職場でのメンタルヘルス支援体制:日本が世界16の国と地域の中で最下位
アクサ 「マインドヘルスとウェルビーイングに関する調査 2023」の結果から
職場におけるメンタルヘルスのサポートと従業員の定着率・生産性の相関が明らかに
2023年2月28日、アクサは、心の不調に対する偏見をなくし、総合的な健康を促進するための取り組みの一環として、ヨーロッパ、アジア、北・中米の計16の国と地域において、心の健康に欠かすことができない要素を調査する「マインドヘルス(心の健康)とウェルビーイングに関する調査 2023」の結果を発表しました。調査結果からは、企業が従業員のメンタルヘルスをサポートする体制構築の重要性とともに、日本においては、職場のメンタルヘルス対策が大きな課題となっていることが明らかとなりました。
主な調査結果は以下のとおりです。
*調査の詳細は別紙をご覧ください。
主な調査結果: 「心の健康」を示す指標で日本は対象16か国中15位
- 世界16の国と地域において、心の状態について「良好」と回答した人は全体の25%、最も多かったのは「まあまあ良好」で35%(約3人に1人)を占める。「なんとなく不調」と回答した人は28%、「不調」と回答した人は13%となった。新型コロナウイルス感染症の影響や地政学的緊張が続く中、前年と比べ、心の健康状態は全般的に改善が見られた。メンタルヘルスに対するスティグマ(偏見)の改善に同意する回答者は、対象国全体で昨年の31%から36%に増加した。
- 日本は、心の健康を示す指標において、全対象国中15位となった。心の状態が「良好」と回答した人は18%、「まあまあ良好」と回答した人は37%で、前年の13%、32%から上昇した。心の状態が「不調」と回答した人は前年20%から14%と大きく改善したものの、依然として全体より高い割合を示す中、うつ病や不安障害といったメンタルヘルスの不調を自ら表明する割合は、対象国中、最も低かった。(ストレス症状を表明する割合が最も高かったのはトルコ 66%、最も低かったのは日本 27%。うつ病はトルコで最も高く 25%、日本は最も低く12%)。
- いわゆるZ世代(18~24歳)の半数以上(54%)が、心の状態が「不調」または「なんとなく不調」であることが明らかとなった。若年層は各国共通して、心の状態が「良好」の割合や自己受容の割合が低く、年齢が上がるほど高まる傾向にある。また、Z世代の3人に1人以上(38%)が、テクノロジーやSNSへの依存が幸福感に悪影響を及ぼすと考えている。
- 一方で、若年層は各国においてメンタル不調に対する偏見の改善を認識している割合が高く、日本でも同様の結果となった(偏見が減少していると回答した割合:日本18~34歳 46% 、全年齢36%)。また、職場がメンタルヘルスをサポートしていることに対する認知が高く(日本 Z世代37% 、全年齢27%)、メンタル不調の際、どのようにサポートを受けたら良いかを知っている割合も高い(日本Z世代38% 、全年齢31%)。必要であれば自費でメンタルヘルスに関するサポートを利用する意向が高く(日本Z世代30% 、65歳以上6%)、メンタルの状態を改善するためのデジタルツールへの支払いに対する抵抗感も低い(日本 Z世代35%、65歳以上11%)。
メンタルヘルスの支援と従業員の定着率・生産性に強い関連性
- 「職場におけるメンタルへルスに関するサポート体制が充実している」と認識している人は、そうでない人より心の状態が良好で、活き活きと働いている/生産性が高い状態にある可能性が3倍高いことが判明した。また、仕事と自身のスキルの適合性、明確な目標設定、実際の業務量ではなく業務量のコントロールなどもメンタルヘルスと非常に強い相関があり、従業員のメンタルヘルスと定着率には明確な関連性があることが示された。心の状態が「良好」な人の72%は現在の職場から離職する意思はない一方、「不調」の人は37%にとどまった。また、心の状態が「不調」で、短期間の間に現在の職場から離職予定と回答した人は、「良好」な人の約3倍となった。
- 「職場におけるメンタルへルスに関するサポート体制が充実している」と認識しているZ世代の4人に1人が、心の状態が「良好」で活き活きと働いているのに対し、そうでない人は100人に1人と、全年齢層で最も大きな差が見られた。職場におけるメンタルヘルスサポートが、Z世代のメンタルウェルビーイングに最も大きな影響を与えることが判明した。
- 日本は昨年に続き、「職場におけるメンタルへルスに関するサポート体制が充実している」と回答した人の割合が、全対象国の中で最も低い 27%となった。全対象国の平均は 47%で、日本においては、いまだ職場におけるメンタルサポートが進んでいるとは言えない状況であることがわかった。特に心の健康の不調の多さにも関わらず、実際のメンタル症状を表明する割合が最も低く、このことは、メンタルヘルスの適切な治療やサポートにアクセスできていないことを示唆している可能性がある。
