2024年は市場のノイズが高まり、投資家が試される年になるだろう
ヨハナ・カークランド
2024年は多くの重要なイベントを控えており、投資環境が一変する局面もあるかもしれません。
周知のように、2024年は世界各国で選挙が予定されており、11月5日には米国大統領選挙も予定されています。選挙以外のイベントに目を向けると、紅海での船舶に対する攻撃や、それに対する米英軍からの反撃等、予測が困難な出来事も多く存在します。中東情勢の悪化が今後どのような展開となるのか、例えば、紛争がさらに深刻化するのか、あるいは、より多くの国を巻き込む事態に発展するのか、見通しは不透明です。
全体として、投資環境は複雑で、時に警戒するべきものになるかもしれません。ただし、2024年の全ての出来事が金融市場に重要な影響を及ぼすわけではないということは念頭において置くべきでしょう。米大統領選挙が重要であることは明らかですが、2024年に実施される全ての選挙がそうであるとはかぎりません。
投資家にとっての実践的なアプローチは、金融と地政学という全く異なる分野が、どのようなリスクや投資機会を生み出すのかを理解しようと試みることです。
債券を例に挙げてみましょう。世界経済は依然として減速傾向にあり、一般的に債券にとっては良好な投資環境になるはずです。しかし、米国大統領選挙が近づくにつれて、イールドカーブのロングエンドを注視する必要があります。米ドルには基軸通貨という信用力があるため、米国政府はこれまで多額の財政赤字を継続することができました。しかし、大統領選挙の候補者がさらなる財政出動を示唆した場合、市場参加者からの懸念が高まり、長期債のボラティリティが上昇する可能性があります。
対照的に、欧州ではより保守的な財政政策が行われてきました。このことは、欧州債券にとって支援材料となっています。また、多くのエマージング国は伝統的な金融政策をとっており、エマージング債券市場は良好な状態にあると考えており、現地通貨建てエマージング債券に対する見通しは強気としています。
株式市場は、債券市場ほど急速な利下げ期待を織り込んだ動きをしていないと見ています。株価バリュエーションは上昇しましたが、未だに極端に割高な水準には達していません。昨年の株式市場の力強い上昇は「マグニフィセント7」と呼ばれる一部の大型ハイテク銘柄(Alphabet, Apple, Amazon, Meta Platform, Microsoft, Nvidia, Tesla)の牽引によるものです。さらに、これらの銘柄の株価も業績面で支持されています。
株式にはさらなる上昇余地があると考えています。これは、現在、キャッシュを保有している投資家には特に関係があることでしょう。1929年以降の22回の利下げサイクルを対象とした分析では、利下げ開始後12か月間における米国株式の平均リターンは約11%でした。詳細については、下記リンクをご覧ください。
• 米国で利下げが始まると、株式、債券、キャッシュのパフォーマンスはどのようになるだろうか?
https://www.schroders.com/ja-jp/jp/institutional/insights/how-do-stocks-bonds-and-cash-perform-when-the-fed-starts-cutting-rates/
景気減速はあっても景気後退ではない「ソフトランディング」が実現した場合、株式にとって支援材料になると見ています。焦点は、「投資家から軽視されており割安なバリュエーション水準にある市場にも、この上昇が波及するのかどうか」ということです。
中国経済は、不動産セクターを巡る不透明性から、減速が懸念されています。米国大統領選の結果は市場環境に大きな変化をもたらす可能性がありますが、中国に対する見方を変化させる要因になるとは考えていません。共和党と民主党、どちらの政党候補者が勝利した場合でも、米中間の技術覇権競争、保護貿易主義的な状況は継続するでしょう。
中国経済に対する悲観的な見通し、また、世界経済が全般的に減速していることを踏まえると、コモディティに対する見通しは強気ではありません。しかし、機動的に資産配分を行い、コモディティに対するエクスポージャーを構築することは、特に地政学的緊張が高まる局面において、分散投資として機能すると考えています。コモディティのうち、金ついては強気の見方をしています。金は通常、利下げ局面において堅調に推移する傾向があります。
また、米ドルについて、早期利下げ期待が後退した場合、短期的に上昇する可能性があります。
結局のところ、刻一刻と変化する投資機会を捉えるためには、投資を続けることが重要だと考えています。不確実性、市場のノイズ、重要なニュースが市場を取り巻く局面では、市場から離れることで「安心感」を得たくなるかもしれません。過去10年間の大半の期間とは異なり、キャッシュ以上の魅力的な名目リターンを得ることも可能です。しかし、米国の利下げ開始が後ずれした場合でも、いずれは利下げが見込まれているため、キャッシュを保有し続けるのは賢明でないかもしれません。同時に、市場はダイナミックに変化しており、傍観しているだけでは、魅力的な投資機会を逃すことになりかねないでしょう。
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