日吉大社、「日吉桜」の組織培養苗を全国に ~住友林業の組織培養技術で増殖、地域活性化目指す~
日吉桜は八重の山桜の一種で、一輪に30枚ほどの淡紅色の花びらをつけます。社伝には平安末期から鎌倉時代の歌人として知られる西行法師が参詣の折に「一重づづ 七の社に手向けてもなお余りある 八重桜かな」という歌を詠んだとの言い伝えが残り、東本宮に縁の深い※1ご神木として古くから親しまれてきました。
日吉大社境内で最後の一本とされた木が約20年前に立ち枯れたため、森林総合研究所、地域の人々の協力の元、接ぎ木で日吉桜を育成し2014年に境内に里帰りしました。しかし、接ぎ木は台木が別品種で、将来台木の枝が主軸となり別品種になってしまう可能性があります。そのため文化的・科学的に重要な日吉桜をより確実に継承すべく、全国各地の名木・貴重木で後継樹の育成をしてきた住友林業が組織培養技術による苗木の増殖を実現しました。
今後は組織培養で増殖した日吉桜の苗木を全国山王会に所属する神社に頒布し神社間の絆を深めるとともに、地域の象徴として様々な方に楽しんでいただくことを目指します。第一弾として日枝神社(宮司:宮西 修治、東京都千代田区)で4月7日に苗木の贈呈式を実施。時代を超えて大切に受け継がれてきた日吉桜を、山王会を含む多くの分霊社とともに後世に継承していきます。
<参考>
■山王総本宮日吉大社
比叡山の麓に鎮座する日吉大社は、およそ2100年前、崇神天皇7年に創祀された、全国3800余の日吉・日枝・山王神社の総本宮です。平安京遷都の際には、都の表鬼門(北東)にあたることから、都の魔除・災難除を祈る社として、また伝教大師が比叡山に延暦寺を開かれてよりは天台宗の護法神として崇敬を受けています。
■住友林業の組織培養技術
- 冬芽を採取し、芽の分裂組織[茎頂(けいちょう)部]を摘出する。
- 茎頂部を日吉桜用に開発した培養液の入った試験管に移し、大量の芽(多芽体(たがたい))を生産する。
- 多芽体を固体培地に移植し、芽を伸長させる。
- 伸長した大量の芽(シュート)を1本ずつ切り分け、培養液を添加した人工培養土に植えつけて発根を促す。
- 芽は4週間程度で発根し、完全な植物体(幼苗)が再生する。※ここまでは無菌条件下。
- 外の条件に慣らすため温室内で育苗する。(順化処理)
住友林業では、全国の桜の名木・貴重木の増殖に関するご相談をお受けしています。詳しくは、担当部署である「森林・緑化研究センター」(WEBサイト https://sfc.jp/treecycle/tree_utilization/)までお問い合わせ下さい。