奥村土牛《醍醐》ゆかりの桜を山種美術館に記念植樹 住友林業が組織培養により苗木増殖した醍醐寺「太閤しだれ桜」を寄贈 ~「山種美術館開館55周年記念特別展 奥村土牛」開催 (11月13日~1月23日)~
住友林業は「太閤しだれ桜」の樹勢回復と後継樹増殖に取り組み、2000年組織培養による苗木増殖に成功しました。増殖した苗木は2004年11月に総本山醍醐寺境内に移植し、翌年4月に無事開花しました。「太閤千代しだれ®」と名づけられたこの桜は親木と並んで毎年花を付け訪れる方を楽しませています。
<植樹式の概要>
日時:11月15日(月)13時30分から14時00分まで
場所:山種美術館
寄贈:
【桜の苗木】 住友林業株式会社
【桜の植栽基盤及び壁面緑化パネル*】 山種美術館館長 山﨑 妙子
* 植栽基盤は桜の生育を支える基盤。
壁面緑化パネルは桜の色を引き立てるよう背面に緑のフェンスを設置。
<展覧会の概要>
山種美術館創立者・山﨑種二(1893-1983)は奥村土牛の才能を見出して支援し、約半世紀にわたって家族ぐるみで親しく交流しました。現在、当館は135点に及ぶ屈指の土牛コレクションで知られています。
奥村土牛は38歳で院展初入選と遅咲きながら、展覧会に出品を重ねて40代半ばから名声を高め、80歳を超えてなお「芸術に完成はあり得ない」「死ぬまで初心を忘れず、拙くとも生きた絵が描きたい」と語り、101年におよぶ生涯を通じて制作に取り組みました。本展では《醍醐》や《鳴門》などの代表作をはじめ、活躍の場であった院展への出品作を中心に、土牛の画業をたどります。
奥村土牛 ―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―
会期:2021年11月13日(土)~2022年1月23日(日)
会場:山種美術館
(〒150-0012東京都渋谷区広尾3-12-36)
主催:山種美術館、日本経済新聞社
開館時間:午前10時~午後5時
(入館は閉館時間の30分前まで)
休館日:月曜日[12/27(月)、1/3(月)、1/10(月・祝)は開館、1/11(火)は休館、12/29~1/2は年末年始休館]
■ 奥村土牛《醍醐》(1972(昭和47)年)について
京都・醍醐寺三宝院の枝垂(しだれ)桜を取材した作品です。1963(昭和38)年、土牛は奈良・薬師寺で営まれた師・小林古径(こばやしこけい)の七回忌の法要の帰路、醍醐寺に立ち寄りました。その際、土塀の枝垂れ桜に極美を感じ、数日間通って、目に映る光景を夕暮れまで写生したといいます。いつか制作したいという思いを抱き続け、約10年後の1972年、再び桜の咲く時期を待って、同寺を再訪し、本作品を完成させました。胡粉(ごふん)の白色を基調に、何層にも絵具を重ねて表した薄紅色(うすくれないいろ)の桜は、春らしい叙情的な雰囲気と清らかな透明感を醸し出しています。
■ 奥村土牛(おくむらとぎゅう) 明治22-平成2 (1889-1990)年
東京に生まれる。本名義三(よしぞう)。梶田半古(はんこ)に入門、兄弟子・小林古径(こけい)の指導も受ける。1927(昭和2)年、院展に初入選、1932(昭和7)年に同人となる。1947(昭和22)年、帝国芸術院会員。1962(昭和37)年、文化勲章を受章。
1978(昭和53)年、日本美術院理事長。遅咲きの画家として知られ、薄い絵具を何重にも塗り重ね、淡い色調によるおおらかで温かみのある作風を確立した。
■ 奥村土牛のことば
《醍醐》は昭和38年、小林古径先生の七回忌の法要の帰りに京都へ寄り、三宝院前の土塀のしだれ桜に極美を感じ写生をし、何時(いつ)か制作したいと考えて居(お)りました。
一昨年の昭和47年、今年こそと思って、桜の時期の来るのを待って醍醐へ行きました。10年前と少しも変わりなく、2度最初の印象が浮かび制作しました。この年は桜を見たく、常照皇寺のしだれ桜をはじめ奈良方面を廻り、終(つい)に待望の吉野まで参りました。
(『第1回現代日本画の10人』図録 山種美術館 1974年)
山種美術館は今回の植樹により、今後は日本画のコレクションに加え、春にはそのシンボルとして、奥村土牛ゆかりの「醍醐の桜」が皆様をお迎えします。1966(昭和41)年、日本初の日本画専門の美術館として開館して以来、近代・現代日本画を中心とした収集・研究・公開・普及につとめてきました。今後も日本画の素晴らしさを国内外に広く発信し、日本画を未来へ継承する活動を続けていきます。
住友林業グループは神社仏閣や自治体の皆様が所有・管理する名木や貴重木を後世に受け継いでいく取組みをサポートし、樹勢・生態調査及びDNAによる品種同定などの結果を基にした保存活用計画の立案及び後継樹の増殖、樹勢回復などを行っています。今後も松・桜・梅など歴史的・社会的に貴重な樹木を後世に繋ぎ、伝統ある風景を次世代へ受け継ぐ取組みを進めていきます。
≪参考資料≫
■ 組織培養の流れ