【レポート】ESGファクターは、価値を創造するか、破壊するか―ディール(M&A)における6つのオレンジフラッグ
2023年5月9日
PwCアドバイザリー合同会社は、M&AにおいてESGファクターがますます重視されるようになる中、ディールメーカーが慎重にディールを進めるべきことを示す「オレンジフラッグ」を整理し、その対応方法についてまとめたレポート『ESGファクターは、価値を創造するか、破壊するか―ディール(M&A)における6つのオレンジフラッグ』の日本語訳版を公開しました。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により世界情勢の不確実性が高まり、サプライチェーンの混乱やエネルギー危機、インフレ、金融市場の不安定化など、グローバル規模で生じている新たな混乱は日本経済にも大きな影響を与えており、企業のレジリエンスの重要性がますます高まっています。
特に、ディールにおいては対象企業のリスクを抑えつつもその価値最大化のためにも、環境、社会、ガバナンス(ESG)問題への考慮は不可欠なものとなっており、ディールそのものの在り方を変えつつあります。現在では、明確にESGに起因するオポチュニティ獲得を動機とするものだけでなく、あらゆるディールにおいて、広範なESG課題が認識されるようになっています。ディールメーキングにおいてさまざまなESGファクターが、ターゲット企業の価値の維持、破壊、創造に影響を与えるようになっていることから、デューデリジェンスの拡充が求められています。本レポートでは、取引を控えるべきことを示すレッドフラッグとは異なり、ディールメーカーが慎重にディールを進めるべきことを示す「オレンジフラッグ」を特定しました。
6つのオレンジフラッグと対応方法の概略は以下のとおりです。
- 非倫理的なマーケティング:マーケティングのミスマッチから生じる価値棄損リスクに対応するため、法規、情報開示規制、特に今後制定が予定される事項を含む要件を遵守した、強固な内部統制のフレームワークを構築する
- レピュテーションリスク:レピュテーションに関する先見的なデューデリジェンスではマーケットにおける現在の焦点と潜在的な課題の観点から、企業の自社固有の価値提供方法(バリュープロポジション)をより深く理解し、ESGに関する情報を幅広く検証する
- ハイリスクなサプライチェーン:現代奴隷制、健康と安全、労働者の権利の重要性や原材料調達に対する意識の高まりから、調達契約やサプライチェーンに関するデューデリジェンスやサプライチェーンの安定化、レジリエンス向上のための措置を講じる
- 従業員の離職:デューデリジェンスにおいて、ガバナンス、従業員の育成と定着、多様性、同一賃金に関する調査の強化をする
- サステナビリティ目標に対応するディールの変化:社会的課題、経済的課題、脱炭素目標を含む環境的課題の間の複雑なトレードオフのバランスを取ることが可能と考えられるディールを実行する
- 不適切な非財務情報の開示:情報開示が適切ではなくオレンジフラッグが認識される場合、複数のESGシナリオを検討し、ターゲット企業を評価する
日系企業や日本のマーケットが関係するディールにおいて、すでにプライベートエクイティファンドやESG先進企業は、ディールの中でESGのリスクと機会の把握を可能とするESGデューデリジェンスを実施し、適切なディールの実行を担保しています。日本のマーケットにおいても、本レポートのオレンジフラッグに関する示唆が、ディールを慎重かつ積極的に進め、より多くのディールでESGに関連した価値創造が実現されるための一助となれば幸いです。
本レポート詳細につきましては、以下URLよりご覧ください。
ESGファクターは、価値を創造するか、破壊するか ― ディール(M&A)における6つのオレンジフラッグ
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/esg-and-deals-six-orange-flags-for-dealmakers.html