- 生産性や若年層を含めた従業員の定着率の向上が図れることから、職場での早期発見や周囲の気づきと理解、メンタルヘルスについて相談できる職場環境の整備を促進することは、企業における有効な対策の第一歩になると考えられる。また、メンタルヘルスはセンシティブ情報であり、自社内の職場環境の整備と並行して、外部への相談窓口設置など、幅広い対応が効果的と考えられる。
- 日本について、職場におけるメンタルヘルスサポートが充実していると回答した割合を従業員規模別に見た場合、100名以上の企業では32%と高く、従業員が少なくなるにつれて低下した (50名以上99名以下26%、9名以下19%)。実際にメンタル不調を抱えている従業員のうち、症状をよくコントロールできていると回答した人の割合は、100名以上の企業では52%であったのに対し、9名以下では32%に留まった。
- 「親切」と「幸福感」に関する興味深い調査結果として、日本は、「他人に親切にすることが多い」と回答した人の割合が、対象国中15位となった(最も低かったのは香港で40%、次いで日本が56%、最も高い国はメキシコで87%)。また、世界各国で、他人に親切にしていると認識している人ほど幸福感を感じている割合が高いという関連が見られた(幸福を感じている割合:日本 他人に親切にすることが多いと認識している人 38% 対 認識していない人 17%)。
・グローバルの調査結果の概要(英語)はhttps://www.axa.com/en/about-us/mind-health-report をご参照ください。
・アジアの調査結果の概要(英語)とレポートはこちらのサイトAXA - Fit to Flourish ( https://www.axafittoflourish.com/ )をご参照ください。
アクサ生命の取り組み:健康経営サポートパッケージを通じて人々と地域社会により良い未来を
アクサ生命では、企業が継続的かつ主体的に実効性の高い健康経営(※1) に取り組めるよう、「健康経営サポートパッケージ」を提供しています。その一環として、2020年10月より「産業医プログラム」(※2)の提供を開始しました。これは、心の健康の側面から従業員の健康維持・増進をサポートし、地域医療との連携によって職場における不調者の早期発見・治療・回復を促すとともに、職場環境の整備を通じて従業員の生産性向上と企業の持続的発展に資することを目指すものです。プログラムには「ストレスチェック(産業医監修レポート付き)」 やプランに応じてチャット型医療相談などが含まれ、従業員の心の健康を注視しサポートする内容となっています。健康で活力ある職場づくりや医療への適切な連携などの面で重要な役割を担う産業医は、常時 50 人以上の労働者を使用する事業場において、労働安全衛生法により選任が義務付けられています。一方で、50 人未満の事業場では義務化されていないこと、また、事業場数に比して産業医数が不足していることなどによって産業医の選任率は低く留まっている(※3)のが現状で、「産業医プログラム」は、そうした中小企業の課題解決を支援します。
アクサ生命は、「すべての人々のより良い未来のために。私たちは皆さんの大切なものを守ります。」というパーパス(存在意義)を体現するために、健康経営の普及推進を通じて、企業の生産性向上と持続的発展、従業員とそのご家族の心身および社会的な健康づくりに寄与することによって、人々と地域社会のより良いパートナーとなることを目指してまいります。
※1 「健康経営」は、特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
※2 本サービスは、アクサ・ライフケア社がサービス提供会社であり、アクサ・ライフケア株式会社の委託を受け、サービスパートナーである株式会社Mediplatが一部サービスを提供します。
※3 厚生労働省「令和2 年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」(令和3年 7 月 21 日公表)より
アクサのマインドヘルスとウェルビーイングに関する調査2023について
今年で3回目となる「アクサのマインドヘルスとウェルビーイングに関する調査」の2023年度調査は、調査協力会社イプソスのモニター対象にインターネット調査で2022年9月、10月、11月に、ヨーロッパ、アジア、北・中米の16の国と地域で実施され、合計 3万人が参加しました。(対象国: 英国、フランス、イタリア、スペイン、スイス、ドイツ、アイルランド、ベルギー、米国、メキシコ、タイ、中国、フィリピン、香港、トルコ、日本)
