Tamai Y.
 Sci Rep. 2016 Aug 19;6:31172. doi: 10.1038/srep31172.

※文献2
 Transgenic rats for tracking body fluid/tissue-derived extracellular vesicles.
 Yoshimura A, Tamai Y, Ochiya T.
 Methods Enzymol. 2020;645:231-242. doi: 10.1016/bs.mie.2020.09.006.

※文献3
 Circulating Donor Lung-specific Exosome Profiles Enable Noninvasive Monitoring of Acute Rejection in a Rodent Orthotopic Lung Transplantation Model.
 Habertheuer A, Ram C, Schmierer M, Chatterjee S, Hu R, Freas A, Zielinski P, Rogers W, Silvestro EM, McGrane M, Moore JS, Korutla L, Siddiqui S, Xin Y, Rizi R, Qin Tao J, Kreisel D, Naji A, Ochiya T, Vallabhajosyula P.
 Transplantation. 2022 Apr 1;106(4):754-766. doi: 10.1097/TP.0000000000003820.


▼本件に関する問い合わせ先
企画部 広報・社会連携推進室
住所:〒160-8402 東京都新宿区新宿6-1-1
TEL:03-3351-6141
メール:d-koho@tokyo-med.ac.jp


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

この企業の関連リリース

この企業の情報

組織名
東京医科大学
ホームページ
https://www.tokyo-med.ac.jp/
代表者
林 由起子
資本金
0 万円
上場
非上場
所在地
〒160-8402 東京都新宿区新宿6丁目1-1
連絡先
03-3351-6141

検索

人気の記事

カテゴリ

アクセスランキング

  • 週間
  • 月間
  • 機能と特徴
  • Twitter
  • Facebook
  • デジタルPR研究所