北野天満宮、御神木の飛梅、組織培養で増殖した苗木が世界で初めて開花 ~菅原道真公ゆかり 「令和の飛梅(とびうめ)伝説」プロジェクト始動~

住友林業株式会社

 北野天満宮(宮司:橘 重十九、京都市上京区)の梅苑「花の庭」で、住友林業株式会社(社長:光吉 敏郎、東京都千代田区)が組織培養により増殖したご神木の飛梅「紅和魂梅(べにわこんばい)」の苗木が開花しました。組織培養で増殖した観賞用の梅の開花は世界初となります。北野天満宮では今回の開花を契機に、住友林業が組織培養で増殖した飛梅の苗木を後世に守り伝えていく「令和の飛梅伝説」プロジェクトを開始します。

 北野天満宮では御祭神である菅原道真公が、かつて自邸の庭で育てられた紅梅を受け継ぎ、“飛梅伝説”発祥の梅として信仰されています。
 北野天満宮と住友林業は2009年、『北野天満宮“御神木の梅”研究開発プロジェクト』に着手し御神木の梅に関する調査、研究をしてきました。住友林業は2015年に梅の古木から実用化を想定した研究として、世界で初めて組織培養での増殖に成功しました。梅苑「花の庭」に植えた苗木は約7年の歳月を経て今年、蕾を膨らませ見事に開花しました。当初、成功率が低かった紅梅の組織培養は、調査研究を積み重ねて培養条件の解明に成功し、実用化の目途が立ちました。この開花で紅梅の技術開発は概ね完了し、実用化に向けた苗生産の体制を構築します。

■    雪月花の三庭苑 梅苑「花の庭」
 江戸時代に歌人・連歌師・俳諧の祖として讃えられた松永貞徳(まつながていとく)(1571〜1653)が作庭したと伝わる「雪月花の三庭苑」は、江戸時代、寺町二条の妙満寺(現在は左京区岩倉)の「雪の庭」、清水寺の「月の庭」、そして北野天満宮の「花の庭」で、何れも成就院(成就坊)という塔頭に造った庭として、その名を馳せました。北野天満宮は今年、明治以降には現存していなかった「花の庭」を再興させました。令和再興の「雪月花の三庭苑」として三社寺が力を合わせ、京都の魅力を発信しています。

■    今後の取り組みー飛梅を後世へー 
 近年、梅を脅かすウイルスによる病気の発生や地球温暖化等の環境変化により梅の生長に与える影響が懸念されている中、今回の研究成功は梅を確実に受け継いでいくという点で意義深いものです。今後の梅の保護・保存に加え、京都の景観維持や文化の継承に大きく寄与します。今後は組織培養で増殖した梅を、後世に守り伝えていく「令和の飛梅伝説」プロジェクトの実現に向け、苗生産の体制を構築します。
 住友林業では、全国の梅の名木・古木の増殖に関するご相談をお受けしています。詳しくは、担当部署である「森林・緑化研究センター」(WEBサイト https://sfc.jp/treecycle/tree_utilization/)までお問い合わせ下さい。


<参考>
■ これまでの取り組み
2009年 4月  東京都青梅市の梅で国内初のPPV※1感染が確認される
2009年 12月  北野天満宮 “御神木の梅” 研究開発プロジェクトに着手
        調査研究方針の決定、保護・保存対象木の選定
2010年
 |      組織培養技術の予備研究・開発に着手
2011年
2012年 1月  北野天満宮 “御神木の梅”からの材料採取を開始
2015年 2月  組織培養による御神木の梅の増殖に成功
        ”紅和魂梅(べにわこんばい)”と命名
        【参照】:プレスリリース「北野天満宮本殿前“御神⽊の梅”の組織培養による苗⽊増殖に成功」(2015 年 3 月 )
            https://sfc.jp/information/news/2015/pdf/2015-03-11.pdf
2017年 3月  培養苗が北野天満宮に里帰り
           【参照】:プレスリリース「北野天満宮の御神木「紅和魂梅」の培養苗が里帰り」(2017年3月)
            
https://sfc.jp/information/news/2017/pdf/2017-03-09.pdf

※1 ウメ輪紋ウイルス(plum pox virus):梅や桃などのバラ科植物に広く感染し、感染した植物は葉に輪紋が生じるほか、花弁に斑が入るなどの症状が確認されています。

■ 組織培養法による増殖技術概要
【組織培養の流れ】
① 冬芽を採取し、その中から芽の分裂組織(茎頂(けいちょう)部)だけを顕微鏡下で摘出する。
② 御神木の梅用に開発した培養液を入れた試験管中に茎頂部を入れ培養することにより、茎頂部は大量の芽の塊(多芽体(たがたい))に成長する。写真1
③ 多芽体を固体培地で培養することにより、多芽体から芽が伸長する。写真2
④ 伸長した大量の芽(シュート)を1本ずつ切り分け、発根を促す培養液を添加した人工培養土に植えつけると、4週間程度で発根し、完全な植物体(幼苗)が再生される。ここまでは、無菌条件下で行なわれる。写真3
⑤ 外の条件に慣らすため温室内で育苗する(順化処理)。写真4
⑥ 温室内で十分に成長した苗木は畑で育成する。写真5
⑦ 苗木は畑で育成することによって、大きく伸びる。写真6

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