調査結果は、メンタルヘルスに対する理解促進や、心の健康の保持・増進に役立つ知見を個人や企業に提供することによって、社会に変化をもたらし、人々のより良い心の状態の実現に寄与することを目的としています。なお、アクサは、心の健康をよりポジティブに捉え、調査名称や指数においては、「メンタルヘルス」に代えて「マインドヘルス」という用語を使用しています。
本調査では、メンタルヘルスの経年変化をモニターするために設計された「アクサ マインドヘルス インデックス」の最新版も発表しています。回答者のメンタルヘルスの状態は、「良好」「まあまあ良好」「なんとなく不調」「不調」の4つに分類されています。 「良好」 はメンタルヘルスがベストな状態を意味し、「まあまあ良好」は、一部良好ではあるが、満たされた状態には達していない状態、「なんとなく不調」は、幸福感が欠如した状態、「不調」は、感情的ストレスや心理社会的障害を抱えている状態を表しています。
別紙:詳細
■世界:各国比較
世界16の国と地域において、心の状態について「良好」と回答した人は全体の25%、最も多かったのは「まあまあ良好」で35%(約3人に1人)を占める。「なんとなく不調」と回答した人は28%、「不調」と回答した人は13%となった。新型コロナウイルス感染症の影響や地政学的緊張が続く中、前年と比べ、全般的に心の健康状態が改善した。メンタルヘルスに対するスティグマ(偏見)の改善に同意する回答者は、世界全体で昨年の31%から36%に増加した。
国別では、今年新たに調査対象となったタイ(37%)がトップとなり次いで昨年も上位にランクインしたフランス、メキシコ、スイスが続いた。イタリア(18%)、次いで日本(18%)が最低レベルとなった。 地域別で見ると、日本が「なんとなく不調(気分が落ち込んでいる)」「不調(悩んでいる)」の割合がともにアジア諸国と地域で最も高く、それぞれ31%、14%となった。
■世界:年齢別比較
いわゆるZ世代(18~24歳)の半数以上の54%が、メンタルヘルスが「不調」状態にあることが明らかとなった。若年層は世界共通でメンタルが「良好」や自己受容の割合が低く、年齢が上がるほど高まる。ストレス、うつ病、不安障害なども年齢が高まるにつれ、症状が減少した。また、Z世代(18-24歳)の3人に1人以上(38%)が、テクノロジーやSNSへの依存が幸福感に悪影響を及ぼすと考えている。特に、テクノロジーやSNSから悪影響を受けていると回答した人は、悪影響を受けていないと回答している人よりも、孤独やネガティブなボディイメージ、将来への不確実性などを感じる割合が高かった。一方で、若年層は各国においてメンタル不調に対する偏見の改善を認識している割合が高く、日本でも同様の結果となった(偏見が減少していると回答した割合:日本18~34歳 46% 対 全年齢36%)。また、若年層は職場がメンタルヘルスをサポートしていることに対する認知が高く(日本 Z世代 37% 対 全年齢 27%)、メンタル不調の際、どのようにサポートを受けたら良いか知っている割合も高い(日本Z世代 38% 対全年齢 31%)。必要であれば自費でメンタルヘルスに関するサポートを利用する意向が高く(日本Z世代 30% 対 65歳以上 6%)、メンタルの状態を改善するためのデジタルツールへの支払いに対する抵抗感も低い(日本 Z世代 35% 対 65歳以上 11%)。適切なサポートを提供する職場環境が整っていることが、若年層の定着率等を高める可能性があることから、従業員のニーズに合ったサポートを検討する必要性が浮き彫りとなった。
■世界:ジェンダー別の比較
世界で比較した際、心の状態が「良好」の女性の割合は、男性と比較してすべての年代で低く、男性と比べ約2割少なかった。ストレス、うつ病、不安障害でも、女性の方が男性より症状が多い傾向が見られた。女性の3人に1人(29%)が性別について望まない言動を受け、また、43%が性別を理由に、自身の能力が疑問視された/過小評価されたと感じており、これらの要素は女性のメンタルヘルスに大きな影響を及ぼしている。また、すべての国において、女性の方が物価や生活費の上昇による悪影響を受けていると感じている。日常的な性差別を経験していない女性は、経験している女性より、孤独感や否定的な身体イメージ、不平等な家庭における責任を感じる割合が低く、自己受容や人生に対する満足感が高い。
■世界:ストレス・うつ病・不安障害の国別比較
日本は、世界16の国と地域の中で、ストレス(重度から中度程度)、うつ病、不安障害について自ら表明する割合が顕著に低かった。ストレス症状を表明した割合が最も高いのはトルコ 66%、最も低いのは日本 27%、うつ病を表明した割合が最も高いのはトルコ25%、最も低いのは日本12%となった。
■世界:職場環境に関する各国比較
新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、職場におけるメンタルヘルスへのサポートがより議題にあがるようになった。
世界各国でメンタルヘルスサポートを行っている企業は、従業員の心の状態が「良好」である可能性が3倍高く(日本では3.7倍)、従業員が活き活きと働いている/生産性が高い可能性が同様に高いことが判明した。また、仕事との自身のスキルの適合性、明確な目標設定、実際の業務量ではなく業務量のコントロールなどもメンタルヘルスと非常に強い相関があり、メンタルヘルスと定着率には明確な関連があることが示された。心の状態が「良好」な人の72%は現在の職場から離職する意思はなく、「不調」の人は37%にとどまった。また、心の状態が「不調」で、短期間の間に現在の職場から離職予定と回答した人は、「良好」な人の約3倍となった。
日本においては、「職場で心の健康に関するサポートを受けている」と回答した人の割合が昨年に続き 16カ国と地域の中最下位の 27%と、16カ国平均の 47%に対して引き続き職場のサポートが進んでいるとは言えない状況である。特に心の健康の不調の多さにも関わらず、自らメンタル症状を表明する率が最下位となった。これは、メンタルヘルスケアの適切な治療やサポートにアクセスできていないことを示唆している可能性がある。生産性や若年層を含めた従業員の定着率の向上が図れることから、職場での早期発見や周囲の気づきと理解、メンタルヘルスについて相談できる職場環境の整備を促進することは、企業における対策支援の有効な第一歩と考えられる。またメンタルヘルスはセンシティブな問題でもあり、自社内の職場環境整備と並行して外部への相談窓口設置など、幅広い対応が効果的と考えられる。
<参考:日本における従業員規模別のメンタルヘルスサポート体制に対する認識度>
・日本について、職場におけるメンタルヘルスサポートが充実していると回答した割合を従業員規模別に見た場合、100名以上の企業では32%と高く、従業員が少なくなるにつれて低下した (50名以上99名以下26%、9名以下19%)。実際にメンタル不調を抱えている従業員のうち、症状をよくコントロールできていると回答した人の割合は、100名以上の企業では52%であったのに対し、9名以下では32%に留まった。
■世界:親切や優しさと幸福の関連性
日本は、「他人に親切にすることが多い」と回答した人の割合が、対象国中15位となった(最も低かったのは香港で40%、次いで日本が56%、最も高い国はメキシコで87%)。また、世界各国で、他人に親切にしていると認識している人ほど幸福感を感じている割合が高いという関連が見られた。(幸福を感じている人の割合:日本 他人に親切にすることが多いと回答した人 38% 対 親切にすることが多いと回答していない人 17%)
■世界:気候変動の影響 年代別・国別比較
Z世代(18~24歳)は気候変動が心の健康に悪影響を及ぼす可能性が他の年代より高かった。国別比較をした際には、心の健康に悪影響を及ぼすと回答した割合は各国で大きな差が生じていた。フィリピンでは77%に対し、日本や中国は22%が悪影響を受けると回答した。
アクサ生命について
アクサ生命はアクサのメンバーカンパニーとして1994年に設立されました。アクサが世界で培ってきた知識と経験を活かし、277万のお客さまから522万件のご契約をお引き受けしています。1934年の日本団体生命創業以来築いてきた全国511の商工会議所、民間企業、官公庁とのパートナーシップを通じて、死亡保障や医療・がん保障、年金、資産形成などの幅広い商品、企業福利の増進やライフマネジメント(R)(人生を経営する)*に関するアドバイスをお届けしています。2021年度には、2,346億円の保険金や年金、給付金等をお支払いしています。
*ライフマネジメント(R)はアクサ生命保険株式会社の登録商標です。
アクサグループについて
アクサは世界50の国と地域で14万9千人の従業員を擁し、9千500万人のお客さまにサービスを提供する、保険および資産運用分野の世界的なリーディングカンパニーです。国際会計基準に基づく2021年度通期の売上は999億ユーロ、アンダーライング・アーニングスは68億ユーロ、2021年12月31日時点における運用資産総額は1兆510億ユーロにのぼります。アクサはユーロネクスト・パリのコンパートメントAに上場しており、アクサの米国預託株式はOTC QXプラットフォームで取引され、ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)やFTSE4GOODなどの国際的な主要SRIインデックスの構成銘柄として採用されています。また、国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI)による「持続可能な保険原則」および「責任投資原則」に署名しています。
*アクサグループの数値は2021年度時点のものです。